vol 79:降臨



「サタン、本当に降りる気?。」

「あぁ、ヘラ。
留守の間、地獄を頼むよ?
その為に、皆に君を紹介したんだからねぇ。」

僕は不安そうなヘラにニッコリと笑む。

やっと時期が訪れた。

「トゥモロー、ボクはここで自由にしていていいんだね。」

金色の髪に透き通るブルーの瞳。
肌の色は黒い男の子。

「あぁ、イエス。自由だ。
欲しい物も直ぐに手に入るし、怒る者もいやしない。
外に見える醜い奴等は君の奴隷。
好きに遊べばいいよ。
ヘラは君の優しいママ。」

僕はヘラにニッコリ再び笑む。

「イエス、私と何がしたい?。」

ヘラがイエスに問い掛けた。

優しく、甘く。

「そうだな・・・ベッドで跳び跳ねたいよ!ママ。」

「うふふ、じゃ・・・思いっきりやりましょ?。」

「うん!。」

子供に会えない女と、母親に捨てられたと思う子供。

実に愉快だよ、ヘラ、イエス。











イエス・ブロッド、12歳。

両親は熱心なカトリック信者。

主を信仰し、父親は神父。母親は医師。

父親は黒人、母親は白人。

過去人種差別を味わった種と、人種差別をあじあわせた種が、

6月6日の午前6時0分に産んだ我々の救いの子。

僕が決めた666は独裁者、獣の意味。

ボランティア活動の主催者の一人息子は独裁者に相応しい。

ずっと親はボランティアの日々。

母親も難民の国に行き人々の治療に明け暮れている。

愛情を注いでいたつもりの両親は甘い考え。

イエスの名は主からいただいたと両親はイエスに言う。

イエスは自分を見て欲しい、

他人ではなく自分を。

しかし、両親は仕事仕事仕事。

家に飾られる写真は施設などの他人との微笑ましい写真。

学校に行く頃には人が嫌いになっていた。

僕はずっとイエスを見てた。

その様にしか捉えられない惨めな子。

そして、僕の可愛い独裁者に選ばれた子を。

ある日、僕は1匹の真っ黒な狼の子を彼に授けた。

そう、僕が狼になって彼の最初で最後の友達になったんだ。

イエスは喜んでくれたよ。僕を。

両親は僕を狼とすら気付いていない。

どこかの雑種にしか思ってないんだろう。

イエスが一人で居た庭に現れたんだ。

いつも一緒に居た。

学校の日は、隠れてイエスを見ていた。

イエスがイジメられれば、体当たりして威嚇して追い払った。

咬み付けば、僕は追い出されてしまう確率になるからねぇ。

そんなヘマはしない。

父親は悩める子ども達にと施設を回り、

母親は国境なき医師団として世界に回り家に殆ど居なかった。

イエスは他人が面倒を見る。

僕の子守もそろそろ終わりを迎え、

イエスの理想の言葉を聞いた。

「トゥモロー、ボクは一人になっちゃったよ。
パパもママもボクを捨てたんだ。
ボクは毎日オジサン達に囲まれて監視されて・・・、
自由が無くなった。
勝手に外に行くのもダメだって。
お菓子も決められてるし、ご飯だって好きなものを作ってくれない。」

どうしたい?さぁ、言ってごらんよ、イエス。

愛しき独裁者。

「みんな、死んじゃえばいいんだ。
パパもママも・・・そしたらボクは自由になれる。
トゥモロー?ボクはこんな世界から出て行きたいよ。」

人間界で言えば12年間、僕はこの時を待っていた。

イエスが望んだこの言葉をどれ程待ち侘びたか。

イエスの望み、僕の望みが一つになった。








「ねぇ、坊や。なぜ犬の名をトゥモローにしたの?」

「ママ、それはね、明日は必ず来るからだよ。
明日になれば、ボクの理想の世界になっていると思うから。」

そうだ、イエス。

明日は必ず来る。

僕達の理想の世界がね。











「おはよう、イエス。」

家政婦の言葉で、

僕はゆっくり目を開ける。

イエスとして。





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