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vol 52:儚い呪
俺は学校の授業中、地獄に行ってた。
肉体の俺自身が先生の呼びかけに反応しなかった為に病院送り。
「カン・・・。」
待合室で待つ大樹。
救急室で検査されている俺の肉体。
地獄の住人に喜ばれる事なく、地獄の中を案内される。
「ほんま、マジくさい。」
「あはは、まだ慣れないかい?。」
俺を案内するサタンは楽しそうや。
「僕の部屋に行きたい所だけど・・・、
きっと彼女が気付いてるはずだからねぇ。」
「彼女?。」
「そう、君の・・・ね。」
サタンが誰を言っているのか解った。
俺の母親とか言うてる人のことやろう。
コンクリートにいろいろな絵が彫られてる黒いドア。
そこの空気はとても重かった。
「サタン?。」
ドアの向こうから大人な女性の声がする。
「ほらね。」
そう言ってサタンがドアを開ける。
「貴女が待っていた子が会いに来た。」
中は薄暗かったものの、すぐにオレンジ色の光で明るくなる。
「おいで、カン。」
サタンに呼ばれるがままに部屋に入ったら、
一瞬大きな尻尾が見えたんやけど、
目の前に居るんは金色の髪の綺麗な女の人。
白いワンピースみたいな服着てて、裸足。
色白で前髪は真ん中で分けてて・・・。
俺をジッと見つめる目は奇麗な目や。
「アナタが天の子?。」
「・・・うん。」
問い掛けに答えるも、俺は警戒してた。
表情も曇ってた。
「私はヘラ。アナタの母親のヘラ。」
母親・・・違う。
「どうしたの?もっと近くへ。」
母親と・・・違う。
「天の子、我が子。私の子・・・。」
「・・・帰る。」
俺は背を向けて部屋を出ようとした。
その時、女性の声は太く掠れた声になり、部屋が薄暗くなる。
「どうして・・・なぜ・・・ぅぅ。」
苦しそうな声に俺は振り返った。
「馬鹿だねぇ・・・。」
サタンが呟く。
俺の母親と言う綺麗な女は消えて、そこに居るのは、
大きく髪を振り乱し大きな目を見開いて大きな尻尾。
顔や体は鱗の女と言えない姿の生物。
「お前も私を母と認めぬのかぁ!。」
地響きが鳴り響き地面が揺れる。
俺は起きてる出来事にパニクってる。
「ヘラ、君の悪いところだよ?
すぐに我を忘れてしまう。そんな事、急に言われても、
君の子は戸惑うだけじゃない。」
サタンは柱に凭れて自分の髪を弄って話す。
「煩いサタン!・・・我が子、我が子よ・・・。
おいで・・・おいで・・・。」
体とは比べものにならない小さな両手を俺に向かって広げる。
呼ぶ声は儚く悲しい声色。
「お、俺を創ったのはアンタかもしれん。
けど、だからって母親とは違う!。」
思った事を口にした。
「パパも、アンタに形を創ってくれ言うただけやろ?
好きや、愛してる言うてないやろ?
アンタがパパを好きで愛してるだけで、
母親っちゅー存在とは違うねん!。」
「グァアアアアアア!。」
俺の言葉に叫び声を上げて尻尾を振り回し、
髪を乱れて浮かせ、蛇の様な目で俺を睨み、
「お前は我の子ぉ!我は神の妻ぁあああ!。」
「カンっ!。」
サタンが俺の名を呼ぶも、ヘラは俺に向かって勢い良く迫り、
俺の体を抱き締める。
「ぐ、ぁあああああ!。」
彼女に触れられると俺の体は鱗が生え、体全体が黒に近い灰色になっていく。
「ヘラっ!離すんだっ!カンが散りになる!。」
「先生!血圧、脈共低下ですっ!。」
俺の肉体は赤みが消え始めた。
「ヘラっ!落ち着くんだ。その子を離せっ!。」
俺の声は出ない。
サタンの声が耳に入ってくる。
視界はぼやけていく。
俺ってどうなるん?。
って言うか・・・なんなんこれ?。
「っく!。」
何かに腕を掴まれて引っ張られた。
サタンが自分も鱗になりながら俺を助けようとしている。
サタンが・・・。
「キェエエエエエ!。」
悲鳴の様な声が聞こえたと思ったら俺の体はヘラから離れた。
天井から突き刺さるような眩しい光が射し込み、
ヘラの体を光が突き射したからや。
サタンに引き寄せられて地面に体を打ちつける。
俺の霊体は動けない。
体全体が黒い鱗に覆われて。
サタンの体も鱗に覆われている。
「カン、お前は天の子でしょ。このくらいの呪、
解けなくてどうするわけ?。」
皮肉っぽい言葉やけど、声は弱い。
サタンもぐったりしてる。
「ほら、カン。このまま地獄に居てくれるのかい?。
チビ神に僕が怨まれてしまう。」
俺は声が出えへん。
体も思考回路も止まったままサタンの声だけが聞こえる。
「神様・・・アンタの娘を地獄で散りにさせる気かい?
僕の計画はこんな事じゃない。
さっさと・・・助けろよっ!。」
サタンが怒鳴り声を上げた。
「サタン、貴方にしては良き行動ではないですか。」
その声は・・・。
「ハハ・・・主のお出ましってわけ?
褒めてくれてありがとう。」
兄ちゃん。
主は光と共に現れ、サタンの体に手のひらを翳す。
「妹を救おうとした事への感謝です。」
「エネルギーよりも、呪を解くくらい出来ないのかい?。」
「相変わらず、皮肉しか言わない人ですね。」
サタンに自分のエネルギーを分け与え、
俺の体を抱き上げる。
「さよならも言わないのかい?。」
「・・・近い内にまた会うではないか。」
そう言って光となり俺を天界に連れて行った。
「脈拍、血圧戻りました!。」
「肌の色が・・・。」
呪は肉体にも影響を与えていた。
脈も弱まり、血圧も低下。
肌の色も赤みが消え黒ずんでいく。
主の助けで散りになる前に脈や血圧は安定したものの、
肌の色は変わらない。
医者は検査をしても解らないまま、個室に移された。
「先生っ!。」
「あ、お母さん。」
「何があったんですか?。」
「それが・・・。」
オカンが学校からの連絡で病院に到着。
大樹もただ、意識不明としか説明できん。
二人とも、まさか俺があの世でも生死彷徨ってる状態とは思ってへんやろ。
「今、個室に運ばれたって聞いて、俺も行こうとしてたところなんです。」
「そうですか。とにかく病室に行きましょう。」
オカンと大樹が病室に向かう。
なん?この展開。
俺・・・どないなるん?。
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