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vol 61:テレビ
「アハハ・・そっか。大変だったんだね。」
「めちゃめちゃ体痛い。帰って来て1日経つのに。」
「普段山登りなんかしないから仕方ないよ。」
大樹が、やっと休みや言うて寺に来た。
車のトランクにはボストンバックとお菓子の袋3つ。
「あぁ、これ母さんが。」
「なんやこれ?弁当?。」
ふろしきを開くと3重の正方形の豪華な箱。
中開けてビックリや。
俺の好物ばっかりの料理に赤飯のオニギリ。
「うわぁあああ!千代さん最高やぁ!。」
寺の料理は肉がない。
弥勒がたまに住職のいない日に肉を食わせてくれるくらい。
「唐揚げ・・・久しぶりに見た・・・。」
プチショックを受けつつも夜食の楽しみにしとく。
「カァ~ン?。」
大樹が後から抱きしめてきよった。
「な、なん?ここは寺や。不謹慎な行動は・・・。」
俺は未だに恋人とのイチャイチャに照れがある。
これが男女の関係やったら違うんやろか。
大樹は頬を両手で包み自分に顔を向かせて顔中に唇を触れさせる。
「ちょ・・・大樹、やめーやぁ。」
顔を顰めてみるも実際は心地いい。
「ちょっ、くすぐったいてっ、大樹っ。」
大樹の手が服下に這って腹をゆっくり撫で上げていく。
首筋に触れる大樹の唇。
あぁ、アカン・・・気持ちえぇ。
ガラッ!。
襖が勢い良く開いた。
弥勒が冷やかな視線を向けて仁王立ち。
「貴様ら・・・昼飯だ。」
「おおおお、おぅ!。」
俺は真赤になって大樹を引き離し立ち上がる。
こういう空気もドキドキして好きやない。
大樹は大きな溜息を吐き、ゆっくり立ち上がった。
「ハァー。・・・はいはい。」
頭を掻きながら返事をする大樹に弥勒はビシッと指差し、
「ハイは1回!。」
他人から見れば、人のイチャつきなんかこんなもんや。
いい気分なんかせんわな。
飯食ってからは寺の掃除に、経本の解読。
俺には難しくて半分寝とるけど、大樹は楽しそうに読書。
時間はあっと言う間に過ぎていく。
18時になって飯食って風呂入って3人で部屋でお菓子食いながらテレビ。
「お、なんだ?怖い話だってよ。」
弥勒がチャンネルを変えていてリモコンの指を止める。
「弥勒、俺はそう言うの好きじゃない。」
大樹が本を読みながら呟く。
「ええやん。夏と言えば怖い話やろ。
それに勉強になるかも。」
俺はノリ気やった。
映像で見るんは、正直苦手。
だってな、めっちゃ怖く作られてるやん。
テレビとかに出てくる血まみれとかの霊はまだ実際見たことないし。
俺と弥勒は二人でテレビの前に座ってドラマ仕立ての番組を見てた。
話しは、ドライブ中に山道でエンスト。
真っ暗で気味悪いながらも男が近くの家に人影を見たから、
電話を借りに家に出向く。
1階には誰もおらん。
2階で物音がしたから2階に続く階段上を見ながら声をかけた。
ほんなら2階から現れたんは頭のない白い姿の体が階段を降りてきて、
慌てて逃げて車に乗ってエンジンかかったからライト付けたら、
フロントガラスには怖い女の顔。
「うわっ!。」
俺は怖くて弥勒の腕を咄嗟に掴んだ。
弥勒は無言でテレビ見とる。
話しが終わると、霊能者がこの話を霊視して事の真相を話し始めた。
真相はこう。
女は自殺者であの世に行けず、家を住み家とし、
その女が霊を集め魔物の住み家となっている。
へぇー。魔物か。
そう思った瞬間にテレビからグワングワンと感じ始めた。
「おい、カン。お前何言った!。」
部屋が一気に空気が変わる。
「カン?。」
大樹が本を机に置いて俺に目を向ける。
「は?俺別になんも・・・っ!。」
「こ、これは・・・。」
俺達の見たものは、
部屋に白い服を着た女と、何匹もの狐に、一人の男。
「呼び寄せたな。」
弥勒は立ち上がって数珠を取ろうとする。
大樹は慌てて俺の横に移動。
ちょい待って。
俺のせい?。
今まで出会った霊達と違って、殺気だっている。
そこでいつもの癖。
「・・・どないしたん?。」
俺の発言に弥勒は目が点。
大樹は眉尻下げて溜息。
「なんで、そないに怒ってるん?。」
テレビでは女が主体言うてた。
俺は女に目を向け話かけた。
「なぁ、いろいろあったんやろうけど、なんであの家におるん?。」
「カン!お前、俺達に殺気だってるの解らんのか!。」
弥勒は両手を合わせた。
(いや・・・別に私は・・・。)
「オンアボギャ・・・。」
弥勒は真言を唱えようとする。
別に私は?。
女の言葉に引っかかって、立ち上がって弥勒の手を叩き、
「いっ!カンっ!。」
「ちょう待てや!話くらい聞いてもええやろ。」
弥勒を止めると、わらわらと俺達を囲む狐達を気にしながらも、
女に話かけた。
「なぁ、アンタは別にあの世に行ってもかまへんの?。」
(え?・・・。)
女は戸惑った表情で狐達に目を向けて黙りこんだ。
もしかして。
「この狐に束縛されてんのか?。」
それに対して1匹の狐が反応した。
(オマエ、オレ達ト居タイ。違ウカっ!。)
その言い方は強制じみた言い方で、女は咄嗟に眉尻下げて、
(ち、違わない。)
大樹が弥勒に近付き小声で、
「弥勒・・・女の人。」
「あぁ。同情で狐共と居る感じだな。」
俺は話す相手を狐に向けた。
「どないしてん。なんで怒ってるん。何があったんや?。」
(人間憎イ。人間・・・人間・・・。)
その言葉と共に、猛烈な怒りが押し寄せてくる。
「おい。もしかして、魔物って言われたことに腹立ててるのか?。」
弥勒が話し始めた。
(ソウイウ見方シカシナイ人間。
沢山。死ネ!死ネ!。)
「お前らがあんな怖がらせ方してるからだろう。
霊能者になんで言わない。」
テレビでは違う話に移ってて、霊能者が除霊している場面になってた。
霊能者は誰が憑いてるか説明した後、
それが先祖であっても、除霊し始めた。
「弥勒、あれじゃ・・・話しを聞いても無理矢理除霊してる。」
大樹が言う。
(オレ達ノ気持チ、解ラナイ。
解ロウトモシナイ。人間死ネ!。)
俺は狐によっぽどの事があったんやって感じた。
こんな怨みもってるんやもん。
「なぁ、なんかされたん?人間に。」
(うぅ・・・。)
俺が問い掛けると男が唸り声を上げ始めた。
男に視線を向けると男は膝まづき、
(俺が・・・俺が悪いんだ。
俺が・・・。)
1匹の狐が俺の背後から俺に向かって近付いてくる。
それを見た弥勒は慌てて両手を合わせ、
「カン!後だ!。」
「え?。」
時は既に遅し。
「カン!。」
大樹の声を聞いてから俺の目の前には部屋じゃなく、
山の中。
(ギィイイイイ!。)
何とも言えない鳴き声がこだまする。
ザッザッザッ。
誰か来た。
男や。
ここからの光景には俺も言葉失った。
男は手に鎌を持ち、罠にかかった狐を掴むと、
狐の首を鎌で切り裂いた。
1匹やない。
何匹も何匹も狐やウサギ、犬や猫。
そして・・・。
(アーハハハハッ!。)
笑ってる。
笑って動物の首を切って、遊んでるかのよう。
男の感情も伝わってきた。
男は孤独な身の上で、社会にも馴染めず、
その欝憤を弱い動物たちを殺して発散してた。
そして、一番力を持つ狐達に怨まれ呪い殺された。
それ以降、狐達に魂を離してもらえず、この狐達の怨みに束縛されてる。
男がいくら涙を流して反省しても、
殺した数では比較にはならない。
女はその事に同情し、人を怖がらせていることに疑問を感じながらも、
離れられなくなった。
この話が出回り、人間は本当の真相を見ることなく、
ちゃんと話しを聞くこともなく、噂が広まった。
俺が見た事を弥勒と大樹に話す。
大樹は悲しみを露にし、弥勒は怒りを露にした。
俺は・・・、
こんな人間を助ける為に、今この世に居る事を苦痛に感じた。
(人間憎イ。人間憎イ。)
弥勒は男に近付き、睨みつけ、
「お前・・・っ。」
男は震えて泣いている。
その姿に弥勒は怒りを抑えた。
なぜならば、男も身に沁みて自分の過ちを感じているように見えるから。
大樹が呟いた。
「酷い事されたんだね。」
狐達は口々に叫ぶ。
(オマエ達ニ解ラナイ!オレ達ノ気持チ解ラナイ!。)
大樹は目を見開き言葉を失った。
そりゃそうや。
俺達が実際に体験してへんねやから。
「弥勒、なんとか出来ないの?。」
「・・・成仏って言っても、この感情じゃ・・・な。」
大樹と弥勒が悩んでいる時、
俺は言葉を思い出した。
「そうや・・・。」
俺は両手を合わせて神さんを呼ぼうと思った。
せやけど、誰呼ぶん?。
病気でもない、除霊するわけでもない、話を聞いてくれる・・・、
寛大な・・・慈悲の持ち主。
(阿弥陀如来、聞こえるか?。
お願いや・・・助けて?。
阿弥陀如来・・・俺の声聞こえるか?。)
目を閉じて自分の心の言葉に集中する。
俺の行動に弥勒も大樹も黙って見てる。
(カンや!頼むから来てくれ!。)
生きてる人間が何を言うても、狐達には通じへん。
俺が阿弥陀を呼んでる時、大樹が狐に話しかけた。
「俺には解らないかもしれない。
でも、君達にした人間への思いは解るよ。
体験していなくても、俺は怒りを感じてる。
ただ、悲しみも感じてる。
俺も人間だから。
でも、俺は君達や自然を心から必要と思うし、
愛しいよ・・・本当に。」
狐達は今まで反発していたのに、大樹のその言葉には黙ってた。
(私は、阿弥陀如来様の所から来た者です。)
一人の男が現れた。
「阿弥陀如来のとこから・・・。
この狐の話聞いたって欲しいねん!。」
俺は現れた神に話をする。
内容も話した。
すると神は首を左右に振り、
(これは私でも無理でしょう。
少し待っていてください。)
神は姿を消した。
「おい、阿弥陀如来のとこの神でも無理って・・・。」
弥勒は顔を顰めた。
大樹は弥勒に言う。
「きっと、今の俺達と同じになるってことだよ。」
そうや。
何を言うたところで、狐はお前らに俺らの気持ちは解らん言うやろう。
狐達は少し同様をしているようにも見えた。
神が来たんやから、そりゃ当然や。
けど、こればっかりは狐が悪い話と違う。
けど、なんで1匹の狐は俺に見せたんやろうか。
そいつが体に入った時、
怒りとかは感じへんかった。
暫くして、さっきの神が現れた。
一匹の狐を連れて。
(カン、待たせましたね。
阿弥陀如来と相談をし、この者達と話が通じる者を連れてきました。)
神が連れて来た狐が狐達に口を開いた。
(お前達と同じ、私も人間に殺された。
でも、今はあの世に居る。人間を怨んでもいない。)
狐達はザワつき始め、
(何故ダ!殺サレタノニ何故怨マナイ!。)
(私は生きてるうちに目を抉られ、手足を切られ死んだ。)
大樹も弥勒も絶句した。
そして、俺も狐達も。
(人間メ・・・人間メ・・・。)
狐達の殺気が増す。
(だが、今は人間や森を救う為に頑張っている。)
(何故ダ!人間ニソコマデサレテ何故!。)
(知りたいか?。)
(知リタイ!。)
神に連れて来られた狐は神に視線を向けた。
(カン、この者達は連れて行きます。)
「お、あぁ。よろしくお願いします。」
俺は頭を軽く下げた。
神は女の霊にも来るように言い、男の霊に視線を向けるも、
彼には何も言わず、狐達は神と一緒に姿を消した。
1匹の俺に映像を見せた狐は残ってる。
「お前は行かへんのか?。」
狐に問い掛けた瞬間、
(フフフ・・・アーハハハハ!。)
男の霊が笑い始めた。
(これで俺は自由だ!狐のくせに俺を縛りやがって。)
「何?。」
弥勒が男に近付き、
「お前・・・本音はそれかよ?。
泣いてた面は芝居か。」
男は弥勒に視線を向け、
(俺にあっさり殺されるあいつらが悪い。
人間様をなめんなってんだ。)
狐達はこの男の性格を一番知っている。
だから離さへんかってんや。
「どこまでも最低な男だね。」
大樹は冷やかに男を見つめ呟いた。
弥勒は俺に問う。
「カン、この馬鹿はどうする。」
俺は男に視線を向ける。
「・・・神さんが声も掛けんかった。
それには理由があんねやろ。あの世に行ってもこの性格は治らんか。」
俺は目を閉じて再び声をかけた。
(サタン・・・サタン・・・。)
そうや。地獄のサタンを呼んだ。
サタンは姿を現した。
(カン、僕は呼ばれるくらい君に好意を持たれてるのかい?。)
笑みを浮かべながら現れたサタンに、大樹は目を見開き、
「カン!なんでこいつを!。」
弥勒は俺を見て黙ってる。
「サタン、その男やるわ。」
サタンは目を細めて男に近付いた。
男はサタンの妖気を感じて身を震わせている。
サタンが男に触れると笑みを浮かべ、
(へぇ・・・クズだねぇ。
丁度、いつ散りになってもいいクズを探してた。
ありがたく貰って行くよ。)
サタンは男の腕を掴み引きずるようにして消えていった。
「カン!なんでサタンなんかにっ!。」
大樹が俺の目の前に立って悲しげに言うてきた。
「地獄に行けばまた悪魔が増えるだけじゃないか!。」
俺が言いかえそうとすると、弥勒が大樹の肩を掴み、
「あいつがあの世に行って、気持ちが少しでも変わると思うか?。」
弥勒に続いて俺が言葉を繋ぐ。
「無理や。悪いとも思ってへん。
演技までするぐらいやから。そんな奴が力もないんやし、
地獄に行ったかて重要視されんて。」
俺の言葉に弥勒は納得してるみたいやけど、
大樹は気にくわんみたいや。
弥勒は笑みを浮かべて大樹の首に腕を回し、
「大樹はサタンに妬いてんだろ~?。」
大樹は弥勒に顔を向けて睨みつけ、
「そうだよ!悪い?!。」
完全に認めとる。
俺は残ってた狐にしゃがみ、
「こんでええか?。」
そう問い掛けた。
狐は小さく頷いて消えていった。
一件落着。
「っていうか・・・大樹、お前霊の言葉聞けるようになったん?。」
そう、俺の疑問はそこ。
大樹は姿は見えても、声は聞こえへんはず。
大樹は俺に頷き、
「シロが今、俺の中にいるんだ。」
なーる。
これを読んだ人はどう思う?。
最後、あの男を地獄に送った事。
どんな人でも受け入れて助ける阿弥陀如来が、
その男に何も言わんと置いて消えた事。
これにも深い気持ちがあるんや。
神様は、みんなの幸せを願ってる。
だから、この男があの世に行っても幸せになれるんやったら、
多分、連れて行ったやろう。
けど、この男は根から腐ってる。
残虐で反省もない。
そんな奴が、あの世に行ってどうなるやろか?。
それを全て見透かして阿弥陀如来は判断した。
ただの慈悲の心だけでは、幸せにする事は出来へん。
時には厳しい手段も必要。
一番男を心配してるんは、阿弥陀如来やと俺は思う。
そして、怖い話やら、そういう系統のテレビを見てる人。
霊はあんた等の気持ちをいつも読み取ろうとしてるんやで?。
せやから、テレビや言うても、
その話がほんまの話やったら、
あなたの所まで直ぐにでもとんでくる。
見る時は覚悟して見たほうがえぇかもなぁ。

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