岩見沢等、札幌圏のカウンセリング相談
日常的にもよく使われる言葉、ストレスについて、少し説明しましょう。ストレスなる用語は、もともと物理の世界の専門用語でした。それを人間の生体反応を説明するために、生理の世界に持ち込んだのが有名なハンス・セリエです。ですから、心理の用語ではないのです。
ストレスとは、ストレッサーによって引き起こされる歪みに対して、生体が非特異的に反応することです。ストレッサーとは、生体にストレスを引き起こす外部環境の刺激のことです。ストレスを引き起こす刺激には様々なものがあります。心理的・物理的・化学的・生物的ストレッサーです。アレルギー反応である花粉症も、セリエのモデルで理解できるかもしれません。
まずストレッサーに晒された生体は、ショックを起こします。自律神経系の働きなどに変化が生じ、生体はちょっとびっくりして何もできない状態かもしれません。次いで生体は、そのようなストレッサーに対して適応しようと反応を示します。いわば、戦闘態勢に入るのです。血圧、体温、血糖値なども上昇します。この状態はしばらく続きます。つまり、持続的なストレッサーと、それに対するストレス耐性が五分五分の力でバランスを保つわけです。ホメオシタシス、人体の知恵です。ストレッサーが無くなれば生体は回復の道を歩み始めます。しかし、長期にわたって持続する場合には抵抗力としてのストレス耐性が弱まり、生体はますます衰弱してしまうのです。エネルギー切れ、ガス欠です。
生物としてよりよく生きるには、適度のストレスを生むストレッサーが必要です。この点で、よいストレッサーと悪いストレッサーが分類されます。その人にとって何がよくて、何が悪いのか、その境界を定める基準は人それぞれでしょう。しかし、不安や緊張を誘発する心理的ストレッサーであれば、好き嫌いの感情判断が絡んでくる可能性もありますが、あくまで生体が脅威と感じるか、いなかが問題ですから、私たちは自分にとって何がストレッサーとして作用するのか意識できない場合の方が多いのではないでしょうか。
セリエはネズミを使って動物実験をたくさんしました。その知見を人間に応用したのが、このストレス理論です。私たちは、彼の理論を大きく超えた「ストレス」の使い方をするようです。たとえば、よく使われるストレスの「発散」や「解消」がそうです。セリエ的に使うと、ストレスは発散・解消するものではなくて、それに対して人体が適応するものなのです。
私たちが日常的に使う「ストレス」は、生理の研究者セリエではなく、精神分析のフロイトの考え方に近いのかもしれません。初期のフロイトの理論で「貯留ヒステリー」があります。心的なエネルギー(リビドー)が自然な流れをせき止められて貯留してしまい、それが何らかの身体症状などに転換すると言うものです。「いやー、ストレスたまる。カラオケ行って発散するべか」、こんなことを口にする方は、貯まった鬱憤(うっぷん)をストレスで言い変えているわけです。鬱憤は人間に向けて発散しないようにしましょう。貯まる前に発散したなどの言い訳をされても、相手にとっては迷惑千万です。トラブルにならぬよう、ぜひカラオケ等で気晴らしを!
情動的ストレスを感じやすい人と、身体疾患との関連を指摘する学者もいます。有名なのはフリードマンらです。その理論によると、タイプA行動パターンと、心筋梗塞などの虚血性心疾患は、密接な関連があるとのことです。タイプA行動パターンとは、大雑把に言うと、ちょっと野心家で、セカセカしたタイプの振る舞いを示す人のことを言います。反対に、おっとり、ゆったりした人の振る舞いのことを、タイプB行動パターンと言います。私たちは、仕事中毒(ワーカホリック)にはならずに、落ち着いて仕事に励みたいものですが、何せこのご時世です。あくせくやらないかぎり、職を失う事態も考えねばならないのです。なかなか、うまくいきません。
ストレス反応からくる病気を診断し、症状を治療するのは、基本的に医師(お医者さん)でしょう。しかし、認知行動療法も役に立つかもしれません。私の私的な意見ですが、医学的治療と認知行動療法の併用が最適かもしれません。けれども、うっぷんなる言葉をストレスなる言葉に置き換えている方々には、カウンセリングが役に立つような気がします。あなたが使う「ストレス」は、「うっぷん」と言い換えることができますか。
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