|
vol 60:誰の想いを
俺と弥勒は考えた。
どうすれば、この龍神にとって良いのか。
「カン、建て直すか。」
弥勒の提案には賛成できん。
だって・・・、
「建て治しても、この村の人は守り神を怖がってるんや。
それに、また同じようになる可能性かてある。」
村人の言い伝えで祀られ、それを継いで行く若者がいない現実。
昔とは変わりゆく想い。
弥勒は顔を顰めて膨れている俺に頭を掻きながら困ってる。
「だぁあああ!じゃあ、どーすんだよ!。」
弥勒は叫びながらしゃがみ込んだ。
どうしたもんか。
村から出た出身の奴を探しに行く?。
それは無理がある。
都会で住んでる奴が、この田舎にそれが理由で戻る奴はそういない。
おっても、1人がええとこや。
誰にとってええようにする?。
現代の人間?。
昔の人の想い?。
龍神?。
俺は龍神の顔の前に行き、
地面から顔だけを出している龍神に目線を合わせるようにしゃがみ、
龍神に問い掛けた。
「なぁ。龍神様はどないしたいん?。」
弥勒は俺の方を向いて立ちあがり、
俺の後ろに立って龍神の答えを聞こうとしてる。
(グヌゥゥ・・・我はもう休みたい。)
その言葉に俺は龍神に笑んで立ちあがり、
「そっか。それがお前の想いやな?。」
「カン!それじゃ、この村はどうなる。
龍神を信じてる年寄りもいるはずだ。」
俺は弥勒に振り返り、龍神の前に立って弥勒に言う。
「弥勒、もうええやん。」
「は?。」
「こいつは神になりたくてなったわけでもないのに、
この村の為に龍神にまでなって、今まで守ってきたんや。
その仕打ちがこの有様。
何百年もこの村を守って来てん。
もうええやん。
今度は自分の好きにさせたったら。」
「でも、。」
「そんかわり・・・、。」
俺は再度、龍神に振り向き、龍神の額に手のひらを触れさせ、
「全て無しはアカン。
今まで、守ってきたんやさかい、たまには様子見に来たって?。
この祠は俺らで建て直す。
それくらいは、修行してまでこの村守って来たんやから、
お前を信じて亡くなった人達にて思ったら出来るやろう。」
龍神は俺を鋭い目でジッと見つめる。
「な?。」
(解った。我もこの村が愛しい。
世代が変わり我を忘れていこうとも、我はこの村を陰ながら見守る。)
「そっかぁ。これで交渉成立や。」
俺は額を撫でてやり、満面の笑みを浮かべ、
「そうなったら、思った事は直ぐ実行や!
弥勒、村に戻るで!。」
「ちょ、。」
「村人共、集めて修復作業や!。」
弥勒の腕を掴み、
「待っててや!直ぐに体戻したるさかいに!。」
「おい!カンっ。」
弥勒の腕を引っ張って走って山を降りる。
田村のオッサンんとこ行って、祠を直したら元に戻る言うて説明する。
田村のオッサンは村人に協力を要請。
集まった数少ない村人に俺らも参戦。
崩れた木を集めて、足りん木は森から枝を拾ったりして、
見た目は継接ぎだらけの祠が完成。
もうすっかり日も暮れた。
最後は村のオバチャンが持って来てくれた、
オニギリをその場所でみんなでワイワイ言いながら食った。
俺はオニギリを3つ取って、2つを祠の前に置いた。
トカゲの婆ちゃんと龍神様の分。
「ほら、腹は減ってへんやろうけどお前らも頑張ってきたんやから、
今の俺らと同じや。」
祠の前に胡坐をかいて座って俺も自分のオニギリを食べた。
龍神は祠に重なるように透けて俺を見る。
顔の傷も無くなってかっこええ姿や。
(お前、名はなんと言う・・・。)
龍神は俺の名前を聞いてきた。
「俺はカンや。戌尾 柑。」
(カン・・・、お前の名は忘れぬ。
お前になにかあった時、我はお前の力になろう。
我は・・・お前が気にいった。
ありがとう・・・ありがとう、カン。)
村のオッサンが弥勒に問い掛ける。
「お坊さん、あの若いの、何一人でブツブツ言うとるんだ?。」
弥勒は俺を見てから顔を戻して目を閉じ笑み、
「さぁ。龍神様とでも話してるんじゃないっすか。」
そして、空から滴が落ちてきた。
「あ、雨じゃ!。」
「おぉ!雨じゃ!龍神様の雨じゃ!。」
いきなりザーザー降り出した雨。
「ありがたや。」
「ありがたや。」
そして、その村人の声と重なって、
(ありがたや・・・ありがたや・・・。)
婆ちゃんの声が聞こえた。
その晩は帰るにも遅いし、ずぶ濡れやから田村のオッサンちに泊まることに。
「全く・・・本当にお前は。」
弥勒が髪を拭きながらブツブツ言う。
「なんやねん。さっきから。」
俺は布団に寝転んでうつ伏せになり力仕事と、山登りで体が筋肉痛。
「お前はよぉ、礼儀も知らねぇし、馬鹿でアホなのに・・・、
なんでそう最後には仲良くなっちまうんだろうな。」
「おい・・・それ褒めてんのか苦情かどっちや。」
「あ?両方だ。神に向かってお前って・・・有りえねぇだろ普通。
大日如来の孫とは思えないね。」
「うっさいなぁ!龍神もご機嫌やったしえぇやんか・・・別に。」
弥勒は俺に笑んで枕を俺に投げてきた。
「ま、そこがお前の力なんだろうけどな!。」
枕は俺の頭にヒット。
「ぶっ!な、何すんねん!。」
「お?やるか?アホ。」
「くぅっの~!。」
まるで中坊の修学旅行でも今時せん枕投げ合戦開始。
で、疲れ果てた二人は大の字になって爆睡。
大日如来の婆ちゃん。
俺には当分、礼儀は出来そうにありません・・・かも。

60 
|