vol 56:覚悟



意識が戻ると何も知らない医者は無意味な検査。
異常が見られない為、もう一日入院して帰ることになった。

「はぁあ~、どこも何もない~言うとんのに。」

丸1日半寝てたせいか体が超怠い。
意識不明やったから個室なんは気楽やけど、オカンは家に一旦帰ったし、
一人で暇や。

何分か置きに看護師さんが熱やらなんやら測りにくる。
若いお姉さまの看護師さんは目の保養にはなるけど。

時刻は夕方。

「戌尾さん、ご飯ですよー。」

看護師さんが夕飯持ってきてくれた。
トレーのオカズを見たら、お粥とドロドロした具材の不明なやつ。

「うぇ・・・。」

食欲ナッシング。

一応、一口・・・。

「・・・。」

味がナッシング。

そのまま放置する事に決定。

18時半頃に看護師さんがトレーを下げに来た。

「あらら、食欲ない?。」

「食べてへんかったせいやと思います。」

「そう。どうする?このまま置いておこうか?。」

「あ、いや、もういいです。」

丁重にお断り。

「カンっ!。」

ノックもなしに開いたドアには大樹が息を切らせて立っている。
ベッドに座る俺を見て今にも泣きそうや。

「大樹。」

看護師さんは気を遣ってトレーを持って部屋を出た。
看護師とすれ違い俺に近付き俺を強く抱きしめる大樹。
まぁ・・・俺でもそうしてるやろうな。

「おかえり・・・。」

「・・・ただいま。」

眉尻下げて大樹の背中に触れる。
スーツ姿の大樹。久々な気がした。

「洋子さんから連絡があって、学校早めに切り上げて来たんだ。」

「理由は聞いたん?。」

「うん、大神から・・・夕べ。」

って事は弥勒も聞いてるか。

「ごめん、俺何も気づかなくて。」

「しゃーないよ。それに、いろんな人に会えたし、
ええ経験になったわ。」

大樹の体が離れて、持っていた袋をベッドに置き、

「お腹減ってるだろう?。おにぎりとか買ってきたんだ。」

ナイス!大樹。

「うわー!めっちゃ嬉しい。病院の飯ドロドロやから食われんかってん。」

満面の笑みを浮かべて大樹が置いた袋から、
コンビニのおにぎりを取るも、

「なん?・・・俺の好物ばっかりやん。」

なんや、半端無く嬉しい。

「ちゃんとカンの好きな物、知ってるから。」

丸椅子に座った大樹が柔く笑む。
その顔見たら、なんや涙が溢れてきた。

「か、カン?。」

泣きだす俺に大樹はビックリしとる。

「もう・・なっ、会われんようになるかって思った。」

カッコ悪、俺。

「カン・・・。」

「たいじゅ~。」

座ってる大樹の首に両手回して抱きついた。
いろいろと一気に起こった事やけど、
不安は今、吹き出してくる。

「会えなくなるわけないよ。
俺、探しに行こうと思ってた。でも、大神が来て止められたんだ。
大丈夫だからって言われて。
サタンが助けてくれたんだってね。」

「・・・覚えてへん。」

嘘ついた。
サタンが俺を抱きしめたって言うたら、大樹はショックかなって。

「そっか。俺が助けたかった。」

大樹。

暫くそのまま抱き合ってたけど、おにぎり見たら腹減ってきて、
大樹に涙拭いてもうてベッドに座り直しておにぎり食い始めた。

「なぁ、大樹。」

「ん?。」

「俺な、夏休みにいろんなとこ行こう思ってるねん。」

「いろんなって、どこに?。」

「まだ、わからへん。大日如来にな、仲間増やせ言われてん。」

「仲間?。」

「うん。動物も霊も人間も。その時が来るまでに、
繋がりを・・・仲間を集めろって。」

大樹の顔が曇った。

「俺も行きたいけど、3年の補修生徒が何人か居るし、
会議とかが何回かあって。」

「弥勒の仕事について行ったりしてみよう思てる。
後は神社巡り。」

「俺も一緒の時じゃ駄目?。」

心配なんや?。

「俺が言われた事やから。大樹は大樹が来れる時に参加して?。
大丈夫や。みんな見てくれてるから。」

「・・・。」

「大樹、うん言うて?。俺のせなアカン事やねん。」

眉尻下げて大樹を見つめる俺に、
大樹は曇った顔を俺と同じ眉尻下げて笑んだ。

「うん・・・解った。でも、無茶だけはしないで。」

「・・・おぅ!。」

その後にオカンがお菓子やらジュースやら持って来て、
俺はたらふく食いまくった。







(弥勒よ。)

「大日如来!。」

(久し振りですね。元気そうでなによりです。)

弥勒は書庫で教本を読み漁ってた。

「お久しゅうございます。」

(弥勒よ、カンが今肉体に戻りました。)

「カンが・・・そうですか。明日様子を見にと思っていたのですが。」

(あの子をお前の退魔行に連れて行きなさい。)

「た、退魔にですか?。」

(そうです。あの子の役目が今、始まりを迎えました。
お前にも良い勉強となるでしょう。)

「・・・はい。解りました。」

(頼みましたよ・・・弥勒・・・。)









この先、きっとまたいろんな事が起こって、

それに対して、怒ったり、泣いたり、笑ったり、辛かったり、

いろんな体験をするんやと思う。

けど、やる事が解ったら、それに対して覚悟しようと思った。

いろんな人間がおって、いろんな霊がおって、

きっと動物は霊の動物の事やと思う。

仲間。

今まで、仲間なんか考えた事もなかった。

一人でしか出来ん事。

一人じゃ出来ん事があるって事や。

地球を救うのは、一人じゃ出来ん。

サタンは気がかりやし、ヘラの事も何とかしてやりたいと思う。

闇の勢力。

戦うんやろか・・・。

今でも、災害や争いで沢山の人が命を亡くしてる。

人間は自分の意思でやってる場合もあるけど、

子供や動物や植物達は関係ない。

目を凝らして、耳澄ませたら、

沢山の悲鳴が今も聞こえてきそう。

そして、人間に囁く闇の声も。







               56       次のページ



55話に戻る
戻る

花手毬