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vol 78:不安
朝、目が覚める。
天界から人間界に戻った瞬間や。
体は気怠い。
隣に眠る大樹を起こして俺は朝食を。
大樹は仕事やから。
キッチンに立って目玉焼きを作る。
天界の事はこの時、体の怠さで頭にない。
ただただ眠いだけ。
食パンを焼いてバターを塗って、
熱いコーヒーを入れテーブルに並べる。
大樹と朝の早い弥勒の分。
俺にはコーヒーのみで煙草を一服。
「おっはよー。」
弥勒が部屋から出てきた。
「おー。」
弥勒は寝不足のような顔をしとる。
また徹夜か。
「なん?また寝てないん。」
煙草を咥えながらキッチンから問い掛ける。
弥勒は朝は必ず朝刊を読むことで、昨日までの出来事を把握する。
コタツに座って新聞を読みながら煙草に火をつけて、
「ン~?なんやかんやしてたら時間がすぐ無くなるからなぁ。」
俺もコタツに座りに行く。
「きのう天界に行った。」
「ほう。どうだった?天界の様子は。」
「渋滞。」
「渋滞?。」
「すんげー死者の数。犠牲者やって。」
大樹がシャツにズボン姿で部屋から出て来た。
いつもならネクタイ締めながら出てくんのに。
「大樹?。」
「・・・体調が悪いから、休む。」
沈んだ大樹がコタツに入って座る。
滅多に休まない大樹が?。
「なんや?熱でもあるんか?。」
手のひらを大樹の額にあててみるも、俺には解らん。
「自分で決めた事ならいいんじゃねーか?。」
弥勒が大樹を横目に見ながら返答する。
俺は弥勒と大樹を交互に見るも、
大樹の表情の暗さに黄泉の国を思い出した。
「カン、電話してやれ。」
「は?。」
「学校に休みの電話だって。
お前の恋人が休むって言ってんだろーが。」
恋人。
辛そうな大樹を見ると反論も出来んまま電話しに電話に向かう。
「カン、自分でもう済ませたから。
ありがとう。」
弱弱しく笑んではいるも普段と全く違う。
「大樹、もしかして黄泉の国でなんかあった?。」
再びコタツに戻って灰皿に煙草を消して問い掛けた。
弥勒は新聞を読みながら話を聞く。
大樹は暫く黙っているも、ゆっくり口を開く。
「黄泉の国は赤子が増えてたよ。
犠牲者は赤ちゃんや子供たちが日本では多いみたい。
釈迦如来の薦めで、鬼子母神が面倒を見てたらしいけど、
数が増えて今は阿弥陀様や地蔵菩薩や観音も引き入れてるって。
蛇の国もそれに参加してる。」
「日本が。」
ニュースを見ていれば解る。
虐待で亡くなっている子供が増え続けていることが。
それで、大樹は心を痛めて・・・。
「カン、弥勒。」
俺と弥勒の名を呼ぶ大樹は俺達の目を見ない。
「なん?。」
「人間が・・・人間が必要だとどうして思うの?。」
質問の内容にピンと来ない。
「どないしたん?急に、なんやねん。」
眉尻下げて笑みながら大樹に問うも、大樹は真剣で、
「神には自分達の繁栄の願いばかりで、
それを成就しても感謝の気持ちも薄い。
愛情への勘違いも激しくて、
出来心で通じた相手の子を生み殺し、
最愛であるはずの人の子を苦しんで生んでいるのに殺し。
神々の警告を2度もあじわったにも関わらず、
その教えを乱して地球すら破壊して。
そんな学ばない人間を、。」
「大樹・・・なんや?
学ばん人間をなんやねん。」
「カン・・・。」
この先に俺が聞きたくない言葉が出そうな相手が怖かった。
天界の神も言うその言葉。
天界の神も悩んでいる言葉。
俺の認めたくない言葉。
「偉い!大樹、お前は偉い!。」
「え?。」
満面の笑みで新聞を机に置いて大樹を褒める弥勒に、
俺は呆気にとられた。
偉い?。
何が偉いねん。
こいつは、人間は必要ないとか言うつもりやったんやぞ。
「おい、弥勒。お前何を言うてんねん!。」
俺が怒り口調で弥勒に言うと大樹は眉尻下げて俯いた。
「偉いじゃないか。
地球を真剣に考えているからこその想い。
人間をちゃんと見ているからこその想い。
神々の行動を見て把握できているからの想い。
それが出来た時、必ずぶち当る壁だろーが。
大体、大樹は元は神だぞ?
そんな神が人間を助ける為に人間になって、
神よりも人間の世を身近で感じて生活してる。
人間の欲も自分自身で感じ、リアルに感じ、
今の世の動きも上からでもなく、
リアルに感じてるんだ。
人間がこれ以上必要だなんて思えるのは、
普通で考えてもお前くらいだカン。」
「弥勒、お前それどういう意味や!。」
「大樹や俺が普通って意味。」
「弥勒、じゃ、君も思ってるってこと?
この先、人間は滅びるべきだって。」
「大樹!お前っ。」
俺は大樹の胸倉を掴み上げた。
「カンっ!。」
睨んで胸倉を掴む腕を大樹が掴む。
「俺も1度は思ったぞ?普通に。
神の想いや人間を救おうと努力してるお前達を見てたら、
思うのが普通だって言ってるんだ。
大樹だってそうだろ。」
「・・・うん。」
「カン、お前はそう思いたくないだけで、
感じてはいるはずだ。
人の行いがどれだけ他の生物を苦しめているか。
俺達よりも繊細な分。
それを希望と諦めたくない気持ちで押し殺してる。
違うなら大樹を殴れ。
そうなら、手を離してやれ。」
食パンを頬張りながら俺を悩ませる言葉を言う弥勒。
違うって言いたい。
でも、今までも何度もあった。
まだ天の子とも解らなかった時に、
人間を酷く嫌っていた。
今の大樹は理由を全て把握しての思い。
でも当時の俺は神の想いも知らないでの事。
そんな俺が今の大樹を責める権利はない。
「・・・カン。」
大樹から手を離して煙草を取り口に咥えて火をつける。
「でも、それを乗り越えられなけりゃ、
俺とカンや神との想いと繋がらなくなるな。」
大樹は弥勒の今の言葉に反応して弥勒に目を向け、
「俺はカンと今は同じ想いだ。
だからこうやって人間を続けてるし、
毎日その時の為に情報を集めてる。
そうなれた答えは自分で探せ、大樹。
必ずお前なら見つけられる。
なぁ?カン。」
大樹なら必ず。
「・・・知らん。」
少し、
いや、かなりショック。
大樹は今まで、ただ俺の想いについて来ただけやったんかって。
なんで人間を助ける手助け、
今までの大樹は人間よりも俺。
俺に対しての気持ちしか持ってなかった。
俺の考えを、俺が考えるから尊重し、
俺を助ける為に修行して、
大樹の愛情は俺へのみ注がれてた。
今まで考えもしなかった事。
俺もそれに慣れて、それが自然になってて疑問もなかったんや。
大樹を巻きこんだ。
それは、まぎれもなく俺。
この先への不安が増えた。
どうなる・・・俺達。

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