vol 54:心配



あれから俺は天界でたくさんのエネルギーを貰って、
気がつけば何もない草原のような場所に寝てた。

せや・・・大樹やオカン、弥勒に連絡せなあかん。
俺はここで何してるんやろか。

「気付いたか?。」

声がしたと思ったら自分を見下ろすおっさんがおる。
むっちりとした身体つきで長そうな髪は丸くてっぺんで結ってある。

「誰?。」

そう問い掛ける俺におっさんはニッコリ笑んだ。

「私は薬師如来だ。」

「薬師・・・。」

すぐに頭が回転せん。

薬師・・・薬師如来。

「お前の祖父さんだ。」

あぁ、ジイサン・・・。

「洋子のオトンっ!。」

俺は思い出して飛び起きた。

「おぉ、すっかり霊力は戻ったか。」

「え?・・・あー。」

どうリアクションすればええんか解らん。
薬師如来のジイサンがおるって事は、俺はまだあの世か。

「なぁ、じいちゃん?アタシ、どうなってしまうん?。」

不安になったんや。

結構、あの世に居る気がする。

肉体の俺はどうなってるんやろか。

「心配しなくてもよい。洋子には伝えてある。
チビ神にも話しは伝わっているだろう。」

俺の隣に座って持っている瓶を差し出し、

「飲みなさい。体が楽になる。」

出された瓶を受け取り、瓶の中身はてっきり薬や思って飲んだけど、
ただの水やった。

「なんやぁ・・・水やん。」

「それは違う。その水は皆の想いが詰まった水だ。
お前を治す為に皆が祈りを捧げた水だ。」

俺の左の方の首筋をじいちゃんが触る。

「痛いか?。」

「いいや?全然。」

鏡を見てへんからわからへん。

「呪が完全にまだ消えていない。」

どうやら左の方の首筋に痣が残ったみたいや。
鱗模様の痣が。

じいちゃんか・・・。

「なぁ、ばぁちゃんは?。」

「忙しい身だからな、見には来ていたんだが。」

「そっか・・・。パパは?。」

「天界の神は水子達に神とは何かを教えている。」

「まだ黄泉の国におるってことか?。」

「そうだ。カン、体は動けるか?。」

「うん。」

ゆっくり立ち上がってみる。左側が重い。

「まだ辛いみたいだな。もう少し寝てなさい。」

「じいちゃん、何でここで寝るん?。」

何もない草原のような場所で。

「此処は薬師の国。」

そう言ってじいちゃんはしゃがみ、生えている草に触れ、

「この草は薬の草。だが、この草を摘む事はしない。
この草の生きている力が出す、エネルギーを頂くんだ。
少しずつ出る薬の作用のある草達のエネルギーが大事な薬になる。
この薬草の中に寝かせておくだけで、自然と小さなエネルギーが草の数だけ、
放出され、それを自然にお前が蓄える。」

いろんなやり方があるもんや。

俺は再度、草の上に仰向けで寝た。

「カン、目を閉じて静かに耳を澄ませてごらん。」

言われた通りにする。
目を閉じて・・・耳に集中。

サワサワサワ。

草が風に擦れたような音がする。

「風で擦れた音ではなく、草達が出すエネルギーの音だ。」

草の匂い。草の音。

「薬師如来様・・・。」

その声・・・。

「おや、弥勒。久しいな。」

「弥勒?。」

目を開けると、衣姿の弥勒が居て俺を見下ろしている。

「弥勒・・・大樹は?。」

弥勒は不機嫌そうな顔をして睨むように見降ろし、

「一緒に来るかって言ったけど、お前の肉体の世話をするってさ。
お前が戻って来た時にお前が辛くないように、
あいつずっと自分の気をお前に与えてる。」

大樹。

「っ・・・なんで無茶なことしたんだ。
なんで俺達に言わない。」

弥勒はすごく辛そうな顔・・・してた。

「それは勘違いだ、弥勒よ。
カンは自分から行ったわけではない。
波長が合い、相手の想いの強さに引っ張られてしまった。」

じいちゃん。

弥勒は説明されると、眉尻下げて俺の横に跪き、
俺を強く抱きしめた。

「み・・ろく。」

「大樹も・・俺も・・すっげー心配した。」

弥勒。

「ごめん。」

俺は弥勒の背中に触れようとしたら、弥勒の体が小さく震えて、

「しっかも・・・大日如来様の子がお前の母親で・・・、
薬師如来様がお前の母親の父。」

徐々に声が低くなり、

「んでもって、イコールお前がお二人の孫だなんて、
俺は一切知らなかった!。」

クワっと目を見開いて俺を睨む顔。

「え、いや、はぁ?。」

かなり怒ってる模様。

「ハッハッハ、弥勒は大日には頭が上がらないからなぁ。」

「・・・そうなん?。」

「薬師様っ!。」

弥勒は真赤に顔を赤らめた。
俺はゴロンと草の上に転がされた。

「薬師様、御冗談はおやめください。」

「冗談ではないだろう。よく怒られてたなぁ、弥勒。」

「怒られてたん?。」

「まだ、弥勒が幼い頃は悪戯好きの坊主でな。
それを見つけては大日が1日かけて説教したものだ。」

「や、やめてください!・・・む、昔の話です。」

「ははーん。」

俺は体を起こして胡坐をかいて座り腕組み、

「せやから、大日如来の像は必死になって拭き掃除してるんや?。」

ニタニタ俺が笑っていると、

「女の子がなんて格好ですか、カン。」

俺の背後から落ち付いた声がした。

目の前の弥勒がビクビクしてる。

じいちゃんは笑ってる。

後を振り向くと、大日如来が立っていた。







               54       次のページ



53話に戻る
戻る

花手毬