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vol 83:人間として
「イエス。」
「パパ。」
久々に家に帰ってきた人間は自分の息子を見て、
満面の笑みを見せる。
「あぁ・・・イエスすまない。
今日はお前の晴れ舞台だったのに。」
今日は学校で演劇の発表会があったんだ。
可愛らしい絵本の話でねぇ。
「いいよ。わかってる。
パパは今ボクよりも必要としてる貧しい人たちのために、
仕事をしてるんだ。
それに、ボクの役は小ヒツジの役でメーメー言ってただけだから。」
子供の嫌みのない笑みで惑わせる。
「イエス・・・。」
父親は我が子だと思い抱き締める。
「パパ。おかえり。」
僕はイエスとして背中に手を触れさせる。
「そうか、小羊か!イエス、それは素晴らしい役だ。
新約聖書のヨハネの副音書には、。」
「イエス様が世の罪を取り除く神の小羊として来られました。」
イエスは赤ん坊の頃から聖書を読み聞かされていた。
文字が読めるようになった頃には自分で読むように言われてきた。
実際のイエスは聖書よりも親の愛情が欲しかったんだけどね。
ここ最近のイエスは反抗的な態度もとらない、
親にとっては理想の息子。
「ハハハ!そうだ。」
父親は喜んでいる。
名を貰ったことで、神の子イエスに近づけようとしてる。
それってさぁ、どういうことか理解出来てるの?。
イエスは小羊としてこの世に来て、
人間の罪を背負い、十字架にかけられ、無残な死に方をした。
クフフ、自分の子もそうさせたいのかい?。
馬鹿な親だ。
中学1年にしては背も低く、まだ幼い容姿のイエスは、
皆に馴染めない性格からイジメられ、
この役を強制的に与えられた。
そんな事も親は無関心だ。
信じていると言う言葉で終わらせ、
我が子よりも他人の子の事に親身になっている。
僕が変わってからは、学校でも上手くやってるよ。
誰にも馬鹿にはさせないさ。
このサタンをねぇ。
頭を撫でる父親に僕は笑みをむけて、
「パパ、ボクはもう中学生なんだから。
聖書も、旧約も新約もちゃんと読んだ。」
父親はお前を誇りに思うと告げた。
「パパ・・・お願いがあるんだ。」
父親は眉尻下げて困った顔を見せる。
なぜならば、
以前のイエスは父親や母親に家に居るよう、
自分だけを見るように頼んできた。
また、それを言われるのが苦痛なんだ。
「イエス、私もお前と居たいが前から何度も言うように、。」
「パパの・・・父さんの仕事を手伝いたいんだ。」
父親は目を見開いた。
「イエス・・・今、なんて。」
「ボクも父さんや母さんみたいに人々の役にたちたい。」
僕は、頭を深く下げた。
「父さん、お願いします。」
その時、父親は涙を流した。
「も、勿論だ!勿論だとも!。」
その涙、勿体無いよ。
「もしもし、サリー?。」
その晩に父親は妻に電話してた。
「そうなんだ。イエスの奴、やっと理解してくれたみたいで。
まさか、手伝いたいなんて・・・。」
父親は歓喜のあまり再び泣いてた。
「あぁ、あの子は主の名をいただいた。
あの子はもしかすると主の・・・アハハ、親馬鹿かな。」
なに?
なんて言おうとした?
あの子は主の?
生まれ変わり。
そう言いたかったのかい?。
フフ・・・アハハハ!。
残念。
あの子はサタンの為に生まれた子だよ。
父さん。
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