vol 63:若者に告ぐ




弥勒の頼みで近所の家に霊を見に行った。
一応、除霊やら退魔行ちゅーことになるらしいけど、
俺はそんな意味で行くん違う。
霊も人間も助ける為や。

いや・・・今回は霊を助けたいだけかもしれん。
なんでか?。
あの霊の目や。
怒りで狂ってた。




「カン、インターフォン鳴らすよ?。」

大樹の問い掛けに頭を軽く揺らして頷いた。
暫くすれば、両親が二人玄関から出て来て、
俺らを家の中に迎え入れる。
家に入ろうとした時、ズルズルと地面を這った音が聞こえ振り向くと、
白い蛇がその家を何匹も囲んでいる。
視線を感じて上を見上げると、
2階の窓から女がこっちを見ていた。
この家自体が、霊の拠り所になっているんか・・・。

「カン、俺はシロと外の蛇達の話を聞いてくるよ。」

大樹はやっぱり蛇が一番に気になるらしい。
まぁ、あいつの国の住人やし解らんでもないけど。

「解った。はよ済まして来てな。」

「あぁ。」

俺はリビングに案内されて中に入ると、
やっぱり・・・。
朝見た女の子とその彼氏らしい金髪の男、
俺に頭を下げて挨拶しているのは姉らしい。
その他、女の子の首にしっかり巻きついている2匹の白蛇、
女の子と彼氏を睨んでいる霊が1、2、3、4・・・。
そいつらに体を向けて全員立ってる。

「あの、弥勒さんからお話は聞いています。
でも、あなた・・・娘と同じくらいの年じゃない?。」

母親が声をかけてきた。

「高校生や。」

「やっぱり。」

大丈夫なのかしら、
そう言いたいのは表情で解る。

「こういうの・・・年齢関係ないから。」

父親はソファーに座って俺に問い掛けてきた。

「この家にやっぱり何かいるのか?。」

「なんでそう思うん?。」

「実は、娘が言われる前から、ずっと家には霊が居ると聞いていて。」

「誰が言うたん?。」

「親戚の子が霊が見えるんだ。そいつが来る度に言われる。
2階に女が居るとか、男が歩いてるとか。」

親父は心底疲れたように見えた。

「たまに俺も体調を崩すんだが、男の霊がついているって言われた。」

「へぇ。ほんなら、なんでその新戚に頼まんの?。
除霊とか。」

「そいつは、ただ見えるだけで話は出来ないらしい。」

母親が口を挿んできた。

「トシって言うんだけど、後から来るって言ってたわ。」

俺は話を聞きながら、妹・・・その蛇を巻いた女の子に目をやる。
妹は、自分のために周りも俺を呼んでいるにも関わらず、
自分は関係ない的に携帯でメールして、煙草を吸ってテレビを見ている。
彼氏も同様。
俺は、座って目を閉じた。

(なぁ、聞こえてるやろ。
その子・・・何したん、アンタらに。)

霊に話しかける。
一人の霊が反応した。
首に巻きついてる蛇や。

(見れば解るであろう。)

(察しはついとーよ。
でも、その子に何をする気や。)

目を開けると兵隊の霊が俺に近付いて来た。
睨みながら。

(お前は何をしに来た。こんな奴を庇いに来たのか。)

憎しみっちゅーより、ただただ怒りが伝わってくる。
部屋中が怒りの中。

「なぁ、自分・・・何したん?。
見えんやろうけど、幽霊がいっぱい自分睨んでんで?。」

妹に話しかけた。
妹は俺を見て、さぁ?ってな感じで首を傾げる。
それを見た姉が恐怖に怯えた表情で俺の後に来てしゃがみ、

「あの子、霊スポットに行ったの。
行くなって言ったのに!。」

スポット?。
霊が出ますよ~的なあれか。

「1ヶ所に行ったん?。」

妹が指折り数え、

「5ヶ所くらい?。」

「そこで何があったとか、なんでその霊が出るとか噂でも聞いた?。」

「あー、えっとぉ、自殺とか?あと、防空壕で兵隊の霊が出るとか!。
でも、何も居なかったし。」

見えぬが仏か。

妹は笑いながら彼氏を見て、彼氏はすっとボケた顔で頷いた。

「防空壕やら自殺やら聞いて、その場所に行って、
何を感じたん?。」

「別に。」

兵隊の霊が俺に目を見開き、

(見ろ!これが怒らずにおれるか!。)

「わかったから、ちょう待ちーや。」

俺はわざと口に出して霊と話をした。
妹も姉も両親も俺を見てる。

「せやなぁ。確かに最低やし、最悪の今状況や。
あんた等はこの子にどないしたいん?。」

女の霊が口を開いた。

(今の若い子たちは、こういう子ばかり。
私達の想いの場所に土足で踏み込み、荒らし、笑い・・・。
私の気持ちを想い知らせたい・・・。)

「自分達の気持ちを想い知らせるんか・・・。
まぁ、俺的には賛成や。」

俺は笑みを浮かべて妹を見た。
妹は俺の言葉にやっと怯えた表情に変わった。

「ちょっと、カンさん?どういう事なの?。」

母親が問い掛けてくる。

「ふつーに、普通に考えて解る通りや。
自殺・・・なんで自殺したか解るか?。
どんな思いで自殺したか。
防空壕。
爆撃の恐怖の中、どんな思いで死んだか。
なんで、そこに霊が現れるか。」

後ろの姉が呟いた。

「未練?。」

「違うな。未練の場合もあるけど、
今回の場所は成仏したくても、悲しみで成仏できんねや。」

アカン・・・俺がキレそうや。

「そんな場所わざわざ行って・・・ヘラヘラ笑って・・・、
怒らんわけないやろが・・・。」

妹に告げる。

「でもなぁ、ただ霊スポット行ってキャーキャー言うてるだけで、
こんな怒りは発生せん。
アンタにとり憑いてまではせんよ。
現場で何か不謹慎な事やったか、あるいは暴言吐いたか。」

妹の顔が青ざめた。

「で、アンタ等はこの子に何をする気や?。」

(俺が死んだ時の状況を想い知らせてやる。)

(私も。)

(俺もだ。)

「自分、霊がな、いっぱいいる霊が、自分たちが死んだ時の状況を、
身に感じてもらう言うとるで?。」

「・・・。」

妹は初めの適当な態度とは裏腹に、
俯いて黙ってる。
今になって解っても遅いんや。
自業自得。

「そんな・・・どうしたらいいの?この子は。」

ここが親心。

「打開策はあるよ。」

妹が顔を上げて俺を見た。
俺も妹を見る。

「心から謝れ。」

「謝る?・・・もっと祓うとか・・・。」

俺は母親に言う。

「祓う?悪い事したんは霊ちゃうやろ。
アンタの娘が霊を荒らしたんや。」

「でも、この子だけじゃないわ!。
何人かで行ったのよ!。」

「ほんなら、その行った子達にも、霊は憑いてるんやろ。
俺は、ここにいる霊と話てるんや。」

(こんな奴は死ねばいい・・・。)

首に巻いている、1匹の蛇が呟いた言葉を逃しはしない。

(待った。それはアカン。
そいつを呪殺しても、アンタが罪を背負うことになるんや。
こんな人間はゴロゴロおる。
今話してても、親も親やろ。
親は自分の子しか見えてへん。
だから、この子もこんな子になるんや。
この子もまた、被害者になるかもしれん。)

俺は蛇に手を差し伸べた。

「俺と行かへんか?。
この先、この一家がまた同じような事しても、
俺は一切関わらん。
俺はお前らを祓う気もない。
お前らの怒りは俺も同じや。
その約束で、その子から手、引いてくれ。」

蛇は黙って俺を見てる。
俺の心の中を探ってるんや。

暫くして1匹の蛇が俺の手に這い、俺の首に巻きついた。
交渉成立。
俺は立ち上がって、妹に告げた。

「アンタに心底怒ってる霊は連れて帰る。
けど、全員じゃない。
後の霊はアンタを許さんみたいや。
連れて帰る霊もアンタを許したわけやない。
俺らが今後アンタが同じ事しても、
呼ばれても、関わらへん約束での事や。
もし、また同じ事するんやったら何が起こっても自業自得。
命かけてやる事やな。
で、どうしたらええか。
それは俺らがどうこうする問題やない。
自分で謝る事や。
本当にすみませんでしたって。
戦争で死んでる人の気持ちが解らんねやったら、
戦争って何か調べたらええ。
どんな人がどんな想いで亡くなってるか。
友達にも教えたり。
打開策はお祓いやのうて、自分たちがやったことを心から、
謝ることや。
そうせな、アンタに自分たちの想いを想い知らせる言うとる。」

家族が沈黙になり、
妹は小さく頷いた。
ここから先は、妹本人の行いで変わる。

「遅くなってゴメーン。」

玄関から男の声が聞こえて入って来た。
ヘラヘラした若い男。
俺よりは年上。

「トシ!。」

姉が名を呼んだ。

「お前の部屋に女が居たぜ?。
上からこっち見てた。」

ヘラヘラして言う男に姉は泣きそうな顔で、

「またアンタはそんなこと言う!。
だから私、自分の部屋が怖くてお母さんの部屋で寝てるのよ!。」

「アハハ。」

俺の怒りは絶好調に達し、
その男に近付き胸ぐら掴み、

「おい・・・お前、霊が見えるらしいなぁ?。」

男は驚いた様子で、

「え!う、うん。」

「それを怖がってる子にズケズケ言うておもろいんか?。」

男は言葉を詰まらせた。
手を離し、姉に顔を向け、

「あそこに霊がおる、そんなん言われたら怖いよな?。」

姉は大きく頷いた。

「霊が見えのに・・・ヘラヘラしてたら・・・、
お前も霊の怒り買うで?。」

そう告げると、俺は玄関に行き靴を履いて外に出た。
家の塀のところに大樹がしゃがみ込んでいる。

「大樹、なんか解ったか?。」

大樹は俺を見て立ち上がり笑みを見せた。

「うん。この蛇達はシロの言ってた通り、
この場所を守ってる蛇神だったよ。」

守ってる蛇神が居るにも関わらず、
この家の者の行動に蛇神達も呆れて野放しにしてるか、
守りきれへんねやろな。

姉が玄関から出てきて俺に頭をさげた。
この家で一番話が解るんは姉か。

「帰ろ、大樹。」

「え、もう終わったの?。
その霊達は?。」

「連れて帰る。」

俺と大樹は歩いて俺の家に戻った。
部屋で大樹に話をする。

「それって・・・最悪だね。」

「せやろ?。
俺から言うたら、霊はなんも悪くないやん?。
せやけど、あの母親の態度やったら、他に除霊頼むやろな。」

「除霊か・・・霊達、祓われるね。」

「まぁ、祓われても、また戻って来れるし、
本人が後悔せなアカンのちゃう?。」

「蛇はシロに任せるよ。」

「あぁ。」

「でも、この兵隊さん・・・。」

「大丈夫や。俺の心探ってくれたら落ち着くと思う。
戦争は体験してへんけど、調べて勉強した。
この人達のおかげで、俺達がおる。
今の日本があるんや。」

俺は兵隊に眉尻下げて笑んだ。
兵隊はその言葉に驚いているも、眉尻下げて笑んでくれた。







若者に告ぐ。

心霊スポットに行くんやったら、

その後に何が起こってもギャーギャー言うな!。

怖い話するんやったら、

その後、何が起こってもギャーギャー言うな!。

自業自得。

霊を学ぶ為であっても、

その後は自分で対処せなアカン。

お祓い。

お祓いは、それをしたら霊は払われる。

飛ばされる。

その意味を把握しろ。

悪霊であっても、原因があるはず。

それを聞き出して悪霊から霊にさせるくらいの覚悟が必要や。

それも無くおもしろ半分やったら、

何が起こっても文句言うな。

ケースバイケースをしっかり判断する。

霊が見える奴、

自分も見えた時、怖いやろ?。

それを他人にも同じ気持ちにさせるなや。

霊達が誤解される。

自分にとってもマイナスや。

見えるんやったら、それをうまく使えばいい。

霊と友達になるんや。

そしたら、自分への守り手が増える。

怖い表情をしてるんは、

死んだ時の想いのままやから。

それを救ってやったら、霊も普通の人間の姿になれる。

若者に告ぐ。

自分に責任を。








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花手毬