vol 53:家族



地獄で鱗だらけになった俺は主に連れられて天界へ。

時間が経つにつれ、白目までも黒く染まっていく。

「我が娘・・・。」

パパ?。

「父よ、この呪、根が深すぎます。
このままでは魂は救えても、呪を負ったままとなるでしょう。」

声はハッキリ聞こえてる。
せやけど、俺の体は動かへん。
唇や瞼さえも。

「この世界で病に強い力を持つ神の元へ。」

「我が父よ、天界の神の力では・・・。」

「解っておる。黄泉の国の薬師なら、何とか出来るかもしれん。」

黄泉の国の薬師。

薬師如来か。

薬師瑠璃光如来、または大医王仏とも称する。

薬壷または丸薬の入った鉢を持ち、
この世門における衆生の疾病を治癒して寿命を延べ、
災禍を消去し、衣食などを満足せしめ、
かつ仏行を行じては、
無上菩提の妙果を証らしめんと誓い仏と成った黄泉の国の神。

「解りました。連れて行って参ります。」

「いいや、私が出向こう。」

パパが?。

パパが、黄泉の国に?。

これはとてつもない出来事になる。
だってな、黄泉の国を認めてなかった天界を治めてる神が、
黄泉の国の神に頼みに行くねんで?。

あの、パパが。

パパはあまり形にはならない。
いつも光で人型になっている。

パパは俺を一人で連れて行くって言うて、心配する主を連れずに、
俺を光の腕で背中におぶって黄泉の国に向かった。

黄泉の国の門では、既に待っていた神がいた。

「大日如来・・・。」

「待っていましたよ、天界の神よ。」

「どうしてだ・・・何故。」

「私は宇宙そのものと一体の仏。貴方はその宇宙の中の神の一人。
そして・・・その子は私の孫でもあるのです。」

大日如来の孫。

忘れてた・・・。





「ならん!お前を人間に産ますなどっ。」

「なんで?兄ちゃんもそうやって人を救ったやんか!。」

「だが、また人は繰り返した。お前が再度警告に行くことはない。」

「アタシはパパの大事な人間を守りたいねん!。
地球を滅ぼしたくないねん!。」

「ならんっならんっ!。」

「絶対行くっ!。」

そう言うて押し切った。

最後までパパは許してくれんかったけど、
パパは闇の力がまだ弱い日本に産ますように手配した。
黄泉の国の最高神である大日如来はパパの古き良き友人でもあった。
ただ、人として死を迎えた者が神となってきた黄泉の国が、
許せんかったんや。

大日如来にパパは頼んだ。
当時、あの世では例にない事が起こってた。
それは、神同士が交わり、神が腹を痛めて子を産んだという。

「大日如来よ、我が子が地球を救う為に、下界に産ませろと言う。
だが、私は主の様な思いをさせたくないんだ。」

「天界の神よ、私に何を求めているのです。」

「我が娘の力になってやってはくれぬか。」

大日如来は悩みもしなかった。
薄く開いた目を神に向け、

「いいでしょう。貴方の子の願いは私達の願いでもある。
私の子を先に人間に産ませ、私の子に天の子を産ませましょう。」

「本当か!薬師如来とそなたの子を降ろしてくれるか!。」

「我が子にも、試練をさせねばなりません。
我々も天界と気持ちは同じ。」

そう言って、大日如来は薬師如来と相談し、
一人の女に決めて自分達の子を、その女の腹に宿らせた。

それが、俺のオカンや。






「ずっと孫として見ていました。薬師如来と共に。」

「・・・そうか。すまない。」

パパは深く頭を下げた。

パパは驚いた。

「おお!カン・・・。」

「カン・・・。」

何人もの黄泉の国の神や水子達が黄泉の国の門の中で集まっている。

それぞれが俺の名を口にし悲しい表情で群がっている。

「大日如来様、天の子は?。」

「阿弥陀よ、そしてお前たち、どうか薬師如来に力を貸してくれ。」

「貸す!力、貸す!。」

小さな子狐達がピョンピョン跳ねながら言う。

「これは・・・。」

パパは驚きでいっぱいや。

「天の神よ、これが黄泉の国の神々。
そして、そなたの子とこの神々達との深き絆。」

「・・・私はなんて想いをこの者達に・・・。」

パパは胸が苦しくなり、自分が認めなかった神達と、
それを正そうとしてた俺の気持ちを身に沁みて感じたんや。

「この子は、私の孫と思っても構いませんね?。」

「・・・あぁ、勿論だ。
皆よ!私を許してくれ!・・・そなた等を誤解していたこの私を。」

「天界の神・・・。」

釈迦如来がパパに向かって両手を合わせて眉尻を下げ涙を浮かべて笑んだ。
皆がこの時を幾度も夢見ていたから。

「そなた等は神。・・・認めよう。
そなた等は、我が家族だ。」

「神よ・・・。」

「天界の神・・・。」

「パパー!パパー!。」

子狐達がパパの足に群がった。

「ハハハ、お主らも共に祈ってくれ。」

「祈る?。」

「力を貸すという意味だ。」

帝釈天が子狐達に説明する。

動けない呪の体の俺は全てを心で感じ、耳で聞き、

やっと自分の想いが父に伝わった事を嬉しく思った。
















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