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農村の女性とカウンセリング


 「明るい農村」という言葉から、皆さんは何を連想しますか。もしかして、おいしい芋焼酎ですか。それとも、1980年代まで30年にわたって放映されたNHKの番組ですか。ここでは、明るい農村の闇の部分に光を当てて、農村で生きる女性とカウンセリングについて論じて見ようと思います。明るい農村ではなく、どちらかと言えば暗い農村になるかもしれません。

 私も、盆と正月は田舎に帰省します。その際に、普段は交流することのめったにない、農業を営む方や、漁業を営む方や、酪農を営む方と顔を合わせます。酒を酌み交わしながら、楽しいひとときを過ごします。

 そんななかで、農家の女性たちがどんな生活を送っているのか、とても興味を惹かれます。自然とともに生きている女性たちの生活です。以下に書きつづるのは、あくまで作り話です。実際に耳にしたことはここには書けません。農村の女性たちが抱えているさまざまな問題を、私なりに整理してみようと思います。

 都会を離れた農村には、いまだに古い風習が残っているところがあります。テレビも、インターネットも、携帯電話も利用できるのはもちろんなのですが、現代化の波に晒されても残り続ける文化が根付いているのです。その最たるものは、「嫁」という言葉なのかもしれません。けれども、ここで述べたいのはそのようなことではありません。

 北海道の場合、精神療法を受けられるのは、札幌市かその近郊の人たちにかぎられるような気がします。なぜならば、相談機関が札幌に集中しているからです。精神的な失調に陥ったとき、精神科や心療内科のクリニック・病院は地方にもあるのかもしれません。しかし、地方にはカウンセラーが少ないのが現状で、精神療法を希望しても受けられないのです。地方の農村に生きる女性たちにとって、不便極まりないことと思います。

 作物にもよりますが、北海道の農家は雪の積もる冬に休み、春から秋にかけてフル回転で農作業に専念しなければなりません。まだ朝日が昇る前に起床して、日が沈むまで働きづくめになります。天候と相談しながら、さまざまなタイミングを逃さないように、細心の注意も必要です。農閑期はともかくとして、無理をしなければならないのです。身体の調子が少々悪くても、精神的に浮かなくても、とにかく自然は待ったなしなのです。

 ここまでの話を要約すると、こうなります。地方の農村で生きる女性が(たとえば)うつ病になったとしても、近隣に精神療法を行っている機関はほとんどありません。さらに、精神療法を求めて遠方まで通うにせよ、忙しい時期にはなかなか自由がききません。つまり、精神療法を受けたいときに受けられないのです。

 農業を営む女性には、いろいろなパターンがあると思います。自分の実家が農家で、ご近所の農家に嫁いだとか、自然に憧れがあって、たまたま都市部から農村に嫁いだとか、あるいは、夫が脱サラして夫婦ともども農村地帯に入植したとか。そこには、女性たちのいろいろな人生があります。土とともに生きる生活に満足している人もいるでしょう。毎日同じ作業の繰り返しで、閉塞感のなかにある人もいるでしょう。過酷な労働に疲労困憊している人もいるでしょう。子どもたちが農業を継がないという後継者問題で頭を悩ませている人もいるでしょう。農村に固有の悩みは尽きないと思います。

 あえて農村の女性をテーマにしたのは、彼女らにエールを送りたいからです。自分の身近に農業を営む方々がたくさんいるので、いつか触れておきたいと思っていました。

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