独断的JAZZ批評 838.









JAZZ雑感(22) manaの選ぶ2013年 PIANO ALBUM BEST 5+α
今年(レビュー期間H24.12.16〜H25.12.15)のCDレビューは54枚。
おおむね、昨年の50枚と比較して大きな変化はない。
レビューの数は54枚だが、5つ星に選定したアルバムの数は25枚。
これは昨年よりも5枚増えた。打率4割6分3厘というのは過去最高数値だ。
これは、最近は試聴サイトが大幅に増えたのが大きな要因になっているだろう。
特に、YouTubeで掲載されると1曲丸ごとというケースが多いので、その分、確率が確かなものになる。

さて、今年のベスト・アルバムであるが、今年もフォーマットによってベスト・アルバムを選定してみた。
ソロ、デュオから各1枚、トリオから3枚、合計5枚を選定した。
これらの選定の基準となっているのは「美しさ」、「躍動感」、「緊密感(緊張感)」である。
これらはあくまでも僕がこの1年間に聴いた54枚のアルバムでの話。37枚がピアノ・トリオだった。
今年も締め切りの12月近くになって素晴らしいアルバムがリリースされた。
年末のクリスマス需要、お年玉需要を見込んで、この時期にアルバムのリリースが集中するのだろう。

ソロとデュオにはKENNY BARRONのアルバムが滑り込みで入った。
どちらも円熟の「匠の技」と言っても良いだろう。
トリオからは3枚。
スウェーデン、キューバ、ドイツの若手プレイヤーのダイナミズム溢れる演奏はどうしても入れたかった。
中堅どころのプレイヤーからLUIGI MARTINALE TIROを選んだ。
昨年のソロに続いて2年連続の選出だ。
3つ目がベテランからCHICK COREA TRIO。COREAも既に71歳になったというから驚きだ。
超一流が集まるとこういう演奏になるというお手本みたいなトリオ演奏だった。
ジャズの歴史の中に刻まれてもおかしくない演奏だと思う。

この5つのアルバム中からどうしてもベスト1を選べと言われたら、
 CHICK COREA TRIO "TRILOGY"から"DISK 2"
を選ぶ。

ベスト・アルバムはこの1〜2年くらいの間にリリースされた、所謂「新譜」を対象としているのだが、
今回は番外編として旧譜から1枚、日本のカルテット演奏を追加した。
山下洋輔のリリカルな演奏も聴きものだ。

余談だが、今年読んだ本の数は72冊だった。
去年はCDと読んだ本の数がピッタリ一緒だったけど、今年は3週間の入院という予期せぬ出来事が
あったので入院中の16冊が効いて本がCDを相当上回った。
< PIANO ALBUM BEST 5+α >   (ジャケット画像をクリックするとレビューにリンクします)
この1枚 TITLE / PERSONNEL ひとくちコメント
SOLO "MY FUNNY VALENTINE"(VOL.2)
p:KENNY BARRON
2012年2月 スタジオ録音
EIGHTY-EIGHT'S : EECD-8805
奏でられるのは聞古したスタンダード・ナンバーばかり。
SIMPLE IS BEST ! を具現化した。どこから切り取ってもいぶし銀のピアノ・ソロが楽しめる。
VOL.1の"BEAUTIFUL LOVE"と同時発売。お好みの曲に応じて選んでいただければよいと思うが、どちらかを選べと言われれば、僕はこの"VOL. 2"を選ぶ。
DUO "PARIS 2012"
p:KENNY BARRON
b:DAVE HOLLAND
2012年9月 
LIVE AT JAZZ A LA VILLETTE, PARIS 
ライヴ録音 MEGADISK
こちらもKENNY BARRON 絡み。
ベースにDAVE HOLLAND。
二人の技術的な力量と同時に「阿吽の呼吸」ともいうべき緊密感が素晴らしい。
加えて、「かっこいい」のだ。YouTubeで全曲聴けるので参考まで。
http://www.youtube.com/watch?v=7sJrEmWio6c
TRIO   "IN CONCERT"
p:MARTIN TINGVALL
b:OMAR RODRIGUES CALVO
ds:JURGEN SPIEGEL
2012年10月 ライヴ録音
SKIP : SKP 9127-2
スウェーデン、キューバ、ドイツの若手プレイヤー3人による第5作目。
全曲、TINGVALLのオリジナルだが、曲も素晴らしい。
弾ける若さ、漲る躍動感、迸るダイナミズム!
現代ヨーロッパ・ジャズの新たな方向性を示している。
リリシズムや甘さ控え目でパワフルなダイナミズムに溢れている。
余談だが、6曲目の"MOVIE"はスマホの着信音に設定している。
  "STRANGE DAYS"
p:LUIGI MARTINALE
b:REUBEN ROGERS
ds:PAOLO FRANCISCONE
2012年7月 スタジオ録音
ALBORE : ALBCD 020
JAZZを40年も聴いてきて良かったなあと思えるアルバム。
ホッとする美しさと心地良い躍動感。
極めつけは2曲目の"BEWITCHED, BOTHERED, AND BEWILDERED"で、今年一番多く聴いたトラックだと思う。
  "TRILOGY"
p:CHICK COREA
b:CHRISTIAN McBRIDE
ds:BRIAN BLADE
2010年9,10月 2012年11月,12月 
ライヴ録音
UNIVERSAL MUSIC : UCCJ-3031〜3
このアルバム、ジャズの醍醐味がギューッと凝縮されて詰まっていることを考えれば数万円の価値に値すると僕は思っている。
CHICK COREAのピアノ・トリオ・アルバムとしては最高傑作と位置付けても何ら問題ないだろうし、ジャズ史上に燦然と輝くピアノ・トリオだと言っても過言ではないだろう。
とりわけ、トリオだけに集中した
"DISK 2" が僕の一番のお気に入りで、今年のベスト1に選定したい。
 < 番外推薦盤 >    
QUARTET
以上
 
   "GENTLE NOVEMBER"
ts:武田和命
p:山下洋輔
b:国仲勝男
ds:森山威男
1979年9月埼玉県坂戸文化会館録音
OMAGATOKI : SC-7104
このアルバムはバラード集である。
かの有名なJOHN COLTRANEの"BALLARDS"にも匹敵、凌駕するほどのアルバムに仕上がった。
山下のしっとりとしたピアノにも耳を傾けたい。

会場となった埼玉県坂戸文化会館では、観客は入れずにレコーディングだけが執り行われたと思われる。
どの楽器の音色も今もって瑞々しい。
JAZZ雑感(21) 2012 PIANO ALBUM BEST 5
JAZZ雑感(20) 2011 PIANO ALBUM BEST 5 + α
JAZZ雑感(18) 2010 PIANO ALBUM BEST 3 + α

JAZZ雑感(17) 2009 PIANO ALBUM BEST 3 + α
JAZZ雑感(16) 2008 PIANO ALBUM BEST 3 + α
JAZZ雑感(15) 2007 PIANO ALBUM BEST 3 + α
JAZZ雑感(14) 2006 PIANO ALBUM BEST 5 + α
JAZZ雑感(13) 2005 PIANO ALBUM BEST 3 + α
JAZZ雑感(10) 2004 PIANO ALBUM BEST 4 + α
JAZZ雑感( 9)  2003 PIANO BEST ALBUM

最後に、僕のアルバム・レビュー時の採点基準を載せておこう。
アルバム・レビューの基準は「躍動感、緊密感、美しさ」 更に、一体感とか昂揚感とか緊迫感が香辛料のように
スパイスされたら言うことはない。


・★★★★★
・・・・大満足。一生のお付き合いだ。
・★★★★☆・・・・満足。充分楽しめる。5つ星との差はわずか。
・★★★★・・・・・・普通。最近はほとんど聴き返すことがないので買取に出している。
・★★★☆以下・・所有価値なし。多分、二度とトレイに載ることはないだろう。CDケースの肥やしとなるよりは
気に入ってくれる人に選ばれたほうがディスクもうれしいだろう。中古の買取へ。
(2013.12.14)