vol 77:黄泉の国の現状



寝ているからだから抜け出し、魂となる。

魂は人間の姿だが、黄泉の国で生まれた容姿となり、

蛇である俺は、蛇の国へと意識を集中。

そうすれば気付けば蛇の国の入口に立っているんだ。

此処に来ればやっぱり落ち着くな。

「兄様。」

「シロ!お前も帰ってたの?。」

俺の横に立ったシロに不思議に問い掛けた。
シロは顔を顰めて、

「昨夜の話を聞いていたので。」

「昨夜・・・。」

俺が黄泉の国に行く話は、カンと包容を交わした後で、
そう言えばシロの存在を忘れてた。
全部見られていたのか・・・あぁ~!恥ずかしい!。
俺が真っ赤になって頭を抱えていると、

「ほら、行きましょう。」

シロが先に歩きだした。

「あ、待ってよ!シロっ。」

追いかけるようにシロの隣に歩く。

「チビ神様!チビ神様が戻られた!。」

「おぉ!お帰りなさい、チビ神様!。」

「みんな。元気そうだね。良かった。」

出迎えてくれた蛇達に笑みを向ける。

「おい。兄様は忙しいんだ。道をあけろ。」

シロの言葉に蛇達は頭を下げて俺から離れる。
相変わらずのシロの態度には眉尻下がり、

「シロ、せっかく帰って来たんだから・・・。」

「何を言う。兄様が帰った理由は里帰りではなかろう。」

「そ、そうだけど、。」

「ほら。大神の元へ。」

シロの言う言葉から伝わる想い。
それは嫉妬にも思えた。
蛇達の俺とシロへの態度の違う事への。
シロの一番の心の壁。
俺はシロの手を握り笑んで歩く。

「なんですか。恥ずかしいから離してくださっ、。」

シロが頬を赤らめる光景に女達のクスクスと笑う声が聞こえる。

「いいじゃないかぁ。昔はよく手繋いで散歩に行ったろ~?。」

「そ、それは幼子の頃の話!兄様!。」

「そんなの関係ないってぇ。」

そのまま歩いたけど、シロに無理やり離された。
可愛い弟だ。

「大神。」

大神の社の中に入り、大神の姿を見るとシロは深く頭を下げた。

「おかえりなさい。白蛇神、チビ神。」

白い大蛇の俺の母は体に沢山の赤ちゃんを乗せていた。

「大神、この子供たちはいったい。」

俺の問いかけに大神は優しい声で答える。

「まっ先に此処に来たのですね。
この子たちは蛇の国で預かった人の子。
この蛇の国の住人になる子供たちです。」

シロは言う。

「・・・人間界で犠牲となった子供の数は増え、
黄泉の国全体で赤子や童の面倒を見ることになった。」

「犠牲?。
じゃ、殺された子たちって事なの?。」

大神は小さく頷いた。
日本でもこんなに子供の犠牲が。
ニュースに流れる子供殺害は一部。
大きな事件しかマスメディアには出ないからだ。

「カンは一緒ではないようですね。」

「うん。カンは天界に行ってる。
ねぇ、大神。他の国はどうなってるんでしょうか。」

大神は人間の姿になると、その場に正座し、

「黄泉の国は今、子ども達の保護につとめています。
犠牲となった子供は、釈迦如来のお考えで鬼子母神が面倒を見ていました。
ですが増え続ける為に、鬼子母神だけでは。
阿弥陀如来、地蔵菩薩、観音菩薩の国も協力し、
我々蛇の国も協力を申し出たのです。
美輪に来る人間の願いは増えています。
ですが、皆自分の事や家族への願い。
商売繁盛、病、学問、恋情。」

大神の表情は悲しくも見えた。

「人間は自分の事を優先する。
いや、自分の事ばかりだ。
願いが叶ったとしても、我々に感謝の気持ちもない。」

怒りを露にするシロ。

「白蛇神?感謝の気持ちは催促するような事ではありません。」

「ですが、神は願いを叶えて当たり前ではありませんか!。」

俺は何も言えなかった。
シロと大神の会話をただただ聞くだけで。

「我々は願いの判別もし、
その上で小さな出来事を起こすことしか出来ないのです。
その人間が成功したのであれば、
それはその者の努力。
我々は感謝をされれば嬉しい。
ですが、それよりも、
自分が努力出来た事の結果を大事にしてくれればそれで十分なのです。」

この神の想いをどれだけの人間が解ってくれているのだろう。

「母様!そのような事ではっ、。」

「チビ神、お前はどう思います?。」

シロの発言を途切れさせるかのように俺へと回された。

「俺は・・・俺は白蛇神の言う事もそうだと思います。
母様の言われる事も最もだと思う。
ただ、この様に思っていることを、
人間にも理解して欲しいと思う欲でしょうか。
人という生き物の持つ愛情の素晴らしさが、どうして・・・。」

言葉の難しさ。
感情の乱れ。
悲しみ・絶望。
全てが俺の中で混ざり合い上手く話せない。

「正直、白蛇神の想いに俺は近いと思います。
人が必要だとは思えません。」

苦痛を伴う言葉。
これが俺の本心だから。
でも、これじゃ・・・、
人を救う為に頑張っているカンへの裏切りに思えた。

「チビ神、白蛇神よ。
阿弥陀如来の元に今すぐに行かれよ。
その後、阿弥陀如来の言葉を受け止められた時、
大日如来に会うとよい。」

大神は目を細め無表情とも言える顔で、
優しい音色は消えた無の音色で俺達に告げた。

大神のそんな姿は初めて目にする光景で、
俺もシロも心がざわつく。

俺達は阿弥陀様の国に行くしかなかった。
複雑な心境のまま阿弥陀様の国に足を踏みいれたくはなかったものの、
阿弥陀如来に会うしかない。

「お久し振りです、チビ神、白蛇神よ。
いや、今は大樹とシロでしたか。」

ニッコリと笑む細い目は俺達のざわつきも安堵に変えてくれる。

「ご無沙汰してます。阿弥陀如来。」

俺は頭を下げた。
シロも同じく。

案内された部屋に座り、良い香りの白湯をもてなされ、
俺達の心は落ち着きを増す。

「大神より、先程話は聞きました。」

この世界、電波のようにして話をする事も出来る。

「お前達の気持ちは深く解りますよ。」

阿弥陀様の言葉にシロはホッと眉尻を下げている。

「ですが、私は諦めません。
その為に、カンや弥勒は日々矛盾に立ち向かい、
自分達の想いを信じて人間界を必死に乗り越えている。
大樹よ、
お前は我々がなぜ人を助けたいのか解るか?。」

重い質問に答えられない。
頭では解っているのに、
言葉に出来ない。
シロが心配そうに俺に顔を向ける。

「頭で解るのではありません。
心で解るのです。
私も元は人。人の心の乱れは身に沁みて知っている。
ですが、私も悟れたのです。
この私が。
人間は素晴らしい生き物。
罪により、死も痛みも感じる体になった故に、
感じられる素晴らしい心を持っている。
そして、欲も。
その欲は幸せになる為に使われれば何も問題は無いのですが、
欲というものはどうしても自分に使ってしまうのです。
ハハ・・・大樹に言っていて私自身、言葉を繋ぐのに困っている。
申し訳ない。
ただ、私は人へまだ期待している。
地球という星に生まれた命を絶やしたくはないのです。
人間を素晴らしいと思ってくれた天の子の意志を、
大切にしたいのです。」

シロは阿弥陀様の言葉を理解出来たのか。
俺は?。
なぜカンは俺達、蛇を綺麗だと思ったんだろう。
なぜカンは人間を救おうとしているのだろう。

「大樹よ。カンに問うといい。
お前が愛する者の言葉が一番お前には理解出来るのかもしれん。
そしてそなたが理解した後、
そなたを慕う弟にそなたが話しをすれば良い。
すれば、大神の想いも私の想いも理解できるであろう。」

カンは天界で何を見て、何を感じたんだろう。

神に問い、それを理解出来たんだろうか。






「大神よ、申し訳ない。」

「何をおっしゃいますか、阿弥陀如来。
これで良いのです。
子らも、こうやって学んでいくのです。」

「難しい世が来れば、我々の想いも伝わりにくくなるものですね。」

「信じる事が揺らげば、その分、全てが揺らいでしまいます。
神の元で育った者がぶち当たってしまう壁。
天の子、カンのように生物を愛せる者はほんの一部。
そして、貴方のように人間で生まれ、
このような想いになれる方もほんの一部。
まだ、蛇に言わせるつもりですか?。」

「ハハハ!大神よ、そなたは強い心の持ち主だ。
私も、また悟りをしないといけませんね。
昔の世の説法ではなく、
今の世の説法を。」







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