札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。いろいろな職業があるのに、カウンセラーになりたいと口にする方が大勢います。このページで、自分が悩み苦しんだことが動機となってカウンセラーを目指す人たちについて触れたいと思います。
あくまでネット上の情報ですが、開業して生計を立てる人たちのサイトを覘くと、かつて自分は○○で苦しんだ経験があり、それを契機にしてカウンセラーになった事情をカミングアウトする人たちがいます。いま何かで苦しみの中にいる人たちにも、自分は将来カウンセラーになりたい、自分と同じ思いをしている人たちを救いたいと考える人がいるに違いありません。
ここで問いを立ててみましょう。かつてのクライエント(あるいは患者)としての経験は、カウンセラーになるために生かせる類いのものなのであろうか? あるいは、クライエントとしての立場はカウンセラーとしての立場に生かせるのであろうか?
たとえば、自分が苦しんだ経験を眠らせておくのはもったいない、自分以外の人たちのために役立てたいと考える人がいたとしましょう。ここで質問です。あなたは確かにクライエントとしての経験は積んでいる?のでしょう。けれども、それはカウンセラーとしての経験ではないのですよ。本当にその経験を生かせるのですか?
私が敬愛するヘルムート・カイザーは、カウンセラーになる前に、詳細不明の精神疾患のために一人のクライエントとして精神分析を受けました。彼がこんなことを言います。
「精神分析だと患者は治らないかもしれません。しかし、確かなのは、精神分析は患者のなかから精神分析家になる者を作り出すと言うことです。私自身、分析家になろうと決心しました」。
自分が苦しんだ経験をカウンセラーとしての立場に生かすことができるものか、私には定かではありません。いずれにせよ、思い立ったら行動に移すことが大切であると思います。教育を受けるための準備をするのです。お金も、時間も、かなりかかるでしょう。
日本には、いまのところこの領域の国家資格がありません。ですから、さまざまな民間資格が「乱立」する現状です。臨床心理士、産業カウンセラー、臨床発達心理士、学校心理士、認定心理士などなどです。会社組織が自前で養成して認定書を出す、などと言うところもかなりあるようです。
いまの私の立場からすると、カウンセラーになりたい方は、大学院の修士課程に進学して、臨床心理士になることをお勧めします。しかし、無事に臨床心理士になったとしても、このご時世ですから、就職難は覚悟しておくべきです。私設相談室の開業も、どこかで少なくとも10年は経験を積んでからになると思います。資格の取得は、あくまでスタート・ラインにすぎません。
私は、なりたい人にはエールを送ります。
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