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vol 67:憎しみと怒りの渦
次の日になって、憂鬱のまま学校に行き、
朝に弥勒にメールしてたから、弥勒と夕方合流。
大樹も仕事を終えて、俺の部屋に集合。
「俺も、妖怪にはお目にかかったことがなかったが、
妖怪と呼ばれる奴らが今回のは人間だったなんてな。」
弥勒が胡坐をかいて床に座って煙草を噴かしながら呟いた。
それに対してベッドに座っている大樹が呟く。
「でも、実際はこうなのかもしれない。
今だからこそ、奇形児の存在が病気や薬で知られてる。
昔は・・・そんな人達は人間に見られなかったかもしれない。」
「まぁ、実際呪で蛇のような子が出来たりもある。
本当の妖怪も居ないとは限らねぇからなぁ。」
弥勒と大樹の話をベッドで寝ながら聞いてた。
部屋の空気が一気に変わり、俺の部屋は満室になる。
女もいれば、男、子供も居る。
土蜘蛛の一族や。
「来たか。」
俺は知ってるサンを見て薄ら微笑えんだ。
(サンから話は聞いた。
だが、我々の屈辱を忘れる事は出来ない。)
代表者なんか、厳つい顔をした年のいった男が口を開く。
俺は言う。
「忘れんでもえぇ。
忘れられる事と違うし、忘れたらアカン事や。
ただ、もうこれ以上アンタらが苦しむ事ない言うとんねん。」
(だからこそ!。
だからこそ、復讐をする!。
あの忌々しい奴等を同じ目に遭わせてやる!。)
空気が怒りに変化する。
村人全員が怒りの感情を露にする。
(その者達もなぜ我々を知ってる。)
男が弥勒と大樹を睨みつけた。
「こいつらは俺の大事な友人や。
アンタらの事も見えるし、声も聞こえてる。
俺と思いは同じや。」
村人はヒソヒソと話をし始めた。
「で、アンタ達は封印を解かれたら、
サンの父親と共に復讐をしに行くつもりか?。」
弥勒が話しかけた。
(そうだ。
あいつは何百年あの石の下に閉じ込められている。
怨みは我々と同じなはず。)
「・・・それじゃ、封印を解いてあげられないよ。」
眉尻下げて大樹が呟いた。
(なぜだ!。
村を追いやられ、反抗した者全てを殺されたんだぞ!。)
「それは解ってる。
せやけど、死んでまだ、戦したいんか?。
死んでまだ・・・憎しみ合いたいんか。
アイツらと同じ事をしたいんか?。」
俺の言葉に村人は黙り歯を食い縛って悔しそうな顔を見せる。
「これ以上、貴方達がそんな思いする必要ないよ。
追いやった彼等は罪を受けてる。
黄泉の国の阿弥陀様の元で、いつの世が過ぎても、
生きている時のまま、家来を付けて自分達の国がいつ狙われるかと、
ビクビクして暮らしてる。
貴方達が苦しんで来た日と同じだけ。」
大樹が説明をする。
男は聞く。
(我々はどうしたらいいんだ。
同じ黄泉の国に行けと言うのか?。)
「同じ黄泉の国でも、黄泉の国にはいろんな国があり、
とてつもない広さを持っている。
同じ所に行くわけでもない。
アンタらはアンタらの幸せな国に行けばいいんだよ。」
弥勒の言葉に村人たちの表情は和らいだ。
俺はベッドから降りて立ち、
「えぇか。俺はアンタ達に理解を求める。
怨みや怒りを心にしまい、幸せになってもらいたい。
復讐をせんって誓ってくれ!。
復讐は何も生まれへん。
復讐された側も、した側も今まで以上の苦しみに遭うやろう。
それを約束し、封印から解かれたサンの父親を、
村人全員で迎えるんや。
一番苦しんでるんは、サンの父親やろーが。」
サンは俺を見た。
その目には俺はどう映ってるんやろか。
(カンよ。)
そこに阿弥陀が現れた。
弥勒が立ちあがって阿弥陀に頭を下げる。
大樹も立ちあがり頭を下げた。
阿弥陀は二人に笑み頭を下げる。
(この者達を黄泉の国に一度案内させて欲しい。
構わないか?。)
「どないする?。」
俺は村人に声をかけた。
村人は小さく頷き、阿弥陀は村人たちを連れて黄泉の国へ。
サンは残って俺達と居る。
「でも、なんか俺・・・お父さんは怒ってない気がする。」
「俺も。」
大樹の言葉に弥勒も同感だと言う。
「あの場所に行っても、居辛かったのは確かだけど、
怒りや怨みは感じなかった。
封印されていても、なんかしら感じてもおかしくないよね?。」
「こんだけ村人の怒りや怨みの念があれば、
父親は相当な気持ちだろうからなぁ。」
俺はサンに笑みを浮かべ、
「サン、大丈夫や。
阿弥陀がまた説得してくれる。
サンは、お父さんが出て来た時に、どんな状態であっても、
支えてやらなな。」
サンは不安そうな顔をした。
「なんやその顔~。
俺もおるやんけ。」
俺はわざとニカッと笑ってみせた。
サンは俺の顔に眉尻下げて笑み小さく頷く。
俺は笑って見せた。
でも、心の中と頭ん中は事の大きさと、
人間の怒りや怨み、事実の情景、
サンに会う度に首筋に痛みが走る。
サンは逃げる途中、首に矢が刺さり死んだ。
今もまだ、その違和感と鈍い痛みが残ってるんやろう。
携帯で調べたら、今回の土蜘蛛の封印の話も、
いろんな地域であるみたいやった。
争いの結果、何が残った?。
一体なにが・・・。
でも、その歴史があって今の俺らの世の中がある。
この事実に俺の中では答えが出ん。
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