vol 73:過去と現代




「カンちゃん、見て見て!。」

休み時間にボケーっとしてた俺に雑誌を見せに女子が来た。

「ちょーかっこいいよねぇ~。」

「なんやこいつら。」

「ほらぁ、この間この曲ええなぁって言ってた歌あるじゃん。
あれ歌ってるのこのグループだよ。」

最近、ヒットしてる日本の曲はどれもが同じようで、
声も歌い方も個性もなく聞く気せんかった。
昔の洋楽ばっかり聴いてたんやけど、
つい最近、何気に女子に聞かされた曲は久々に胸に響いた。
歌詞は恋愛の内容が多いし、そんなには良いと思わんけど、
あの曲と歌声にはかなり惹かれたんや。

「なんやこの名前。日本人グループちゃうやん。」

「うん。日本語で歌ってるけど、彼等は韓国人だよ?。」

「か、韓国ぅ?。」

「そ、か・ん・こ・く。」

「せ、せやけど・・・。」

俺の中での韓国への知識。
それは反日や歴史で習った朝鮮への侵略。
その韓国人が日本で今、韓流ブームと言われ、
世の女性は熱狂しとる。
でも、音楽もか?。
って、言うか日本人のレベル遥かに越しとるやん。
どの国にもない曲調、独特な雰囲気に甘い透った歌声。

「PVのDVD貸してあげよっか?。」

俺は女子にDVD借りて家で観た。

音楽は日本人も関わってるみたいやけど、
このダンス。
マイコーのダンスが世界一や思てたのに。
こいつらのダンスはマイコーとはまた別世界のキレで、
衝撃的や。

しかし韓国か。

俺はそのグループにハマって曲を集めたり、
DVD買ったりしてのめり込んだ。

そのグループの中に一人表情が気になる奴がいる。
男らしい表情、可愛い表情、表情によって顔がビックリする程変わる。
でも、そこに俺に見えるんは別の表情。
何かに悩み、寂しい表情。

そいつが気になってしゃーない。
携帯のネットで調べたり。

彼は、人気がある分、何かと注目され、
バッシングは勿論、裁判沙汰やらの出来事。
過去には両親の離婚やらでの苦難があったみたいや。
どんどん俺は、そいつしか知らん中を見ようとする。
ファンが見るところやのうて、
本人の中を見通すんや。
俺にしたら、それは自分のただの想像でしかないはず。
話したこともなけりゃ、会ったこともない相手や。

体が重い。

「どうしたの~?カンちゃん。」

「しんどいんじゃ、ボケぇ~。」

そんな会話を学校で女子とする。
なんや、この重さ。
霊か?。
空気を読むと良く解る。
自分の体調なんか、そうじゃないんか。

そうじゃない。
霊か。

(なんか用かぁ?。)

俺が話しかけると直ぐに答えた。

(わからないけど・・・ここに来たんだ。)

直ぐに姿が見える時と声や気の流れの変化だけの時もある。
姿が見えんから、なんとか見ようとした。

「お、お前っ!。」

「え、何?。」

つい、霊に言うた言葉が声に出てもうた。

「・・・なんもない。」

反応した女子にはとりあえずスルーさしたけど、

(お前、霊ちゃうやんけ!生きとるやん!。)

俺の言葉に不思議そうにする生き霊は、
俺が気になっとる奴やった。

(な、なんで体から抜けとるんや。
戻らな体力消耗するで!。)

生き霊は、生きたまま霊体だけが抜け出す。
本人は気付いていないものの、気力体力共に消耗が激しい。
俺が調べすぎて呼び寄せたか。

(俺はどうして此処にいるの?。)

何も解ってないコイツにどう説明しよか。
そう考えてる内に俺が聞きたい事で頭がいっぱいになった。

(なぁ、なんで寂しそうな顔いっつもしてるん?。)

彼は目を見開くも、生き霊は本人の本心の魂であって、
素直なもの。

(・・・自由がないんだ。それに、
愛しても何かが違って癒されない。)

伏せ目がちに呟く姿は儚げで、哀しい。
世間に出回っている情報を頭に置きながら話を進める。

(芸能人やもん、自由はないんちゃう?。
ホンマの愛情知ってるやつなんか少ないって。)

机に突っ伏して目を閉じて彼と会話を続けた。
俺の話に彼は素直に聞き入れる。
日本と韓国。
韓国は言わば朝鮮。
反日国の韓国が日本で活躍を見せる。
でも、反日感情は拭えない。
彼の反日への感情は読み取れない。
隠しているのか、昔の話で今の若者は違うのか。
日本が朝鮮にしてきた事。
それは日本だけではなく、どの国も戦争の思い出はけして良いものではない。
負けた国は恨みが残るもの。
日本が原爆でアメリカを非難しても、
違う形で日本も他国に酷い事をしてきたんや。

とか、俺の中でのやりとり。
でも、今来てるこの芸能人の悩みは人の心の悩み。
多分、伝わってくる愛情の理想は俺と同じや。
授業が終わって帰る頃には、すっかり仲良くなった。
帰り道、自転車で綺麗な景色の見えるとこに案内した。
そこは小さな町の景色が広がる。
階段に腰掛けて二人で笑ったり、真面目に話したり。
その間、生きてる本人は内容は解ってないものの、
ボーっとしとるはず。

(いい場所だね、カン。)

「せやろ?ここは穴場やねん。人も滅多に来んしな。
・・・なぁ、お前一人ちゃう。メンバーもおるんやし、
きっと、体に戻ったら俺の事覚えてへんやろうけど、
俺もおるから。
せやから、抱えこまんと・・・な?。」

(・・・うん。こんなに理解してもらったのは初めてだよ。
母さんには強く見せときたいし、メンバーはまた違うから。
こんな自分を心から受け入れて、
俺が欲しい言葉を言ってくれたのはカンが初めてだった。
ありがとう、カン。)

「て、照れるやないか。いつか会えたらえぇなぁ。」

(本当にそう思うよ。
君は可愛い女の子だし。)

こ、こいつ・・・俺の中を見とる。
天の子の霊体の俺を。

「そ、そろそろ帰るか。」

(あぁ、そうだね。俺も戻る。)

俺は男やって否定はせんかった。
まだ詳しくは解らんし考えた事もなかったけど、
霊から見たら俺は今の男の俺に見えるんか、昔の女の俺に見えるんか。
せやけど、コイツは女の天の子の俺を見てた。

家に帰ったら部屋にオッサンが座っとる。
石みたいな首飾りつけたオッサンや。
勿論、完全にこいつは霊。

「誰・・・ですか?。」

恐る恐る声をかける。
はっきりおるの見えてたら、なかなか無視も出来ん。

(私は朝廷だ。)

朝廷?。

朝廷って歴史に出てくる?。

「何か用ですか?。」

朝廷の前に正座して問い掛けた。

(当時の倭国には鉄鉱の産出がなく、朝鮮半島から鉄原料を輸入した。
朝鮮半島の任那は鉄の産地だったのだ。
百済と連携して朝鮮半島南部への出兵を頻繁に展開し、
倭国の農業生産力は大きく向上した。
それによって朝鮮半島諸国との通交・人的交流などに、
より技術や文化を持った多くの人々が渡来し、倭国へ貢献した。
我々と任那は深い協力関係にあったはずが・・・。)

朝廷は下唇を噛みしめて俯いた。

そうや。

時代が進むにつれ、韓国、朝鮮への協力関係は侵略に変わって行った。
その事を朝廷は、

(我々が良き事だと思ってやった事が、
今や任那は我々に恨みに変わるとは・・・。)

そうや。
初めは協力で双方が納得してのはずが、
力に変わり、日本の支配下になって戦争での日本人の行為に、
今では反日になってる。

初めて朝鮮と交流をした朝廷。
歴史の流れに辛い思いでいっぱいや。




やっぱり、ここに辿り着く。

戦争では憎しみや悲しみしか生まれへん。

なんで歯車が狂うんやろか。

そこには、人間の欲望が深く関わってくる。









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