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vol 69:真赤に咲く花
再び朝がやってくる。
いつものように学校に行き午前中の授業を受ける。
黒板に白いチョークで文字が書かれ、
それを椅子に凭れながら、ただただ見つめてた。
周りの生徒はみんなノートに黒板の文字を写してる。
授業か・・・。
こうしてたら、霊やら神やら封印やら、
まるで妄想の世界に思える。
窓の外に目をやると、晴天で白い雲が青空に浮かぶ。
飛行機が飛び、山や家並みの景色。
平和や。
日本には日本の国の問題で山積みや。
せやけど、この日本よりも遥かに悲惨な国はある。
今日も、どっかで誰かが死んでるんやろか。
(カン、待たせました。
皆は理解し黄泉の国に共に住む事になりました。
時は来ましたよ、カン。)
阿弥陀が現れた。
阿弥陀の話に俺は椅子から立ち上がり、
「マジで!。」
教室が静かになる。
「戌尾・・・これとこれを足せばこうなる。
マジだ。」
教師が俺に呟くと、ドッと笑いが教室に響いた。
「やだぁ。カンちゃん寝ボケてるんじゃない?。」
「カン、足し算も出来ないのかぁ~。」
クラスメイトにからかわれながらも、
俺は笑ってごまかした。
昼になり屋上で大樹に話す。
「そう!良かった。
じゃあ、小角様にお願い出来るね。」
大樹は笑顔で喜んでる。
俺も嬉しい。
「おう。せやから今日早速行ってくるわ。」
「行くって、でも電車とバスで行くの?。」
「あー、自転車では無理やしなぁ。
でも、早くしたりたいし・・・。」
大樹が真顔になり、
「カン、午後の授業は何?。」
「英語と生物。」
「よし!サボろう。」
「は?。」
「俺もサボる。」
そう言って大樹は弁当をしまい、立ちあがり、
「帰ったら俺が教えるから。
早くお父さん出してあげなきゃ。」
うん、と自分で納得して屋上を出て行った。
大樹も悪よのぅ。
でも、今俺とアイツの気持ちは同じ。
そして、サンの気持ちも。
「な?サン。」
サンに微笑んだ。
サンも俺に嬉しそうに微笑んだ。
幾年も怨み、悲しみ待ち続けた土蜘蛛達。
長い年月・・・苦しかったやろうに。
昼飯のサンドウィッチを頬張りながら思いに耽る。
阿弥陀と一緒に戻って来た土蜘蛛の一人の男が目を閉じ話てきた。
(実は・・・呪ったのも事実だ。)
「呪った?。」
(反抗する俺達を穴に追いやったアイツらに、
俺達は歯が立たなかった。
それで、アイツらの頭首を村の頭首が呪をかけた。
それが成功してアイツらの頭首は病に侵されたんだ。)
俺は黙って話を聞いてた。
(だ、だが!サンの親父さんは無関係だ。
呪ったのは一部の村人。)
結局、こいつらも罪悪感でいっぱい。
阿弥陀は俺に目を向けた。
「・・・もうえぇやん。
何百年、何千年て・・・、
怨んだり、ずっと腹立てて悔しい思いしてたんやろ?。
その間ずっと辛かったはずや。
それが、呪ったアンタらの罪。
せやから、気付けた今、その罪から解放されんねん。」
これが未だに、アイツらが悪い!。
アイツらなんかって思ってたら、土蜘蛛一族は、
怨みのまま、また幾年も過ごす事になる。
あの世にも行かず辛い過去のままで。
ゴミを袋に入れて立ち上がり、
「ほな、行こうか。」
帰る為に教室に行って、ゴミ箱にゴミ捨ててから俺様の芝居が始まる。
「グァアア~!。」
ど真ん中で叫びながら蹲った。
「キャ!カンちゃん?。」
「おい、なんだよ。」
クラスメイトが集まってくる。
「痛い、痛い痛い痛い!。」
腹を抱えて名演技を披露。
ガラッと教室のドアが開き、
「い、戌尾君!。」
脇役の大樹登場。
「せ、せんせ・・・痛い。」
半泣きの顔を大樹に向ける。
大樹は慌てた顔をし、
「これは大変だ。戌尾君の鞄取って。」
女子に告げ、女子は慌てて鞄を取りに行き、
教科書を鞄に詰めて大樹に渡す。
大樹は受取り肩に掛けて俺の腕を掴み立たせ、
「歩けるか?。」
俺はコクコクと頷きよろけながら立ち上がる。
「戌尾君を病院に連れて行くから、
担任の先生に伝えといて。」
そう言って学校を出る。
大樹は満面の笑みを浮かべ車を運転。
「俺もサボっちゃった。」
「・・・えぇんか~?。
午後の授業はぁ?。」
「1クラスだけだったし、3年だから自由研究に。
いい?帰ったらちゃんと勉強はするからね。」
「へいへい。」
大樹もまた、優し過ぎる性格。
葛城山の神社につくと、驚いた。
観光客にまぎれて、土蜘蛛の女や小さな子供まで集まってる。
みんな、待ってたんや。
「カン。」
「お、おぅ。」
大樹の肩にはシロもおった。
封印されてる場所は3ヶ所。
頭、手足、胴。
「小角様・・・おるか。」
(あぁ。入口鳥居の隅にある石だ。)
周りに田圃があり、彼岸花が沢山咲いている。
観光客は彼岸花の写真を撮ったりしてる。
大樹と俺は観光客にまぎれて鳥居に近付き大きな平べったい石の前へ。
(封印を解くぞ。)
そう言って小角様が両手に印を結び経を唱え始めた。
俺と大樹はただただ、それを見てるだけ。
俺は観光客に目を向ける。
何が今起こっているのか解ってもない、観光客に。
ドンっと大きな音がした。
(封印を解いた。ここは手足のようだ。)
生々しい現状。
実際は何も変わらない石。
でも、俺達に見えるんは、石の上に手足が2本づつある。
大樹は辛そうな顔をしてる。
俺は石に手を伸ばしたけど、
サンが先に手足を掴んで持った。
「サン・・・。」
サンの表情は悲しくて。
(次は本堂横の石だ。)
小角様の言葉に従い、本堂に向かう。
本堂横にある石が一番有名で、立札もあるくらいに。
でも、観光客は本堂か有名な樹木にしかいない。
(封印を解くぞ。)
「うん。」
小角様が封印を解く。
大きな音が聞こえると、石の上には胴体が置かれた。
サンは下唇を噛みしめとる。
サンが手足を片脇きに抱えて胴体に手を伸ばした。
「サン・・・俺に持たせて。」
俺は石の上の胴体を両手でゆっくり持ち上げた。
サンの悲しみ、辛さが伝わってくる。
頭や手足のない胴体を強く抱きしめた。
(うぅ・・・。)
サンは声を殺して涙を流す。
大樹も顔を伏せて垂らした手に握り拳を作り震えてた。
(カンよ、最後だ。)
小角様が立ったところは本堂やった。
俺は、その場所に目を見開くと共に怒りが込み上げてくる。
大樹は驚きが隠せないようや。
「ど、どうして本堂に。本堂に頭があるって言うの?。」
「ここの・・・神さんは・・・何しとるんや。」
静かに俺は呟いた。
小角様は言う。
(ここの神はワシも良く知っている。
まぁ、この者達の話を使えば、この者達を追いやった側の神だ。
さぁ、封印を解く。)
小角様が封印を解こうとすると、
(そなた達、何をする!。)
本堂から女が現れた。
本堂の神や。
(封印と解く。)
小角様が神に言う。
神は顔を顰め、
(何を言うか。私が此処を守り、
封印も守っている。)
俺は・・・キレた。
「おい・・・何を守るって?。」
「カン・・・抑えて。」
大樹が俺の肩を掴んだ。
小角様は神に関係なく封印を解き始める。
神は批判するも小角様を止める事は出来なかった。
大きな音がすると、本堂から頭が浮かび上がり、
サンが手足を離すと俺も胴体から手を離した。
胴体に手足や頭が付き、
(父さん・・・。)
封印から解かれた体は一つに戻り、
閉じられた目をゆっくり開いて、
(サン・・・。)
サンの名を愛しく呼ぶ。
俺達の心配してた、封印されてるこの父親が、
一番怨みや復讐に囚われてへんか思ってたのに、
この父親は全く清らかやったんや。
(父さん!。)
サンと父親は強く抱き合う。
大樹は笑み、小さく拍手した。
村人も集まり良かったと口々に言い笑む。
(小角!これはどういうことか!。)
本堂の神はどうやら小角様を良く知ってるらしく、
小角様は本堂の神と話を始めた。
俺はそれを睨みながら見てたけど、
(本当にありがとう。)
サンの父親が俺に話しかけてきた。
(ありがとう・・・ございます。)
母親・・・。
女が深々と頭を下げる。
(カン、ありがとう!。)
嬉しそうなサン。
俺も眉尻下げて頭を下げた。
「遅くなってすみませんでした。」
俺の言葉に母親は涙し、父親は頭を下げる。
「良かったね、サン。」
大樹がサンに話しかけるとサンは満面の笑みを浮かべ、
(ありがとう、大樹さん。)
こんな笑顔を戦は奪っている。
右手に重みと小さな手に握られた感覚がある。
下を向くと、小さな幼いチョンマゲ頭の子供が俺の手を繋いでた。
この子もまた、大人の犠牲者。
俺はしゃがみ、
「おぅ。人懐っこい子やなぁ。」
俺が話しかけると子供は嬉しそうに笑う。
大樹の手も掴み俺と大樹の間で嬉しそうに遊びだした。
(カン、話は終わったぞ。)
小角様が戻ってきた。
本堂の神もついて来る。
(話は解りました。
ですが・・・私はこの先何を守っていけばよいのか・・・。)
まだ、こんな事を言う神に俺は腹立つ。
せやけど、阿弥陀は俺に笑む。
落ちつけ、そういう神なんや。
「この土地を守って、ホンマに助けなあかん人を守ったってくれ。」
俺はそう言って本堂の神に一礼し、帰り道を歩きだした。
大樹が隣を歩き、まだ間に子供が手を繋いでる。
「可愛いね。」
大樹が言う。
「おぅ。」
俺が返事をする。
何気に振りかえると、村人達全員が頭を下げてた。
良かった。
(カンよ。ありがとう。
阿弥陀如来様も喜んでおられます。
あの者達は我々の国に連れて行きます。
天皇家には阿弥陀如来様が話しを。)
「そっちの事は任せるわ。
なんや、まだ消化できんけど良かった。」
大樹と子供と鳥居の所で少し遊んでから帰った。
沢山の彼岸花。
真赤な色してる。
その花言葉は1000以上もあるとか。
「情熱」「悲しい思い出」「独立」「再会」「あきらめ」
今回の話は、これ全部にあてはまる。
自分達への情熱。
悲しき思い出。
あの世での自分たちの世界への独立。
再会。
怨みへのあきらめ。
綺麗に咲く彼岸花。
俺には複雑に真っ赤に咲く花にしか見えんかった。
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