vol 65:普通の日常の不安




俺は今、男と付き合ってる。

たぶん。

いや、これは事実か。

「んぅ・・・カン?。」

起きよった。

広いベッドにうつ伏せで寝てた大樹が目を覚ました。

広いベッド・・・ここは・・・、

ご想像にお任せします。





「ホテルってすごかったね。
泡のお風呂には、また入りたいよ。」

ご満悦な大樹。

車の中でニコニコしながらご満悦な大樹の隣で、

いまだになぜ、ああいう場所に行ったのか疑問中の俺。

事は弥勒の発言からや。





「お前らってさ、もう契りは結んだのか?。」

「契り?。」

俺は言葉が解らずに首をかしげた。

大樹は真赤になって、

「弥勒、何?急に。」

弥勒は雑誌を取ると、とあるページを開き、

「今話題のラブホ特集。」

ラブホ?。

ラブホ・・・契り?。

・・・。

「み、弥勒!なんで、そんなっ、」

「まぁまぁ。別に恥ずかしい事じゃないだろう?。
本当に愛し合っている者同士の、将来をも約束された者同士なら、
何も、問題ない話だ。」

弥勒と大樹の話についていけない俺。
いまだに頭にハテナが浮かぶ。

「俺には無関係の場所だが、
こんな面白そうな部屋は見てみたいよなぁ。」

弥勒がページを捲り、

「ほら!ここなんてプール付きだってよ。」

ラブホくらい知ってる。

ただ、契りの意味がわか・・・あ。

「弥勒、貸せっ!。」

意味が解った俺は慌てて本を奪ってゴミ箱に捨てた。

「おい、何すんだよ。
明日のテレビ情報がわかんねーだろーが。」

テレビ情報雑誌の特集に今話題のラブホが載っていたらしい。






結局、大樹はこの話に洗脳されてしまい、
頭を下げて泣かれて、いざラブホで1泊。

興奮した大樹がオオカミに見え、
何回も迫られ、言いなりの俺自身が情けない時間でした。

「カン、お昼何食べたい?。」

ご満悦の大樹に腹も立ち、

「か、カニ!カニ食いたい!絶対カニ!。」

と豪勢な食べ物を言ってみるも、
今まで彼女もいなかった為に貯金もあるこの男は、
財布の中身を気にすることなくひとつ返事で、

「うん、解った。」

カニ専門店に向かう。

完璧な和の空間で、まっ昼間からカニを食す。
大樹はともかく、浮きまくってる俺の存在。
でも、カニは絶品で美味しく食べた。

「じゃ、この後はどうしようか。」

帰りたい。

帰って自分を反省したい。

そう思うもさすがに言えず、

「俺にばっかり聞くなや。」

これが限界発言で、

「そうだね、じゃー・・・、
弥勒も呼んでカラオケに行く?。」

「絶対無理!。」

それには青褪めて即答。

またマイク両手で持たれて読経は有りえへん。

「アハハハ、冗談だよ。」

机に片肘をついて頬杖して笑む大樹は、
実に今の時間を楽しそうに過ごしてる。

「とりあえず、店出ようや。」

店を出て、車に再び乗り込む。
大樹が楽しいんやったら、俺も楽しまな損やん。
そう思ったら行きたいところがドンドン出てくる。

「大樹、ゲーセン!。」

「ゲーセン?ん~・・・あんまり好きじゃないけど。」

そう言いながらも俺には弱い大樹。
オオカミからヒツジに戻る。

ゲーセンでは俺は満喫。
大樹は、トランプゲームにハマったようで一応満喫してる。

3時間程、ゲーセンで遊んで大樹んちに。

「まーつきちぃ~!。」

新聞を読んでたマツキチに御挨拶。

「おー、カン。」

マツキチの読んでる新聞の表に俺は目を止めた。

核兵器問題。

すぐにサタンの顔が目に映った。

「カンちゃん、お夕飯食べていきなさいな。」

千代さんの言葉に、

「うん。」

返事をする。

「カン、今日はカンの好きなカレー・・・。」

台所から部屋に入って来た大樹も途中で言葉を詰まらせた。
大樹は俺と視線を合わせ、
小さく頷いた。
俺達の中で解っている事。




今日の俺は、普通の日常を過ごしてた。

サタン、お前は何をしてたん?。

俺が普通に過ごしてる日は、

お前は・・・何を・・・。
















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