vol 58:優先順位




「暑い~。なぁ~、まだぁ?。」

ハーフパンツにタンクトップ姿で田舎道を歩いてる。
8月の末になって少しは暑さも和らいだいうても、
日中は暑いし、1時間以上は歩いてる。

「ほんと交通に不便だな、この辺。バスは2時間待ちだしよぉ。
歩いた方が早いとは思ったんだが。」

坊主の格好をした弥勒と田舎道を歩く。

俺は病院を退院してから、夏休みを弥勒の元で過ごす事になった。

「で?今回の依頼ってなん?。」

田んぼ道を歩きながら問いかける。

「雨が降らないから、龍神様の祟りだとか。」

「はぁ?それってただの自然現象違うん?。」

「この辺りは山だから雨は結構頻繁に降るんだと。
とにかく龍神様の祟りだって依頼主が聞かなくてな。
まぁ、調査して違っても疑われるだけだろ。」

俺は理解出来んかった。
立ち止まって、

「おい弥勒。そんなん疑うような奴らんとこ行くんか?。」

弥勒は立ち止まった俺に振り返って眉尻下げ、

「それが俺達の役目だ。」

意味不明。

「あのぉ、すみません。この辺に田村五郎さんっておられますか?。」

弥勒が田んぼのオッサンに話しかけた。

「あぁ、田村さん。田村さんならもう少し行った先に、
大きな鶏小屋があっから。」

「鶏小屋・・・ありがとうございます。」

「あんた、田村さんが呼んだっちゅー坊さんかね。」

「あ、はい。ご存じなんですか?。」

田んぼのオッサンは曲げた腰を伸ばし、

「こん村は小さいでの、それにお前さんを呼ぶのは皆で決めたんじゃ。
田村さんはこの村の村長なんでの。」

村長・・・RPGの世界かよ!。

「ありがとうございました。
ほら、行くぞ。」

「あ?おぉ。」

俺を見るオッサンに一応頭下げて、また歩く。

「せやけど、ロールプレイングゲームの世界やなぁ。
村長って。」

「あー?まぁ、昔ながらの小さい村じゃそうなんだろ。
住所も竜尾村だし。」

コンクリートが珍しいくらいにない砂利道を歩く。
周りは山と田んぼの田舎風景。
駅から1時間くらいの田舎の村。

「ここか。」

「コケーコッコッコ。」

鶏の鳴く声と糞か解らんけど臭いにおいがする。

「すみませーん。どなたかいらっしゃいますか?。」

弥勒が古い大きな家の玄関に向かって行き、ドアを開けて叫んだ。

「どなたかいの?。」

玄関じゃなく、庭の方から腰の曲がった婆さんが出て来た。

「お山から参りました弥勒と申します。」

婆さんは近付き耳に手をあて、

「はぁ?。」

耳が遠いんや。

「バァちゃん!高野山から来たみーろーくーやっ!。」

俺は婆さんの耳元でデカい声で叫んだ。

「あー、弥勒さんかいの。ありがたや、ありがたやぁ。」

理解した婆ちゃんは弥勒に向かって手を合わせた。

弥勒は困った顔をして、婆さんに近付き、

「おばーさん!五郎さんはいますかー?。」

「あー?五郎?おぉ、おるおる。
ごろー!ごろー!。」

「誰ね?。」

鶏小屋からオッサンが出てきた。
俺らの顔を見て、かぶってた帽子取って、

「あやー、弥勒様ですか?。」

「はい、高野より参りました弥勒です。
こっちは助手のカンです。」

「じょ、助手・・・。」

その響きに抵抗あり。

「そうですか。いやぁ、お電話くださったら駅まで迎えに行きましたのに。」

駅まで迎えに来てくれるんやんけ!。

「いいえ、歩くのもまた修行ですから。」

この・・・タヌキめ!。

「まぁ、中にお入りください。ささ、どうぞ。
おい、正子!弥勒様がいらっしゃったぞ!。」

家の中に招かれた。
婆ちゃんは弥勒にまだ手を合わせとる。

「婆ちゃん、外暑いから一緒に中、入ろうや?。」

俺は婆ちゃんも一緒に中に入りたかった。

「話の邪魔んなると怒られるけぇ。わしはここんおる。」

「邪魔って・・・邪魔にはならんて。」

「カン、早く来い。」

弥勒に呼ばれて仕方なく婆ちゃんを置いて、家の中に入ろうとした時、

(チリン。)

鈴の音がした。

「カン?。」

「なんや、今・・・。」

「ささぁ、お二人ともどうぞ、どうぞ。」

五郎に呼ばれて気になるも中に入った。
和式に案内されて弥勒の隣に座る。

苦手な正座。

向い側に五郎と少し後ろに奥さんが座り、話が始まった。

「雨が降らないのは龍神様の祟りだとお聞きしました。」

「そうなんです。この辺は3日に1回は雨が降りよるんじゃが、
あれ以来、雨がすっかり降らんで1ヶ月になりよります。」

「あれ以来。何かあったんですか?。」

弥勒と五郎の話を話しを聞く。

「この村は小さい村で、若いもんは殆どおりません。
皆、東京だの大阪だのに行ってしまってなぁ。
うちの息子も先月に東京に行きよる言うて出てしもうたんじゃ。
そん時にえらい揉めてのう。」








「克也!お前、東京さ行ってこの村を捨てる気か!。」

「父ちゃん、俺はIT企業に勤めたいんじゃ!。」

「ITだぁ?一日中機械触って頭腐りたいんか!。
この村は年寄りしかおらんのじゃ。誰が龍神様を守って行く!。」

「俺は畑仕事なんかしとうない!まいんちまいんち畑畑畑!。
そんなん今時せんわ!龍神様かて迷信じゃ!。」

「克也っ!今、何言うたぁ!。」

「龍神なんてこの世におらん!龍神に頼って生きてるこの村が、
俺はいらんのじゃ!。」









「克也はそのまま家を飛び出して、追いかけていったんです。
そしたら・・・あの馬鹿・・・。」










「克也っ!。」

「はぁはぁ・・・こげんなもんあるから・・・。」










「克也は、龍神様の祠に行き・・・龍神様の祠を木で殴り壊したんです。
その後です、おっきな雷が鳴った後、雨が降らんように・・・。」

「そうですか。話は解りました。
克也さんは今どこに。」

「勘当しました。東京に行きよりました。」

「そうですか。祠はどこに?。」

「はい、お連れします!。」

立ち上がろうとした五郎に、

「いや、私とカンで行きます。場所を教えて下さい。」

「はぁ・・・。」

五郎は不思議な顔をして場所を説明した。

俺と弥勒は立ち上がり家を出た。

(チリン。)

またや。

鈴の音。

「弥勒、鈴ん音・・・。」

弥勒が俺の肩を抱いて俺達の行く道を指さした。

「・・婆ちゃん。」

さっき居た婆ちゃんが後を向いて立ってる。

「カン・・・婆さんの足。」

俺は弥勒が言う婆さんの足を見ると、

「・・・透けてる。」

「あれは死んでる人だ。鈴の音もあの婆さんだ。
行くぞ。」

「え、うん。」

弥勒と婆さんの方に歩くと婆さんも歩きだした。
婆さんの後を離れて歩く。

「なぁ、弥勒・・・こっちは祠と違う道とちゃうん?。」

「あぁ。祠は右だ。婆さんは山に入って行く。」

「なんで婆ちゃんに着いて行くん?。」

弥勒はニッと笑み、

「祠は逃げない。まず助けるのはあの婆さんだ。」











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