vol 76:天界の現状




現代での仕事に明け暮れて、天界に来るんも久し振りや。

大樹は今頃、黄泉の国か。

夜に寝てから天界に来た俺。

相変わらずの白い建物の中に入る。

「これはこれは天の子よ。
おかえりなさい。」

「ただいま~。」

天界の住人がそれぞれ挨拶をしてくれる。

でも・・・、

なんやこれ!天界の門をくぐると大勢の人。

天使達も慌ただしく走りまくっとる。

俺が帰って来た事に気づいた主が現れた。

「カンではないですか。
おかえりなさい。」

「兄ちゃん!なんやねん、この人だかりは。
なんかあったんか?。」

俺の質問には笑みを浮かべたまま、

「この者達は犠牲者ですよ。
殺されたり、自然の破壊によって亡くなった者達です。」

闇の手によって死んだ人や、地球の振いによって死んだ人。
こんなにもいるやなんて。
日本人はほとんどおらんなぁ。

「それは、自然破壊は他国の方が多いですし、
テロや犯罪も、まだ日本は少ないからですよ。
黄泉の国の住人も多少は増えているでしょうが、
こちらよりは少ないでしょう。」

主が歩きだした。
俺は見渡しながらついていく。

「パパは?。」

「父は庭に。」

「庭?。」

「えぇ。最近はずっと下界を見ていらっしゃいます。
地球と話をしたり。」

「ち、地球って話出来んのか?!。」

主は俺に眉尻下げて笑み、

「花や木と同じように、地球も生きているのですよ?カン。」

そうやった。苦笑して頭を掻いてごまかした。

「私は用があるので是非、父に会ってください。
お前の顔を見れば父も喜ぶ。」

「わかった。ほんなら、また後でな。」

主と会話を交わした後、神の居る庭に足を運んだ。
庭の真ん中に白髪の神がしゃがんでる。
地面を見つめ、その肩や頭には鳥が乗ってたり。
ここにおったら下界の雰囲気はまるでない。
俗に言う楽園そのものや。

「パーパ?。」

俺の容姿は天の子で、髪も伸びウエーブがかった金髪の女。
この世界では俺は女やからや。

「おぉー、我が娘よ。」

父が俺の声に振り返り満面の笑みを見せる。
俺は眉尻下げて笑み父の隣にしゃがみ込んだ。

「天界も忙しそうやな。」

「あぁ。4年前とはもう変わったからのう。
使者も増えた。」

物腰の柔らかな話し方。
威厳が少しはあったものの、今の神にはそれも感じない。

「主に聞いたけど、地球と話してたん?。」

「そうだ。なんとか落ち着かそうと思ってな。」

神はただ世の混乱を見てるんやのうて、
こうやって陰で俺らの為に努力してくれてる。

「どない?。」

「ここまで来ては難しいかもしれん。
私の力や天界、皆の力を地球に分け与えておるんだが・・・、
追いつかん状態だ。」

「そっか。」

「娘よ。何か聞きに来たのではないのか?。」

お見通し。

「あー、うん。
大樹が・・・蛇の息子がな、
人間の子供になんや吹き込んでる闇のもん見たらしいねん。
その日のうちに、その子供は父親を殺した。」

神はしゃがんでいた腰を地面におろして胡坐をかいて座った。
俺も隣に胡坐をかいて座ったけど足を叩かれて、
横座りにさせられた。

「なぁ、パパ。
ここ最近、犯罪も低年齢化してて弱いもんが人殺しをしとる傾向がある。
やっぱり、闇が関わってるん?。」

「大いに関わっている。
闇の者達の動きは監視している。
我々が失いたくはない未来ある子供を奪うことで、
人間の未来を無にしようとしておるからだ。」

「監視してる?
監視しとるのに、なんで野放しに・・・。」

「娘よ、遥か昔より人間は変わらん。
同じ過ちで滅んだ事も歴史とみなし、身につけた知恵で破壊の物を作っては、
自分達の権力の為に使い、生き物を殺し、地球を傷つけてきた。
昔に2度、人間含め生き物全てを私が見込んだ男と女以外を流しさり、
2度目は主を降ろして人間へ警告を発したのだが・・・、
また酷く繰り返されている。
偉大な宇宙一綺麗な星一つを破滅に追い込んでいる人間に、
これ以上の慈悲を与えるものなのか・・・。」

父、神の表情は哀しみに満ちた。

「こんな想いであったが、お前が人間を救いたいと幼心に決心し、
下界に降りた時、私ももう一度と思い地球と対話を続けてきた。
黄泉の国の神々も人間を救いたいと言う。
生きる人間のほんの一部には、
私を信じて願う者もいる。
その者達を、やはり放ってはおけぬのだ。」

神を悩ませる人間。
そんな神の想いも虚しく、散っていく信仰心。

「で、闇のもんに手出しせんのはなんで?。」

「それもまた、人間にこの世界がある事を気付かせる為。
悪魔という存在は神も持っておる。
それをどうコントロールすべきかだ。
善悪の判断。それが出来ず闇の者の囁きに身を委ねるようでは・・・。」

それには俺は納得出来ん。

「せやけど、母親が赤ん坊を殺すんも母親は生きてて、
赤ん坊が犠牲になるやんか!
戦争も小さい子供らがどんだけ犠牲にっ、。」

父は俺を抱きしめた。

「我が心優しき娘よ。
今この時代、末期を迎えようとしている。
それを最小限でも残そうと我々も頑張っておる。
親に暴力を振るわれ、銃弾の飛び散る中怯えて暮らす日々を、
子供たちにさせろというのか?
我々の声には反応を示さん人間を、どう助けろというのだ?。」

言いたい事も、言うてる事もようわかっとる。

せやけど、俺には噛み砕かれへんだけで・・・。

神は人間以外にも、地球や地球以外の星の住人との関係もあるんや。
人間を贔屓にこれ以上は出来ん言うこと。

俺は抱きしめる神の背中に両手を回して抱きしめた。
噛み砕かれへんかっても、
神の想いは解るからや。

「パパ、アタシは人間として本を書いてるんは知っとるよな?
それは主人公が霊との挟間で苦悩しながら成長していく内容や。
アタシが人間として経験してきたことを書いてる。
これが一人でも多くの若い奴に見てもらって、
ただのフィクションに感じずにパパの事も、黄泉の国の事も、
あるかもしれんって思ってくれるだけで、
アタシは何かに繋がるって思う。」

父は俺の話に背中を震わせて泣いた。
初めて見る父、神の涙。

「私が泣いたのはいつの頃か。
サタンがルシファーの頃、自分の力の無さに泣いたきりか。
娘よ・・・カンよ、
お前はほんに強くなった。
人間に揉まれながらも、自分の意志を心に持ち、
神々への感謝の気持ち、神々の悲しみまでも自分が背負おうとしておる。
兄もそうだが、
私はお前達を誇りに思うぞ。」

「え?ここにも埃あるん?綺麗に見えるけど。」

俺の場を和ませようと咄嗟に思いついたボケを神にかましてみる。

「・・・ハッハッハ!それはホコリでもゴミだろーが!。」

「アハアハアハ。」

良かった、神にもボケが通じて。

「だが、埃はゴミと言っても微生物達の言わば乗り物。
埃にも役割があるものだ。」

ハァ・・・言わんかったらよかった。
掃除すんのも気が引けるやん。
今の家事は俺担当やのに。

俺は天界で主の手伝いをしたり地球に力を注ぐ神と一緒に、
俺の小さな力を注いだり、
天使の手伝いをしたり、天界に来た新たな住人の話を聞いたりしてた。
大樹はどないしとるやろ。

黄泉の国。

黄泉の国の神々も、きっと同じ悩みで泣いてはせんやろか。















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