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多様な現実に、もううんざり




 札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。カウンセリングの実践研究を長年にわたって続けると、現実がこんなにも多様なのかと唖然とするはずです。たとえば、同じ診断名を貼られた場合でも、人の数だけその疾患があるように映るのです。

 パーソナリティのスタイルや疾患の類型にもさまざまなものがあります。けれどもそのタイプ分けは、中間的な類型を無視して出来上がったものですから、あくまで構成された現実であることを忘れてはなりません。

 現実の多様性に溺れそうになったとき、ゲーテであれば「こんなときプラトンならどうしたであろう」とつぶやいたことでしょう。そうです、誰しも統一的な理念を欲しがるのです。

 ヘーゲルの「精神現象学」がそうですが、観念論的な思想は、絶対精神と言う統一体に至ろうとします。実証主義もそうでしょう。一致や統一に向かい、多様であることを、よしとしないのです。一致や統一は無言の暴力になり得ます。

 実証主義が求める、一致、対応、統一に背を向けたのが、たとえばウィリアム・ジェームズなどのプラグマティズムです。一致を捨てて有用性をとり、多元的な世界を、よしとしたのです。

 あなたならどちらの世界観、認識論をとりますか?

 けれども、このような二者択一とは異なる、第三の道もあるのかもしれません。「複数にして単数の存在」(ナンシー)や、「何も共有していない者たちの共同体」(リンギス)といった世界です。それは、単一と複数のあいだ、一と多のあいだに他なりません。

 これは私の偏見かもしれませんが、いわゆる心理学の人間は「一」の世界に、いわゆる臨床心理の人間は「多」の世界に、それぞれ住んでいるような気がします。互いに交わることなく、それぞれの解釈共同体(学問的共同体)に所属しながら。札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」でした。



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