札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。もうかれこれ60年以上前に、臨床心理教育のモデルとしてアメリカ心理学会(APA)で打ち出されたのが、この「科学者-実践家モデル」です。実践の力だけでなく、科学的な研究法を身につけることが、心理臨床家として求められるわけです。
このモデルにはメリットもあれば、デメリットもあるでしょう。このモデルでよいのか、他のモデルも重要なのではあるまいか、そんなことを各自が考えて頂けたらと思います。
アメリカはともかくとして、このモデルは日本に定着したとは言えません。あくまで私の印象にすぎませんが、このモデルを推進して居るのは認知行動療法の立場の方々のようです。どうしてでしょう。理由は明快であると思います。認知行動療法は科学的なモデルに乗りやすいのです。
心理療法の世界はとても多様で、ハードな科学の基準を満たすものはあまり無いと思います。たとえば、検証主義からすると、精神分析で言うことは検証することが出来ないので、それは科学とは言えないことになります。このモデルの背景には、多様な心理療法を科学的であるか、ないかの物差しで、統一したり、排除したりする力学が働いているようです。木に竹を接ぐように、科学者と実践家が「ハイフン」で結ばれたモデルなのですが、このハイフンにはそれに止まらない意味があるのです。
これには、研究の方法論と実践の方法論を区別すると言う特徴もあるのかもしれません。しかし、たとえば実践は解釈学的な方法論で、研究は論理実証主義的な方法論でといったかたちで、方法論を折衷することは可能なのでしょうか。まったく不可能とは言えないにせよ、そうなると、クーンの「共約(通約)不可能性」の問題が完全に無視されてしまうことになるでしょう。
科学的な方法論だけですくえない広大な領野、それがカウンセリング・心理療法の世界、ひいては人間の心のように思います。私は、科学者-実践家モデルは数多くあるモデルの一つに過ぎないと考えます。たとえそれが、世界的な主流になるのだとしても。札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」でした。
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