独断的JAZZ批評 519.








JAZZ雑感(16) 
              manaの選ぶ 2008年 PIANO ALBUM BEST 3 +α

2008年、(昨年の12月中旬から今年の12月中旬まで)僕が購入し、「独断的JAZZ批評」にピックアップしたアルバムは全部で62枚(昨年は66枚)。そのうち、「厳選」入りが23枚(昨年は26枚)。打率、3割7分1厘は昨年の3割9分4厘を若干下回った。まあ、3枚購入して1枚以上は大満足だったのだから、確率的には喜ぶべきことだろう。

選定の基準は「躍動感、緊密感、美しさ」 更に、一体感とか高揚感とか緊迫感が香辛料のようにスパイスされたら言うことはない。
当然ながら、ここに挙げた7枚は、レビュー時、星5つのアルバムばかりだ。既に、何回も何回も繰り返し聴いているが、これからも繰り返し聴くことになるだろう。一生のお付き合いになるアルバムと確信している。

さて、僕のレビュー時の採点基準を載せておこう。
・★★★★★
・・・・大満足。一生のお付き合いだ。
・★★★★☆・・・・満足。払った金以上の価値はあり。
・★★★★・・・・・・普通。稀には聴き返すこともあるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
★★★☆以下・・所有価値なし。多分、二度とトレイに載ることはないだろう。CDケースの肥やしとなるよりは気に入ってくれる人に選ばれたほうがディスクもうれしいだろう。中古の買取へ。
以上、星4つがボーダーライン。

では、厳選23枚の中から今年のベスト・アルバム、7枚を紹介しましょう。
これらはあくまでも今年1年間に僕が購入し、聴いたアルバムの中からの選定で発売時期や録音年月日は必ずしも2008年中とは限らない。
ジャズの醍醐味を満喫させてくれるという点でCOREAとひろみのデュオ・アルバムとMEHLDAUのライヴ盤は申し分がないだろう。ジャズの緊迫感やスリルを堪能できる。手に汗握る演奏というのはこういうのを言うのだろう。
BEST 3の中には2枚のデュオ・アルバムが入った。もう一枚の"A TIME FOR LOVE"はバラード集だが、デュオならではの緊密感、一体感を堪能できる。まさに、心通い合う演奏だ。
BEST 4〜7のアルバムはほとんど同列と言っていいだろう。今年はドイツのグループに印象深いアルバムが揃った。OLIVIA TRUMMERとMARTIN TINGVALLのアルバムはヨーロッパ的な透明感に躍動感、グルーヴ感が加味されている。フランスのJEAN-CHRISTOPHE CHOLETのグループもまた、ヨーロッパ的な味付けにオリジナリティが加味されて強い印象が残った。後藤浩二のアルバムはベースとドラムスで参加しているLARRY GRENADIERとHARVEY MASONのトリオが一過性のグループとは思えない緊密感を醸し出していた。
2008年は、僕にとっては実に豊作な年であった。来年もまた、これほどの強い印象を残してくれるアルバムに巡り会えたら、こんなに嬉しいことはない。

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< PIANO ALBUM BEST 3 > 
この1枚 TITLE / PERSONNEL ひとくちコメント
1 "DUET"
p:
CHICK COREA & 上原ひろみ

2007年9月 ライヴ録音
JAZZ批評 467.
CHICK COREAは"NOW HE SINGS, NOW HE SOBS"(JAZZ批評 1.)で僕をジャズの世界に引きずり込んだミュージシャン。40年の時を経て、再び、脳裏に焼きつくようなアルバムを出してくれた。上原ひろみの健闘も申し分ない。
全曲通してスリリングであり、緊密感に溢れている。ジャズの醍醐味、エッセンスが凝縮して詰まっている。
2 "A TIME FOR LOVE"
bs, as, cl:
JENS SONDERGAARD
p:
KENNY WERNER

2008年4月 スタジオ録音
JAZZ批評 509.
全曲、スタンダード・ナンバー中心のバラード集。バリトン、アルト・サックスに加えクラリネットとピアノとの心通い合う演奏が堪能できるデュオ。
丁度、「純米大吟醸無濾過生原酒」のような馥郁たる香りと深く濃密な滋味が身上だ。
これは美味しい!
3 “BRAD MEHLDAU TRIO LIVE”
p:BRAD MEHLDAU
b: LARRY GRENADIER
ds: JEFF BALLARD

2006年10月 ライヴ録音
JAZZ批評 479.
MEHLDAU TRIOがNEW YORKのVILLAGE VANGUARDで2006年10月に5日間にわたりライヴ・レコーディングした2枚組み。ライヴ特有の手に汗握る白熱した演奏が堪能できる。
DISK 1の"O QUE SERA"とDISK 2の"SECRET BEACH"の昂揚感が特に素晴らしい。ただし、体調の良いときに心してかかること。聴く側にも体力が必要だ。
< PIANO ALBUM BEST 4〜7 > 
4 "WESTWIND"
p:
OLIVIA TRUMMER
b:JOEL LOCHER
ds:BODEK JANKE
tp,fh:MATTHIAS SCHRIELL
2007年12月 スタジオ録音

JAZZ批評 498. 
ドイツが生んだ、「天が二物も三物も与えたという才女」 未だ23歳とは思えない才気溢れる演奏に口あんぐり。
名ピアニスト、名コンポーザー、名アレンジャーとして八面六臂の活躍だ。
2006年録音の"NACH NORDEN"(JAZZ批評 517.)も併せて聴いてもらいたいアルバムのひとつ。
5 "BEYOND THE CIRCLE"
p:
JEAN-CHRISTOPHE CHOLET
b:HEIRI KANZIG
ds:MARCEL PAPAUX

2007年12月 スタジオ録音
JAZZ批評 514.
CHOLETは46歳のフランス人ピアニスト。丁度、脂の乗っている年齢だ。ベースのKANZIG、ドラムスのPAPAUXとの絶妙なアンサンブルが素晴らしい。グルーヴな演奏からリリカルな演奏まで、硬軟取り揃えたスケールの大きさが頼もしい。
2005年録音の"UNDER THE WHALE"(JAZZ批評 512.)も見逃せない1枚。
6 "SKAGERRAK"
p:
MARTIN TINGVALL
b:OMAR RODRIGUEZ
ds:JURGEN SPIEGEL

2005年12月 スタジオ録音
JAZZ批評 473.
これもドイツのグループ。なんと、これがデビュー・アルバムだという。その溢れんばかりのエネルギーとスケールの大きさに度肝を抜かれる。ヨーロッパ的な味付けにグルーヴ感と躍動感が丁度良い塩梅に加味されている。
今年になって"NORR"(JAZZ批評 474.)がリリースされているが、けれんみのなさでこちらのアルバムを推したい。
7 "HOPE"
p:
後藤 浩二
b:LARRY GRENADIER
ds:HARVEY MASON

2006年12月 スタジオ録音
JAZZ批評 465.
名古屋のライヴ・ハウスを中心に活躍している後藤浩二のメジャー・デビューの2枚目。LARRY GRENADIERという当代きっての名ベーシストのサポートを受け、素晴らしいアルバムに仕上がった。白眉はアルバム・タイトルにもなっている"HOPE"
デビュー・アルバム"AZUL"(JAZZ批評 277.)は2004年録音の日本人メンバーによるトリオ。

(2008.12.16)

JAZZ雑感(15) 2007 PIANO ALBUM BEST 3
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JAZZ雑感(10) 2004 PIANO ALBUM BEST 4
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