vol 68:スペシャリスト




次の日になっても阿弥陀と村人たちは現れへんかった。
俺はサンと過ごす。
サンと過ごしながらも、俺の頭の中では解決方法を考えてたんや。

阿弥陀も言うてた通り、封印を解く言うたら密教関係。
さぁて・・・どないするか。

(カン・・・どうした?。)

サンが俺の悩ましい顔を見て聞いてきた。

「阿弥陀の説得を待つか、大日如来にコンタクトとるか迷ってるんや。」

(そっか・・・ごめん。迷惑かけて。)

サンは伏せ目がちになって呟く。

「何言うとんねん。俺もお父さん、はよう出してやりたいねん。」

サンは俺の表情を読む。
不安にさせたくなかった。

「よし!阿弥陀は絶対に説得しよる。
大日如来呼ぶで!。」

俺は立ち上がって勢い良く叫んだ。

(もう来ている。)

俺の真横に大日如来が浮かび上がった。

「ば、婆ちゃん・・・。」

(人前でその呼び名はやめなさい。)

相変わらず成長せん、俺の礼儀への態度に困った顔を見せる大日如来。

俺は大日如来に、一から説明せなと思い、

「あのな、実は。」

大日如来は目を細め、

(知っていますよ。お前が私を思い浮かべた時から共に居、
見ていました。)

大日如来は孫である俺をずっと気にかけていた様や。
だから呼ばんでも、必要と感じれば来てくれるって事やろう。

(カンよ。信貴の山に寺があります。
そこの役小角という者に会うのです。)

えんの・・・おづぬ?。
知ってる。
人間でありながら呪術に優れ、鬼を操る事も出来て、
神と親交があった人や。
やっぱり、小角は密教に深く繋がりのある人。
俺は中学の頃、退魔行の話の漫画にハマってた。
退魔はおもに密教が主。

「解った。会いに行く。」

俺の性格上、思い立ったが吉日。
サンを連れて信貴の山へ向かった。
信貴の山は、うちの近くの山で自転車ではさすがにキツい。
バスで行く事にしたんや。
もう10月近い。
山は冷たい風が吹き、空も18時には暗くなりだす。
バスが止まり、降りて寺に向かう。
朝護孫子寺。
山の中に沢山の真言宗の寺があり、
真言宗は密教や。
中学の頃に訳も解らんと調べてたのが今になって役立つとは。
せやけど、ここに小角にまつわるもんがあるとは知らなんだなぁ。
歩く道に寺がいくつも出てくるも、通り過ぎ、

(柵の中に虎がいる前の階段を上るんです。)

大日如来の言う虎を探す。
虎の石造は2、3個あったけど、最後本堂の手前の所の虎に目がいった。
右に親子の虎の石造が檻の中に居る。
左を見ると階段があった。
そこを登って行く。結構な距離や。

「行者堂。」

小さな寺があった。
修験道の開祖とされる役行者ゆかりの霊場と書かれている。
強い力を体で感じる。
気を抜けば、その場に倒れそうな程強い。

(よくぞ参った。待っていたぞ、カンよ。)

「小角・・・役小角かっ!。
いてっ。」

後頭部を大日如来が叩く。

(お前は目上の者にっ!。)

でた。礼儀。

「役小角・・・さま?。」

渋々聞き直す。

(そうだ。良くぞ参った。)

小角様は姿は見せず、その強い力の気と言葉のみ。
ただ、言葉は貫録があり、心は澄んでいるにも関わらず、
この強さ。
俺は嬉しくてしかたない。
元が神ではなく、人間でこの心。
俺はうっとりした顔をし、

「・・すき・・・。」

(か、カン?。)

サンが顔を顰めて俺の名を呼んだ。
我に返った俺は、その場に土下座し、それを見たサンは目を見開いた。

「小角様っ!どうか、力貸してください!。」

地面に額をつけて願う。

「俺じゃ、どうも出来んのです。
アンタはこの道のスペシャリストや。
こいつの、サンの親父助けてください!。」

サンは俺の横に同じく土下座をした。

(立て、カンよ。)

「・・・小角様。」

俺は眉尻下げて頭を上げた。

(百足が通る。)

「へ?。」

ふと自分の土下座している地面を見ると、
赤黒いムカデが居て俺は飛び上がった。

「ぎゃぁあああああ!。」

昆虫は非常に苦手や。

(話は大日如来より聞いている。
力を貸そう。)

未だ、ムカデでガタガタ震えて半泣きの俺は、
コクコクと頭を上下に揺らした。

帰りはサンと大日如来、小角様と寺を歩く。

「あ。」

またムカデ。
昔、何度か正月の初詣とかに来たことあるけど、
ムカデ見たんも初めてやし、しかも2匹目や。

(カン。)

サンが俺を呼んで石造を指差した。

「2匹の・・・ムカデ。」

石造には2匹のムカデが彫られていて、
辺りを見渡すと旗にも2匹の赤いムカデの絵が。

(百足は、毘沙門天の教えよぉ。
たくさんの足(百足)のうち、
たった一足の歩調や歩く方向が違っても前に進むのに支障が出る。
困難や問題に向かうには皆が心を一つにして当るようにとの教えだ。)

小角が理由を教えてくれた。
信貴の山のこの寺は毘沙門天が祀られていて有名や。

(この2匹の百足と出会った事を忘れるな。)

「うん。」

せやけど、説明せんでも大日如来が裏で話を回してた。
これがなかったら、小角様に初面識で、
一から説明+俺の考えや俺の行動、俺の想いまで見て、伝えて、
小角様に気に入られてやっと力になってもらえるところや。
それをやってたら、どんだけ時間かかるか。
大日如来のおかげで、こんなスムーズに。
俺は大日如来に振り向いて満面の笑みで、

「ありがとう。」

礼を言うた。
大日如来は優しい笑みを浮かべて小さく頷いた。




よっしゃ!。
あとは阿弥陀を待つのみや。








神様はいろいろ居る。

神頼み。

どんな願いも叶える神。

良い願いのみ叶える神。

病気の治癒の願いを叶える神。

争い事の願いを叶える神。

学業の願いを叶える神。

恋愛を叶える神。

いろんな神様がいる。

願う人の心を見る神は数少ないかもしれん。

でも、その者の考えを知って願いを叶える神の威力は、

持続し、力も大きい。

ただ、それにはその者を試し、

その者の心底深くにある性格や想いを見る。

素直・信念・信仰・考え・行動、

これら全てを把握して力を貸す。

俺はなんでも叶える神の力よりも、

自分自身を見て、試して納得してくれた神の力を借りたい。
















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