独断的JAZZ批評 237.








JAZZ雑感(10) 
              manaの選ぶ 2004年 PIANO ALBUM BEST 4

「2004年 ピアノ・アルバム BEST 4 」を選ぶにあたっては、2004年中に僕が購入した64枚のCDの中からこれはと思うベスト・アルバムを紹介していきたいと思う。
但し、あくまでも僕が今年購入して聴いたアルバムの範囲であることをご了承いただきたい。
当初はBEST 3 にするつもりだったが、どうしても4枚になってしまった。だから、敢えてBEST 3 には拘らなかった。一応、今年発売になった新譜に限ってみた
選定の基準は「躍動感、緊密感、美しさ」。更に、高揚感とか緊迫感が加われば言うことなし。これらのCDのベストと思う演奏曲目を「この1曲 & α」として掲載した。

この1枚 TITLE / PERSONNEL この1曲 & α
<BEST 4> (掲載日順)
"MI RITORNI
   IN MENTE"

2003年スタジオ録音
p:STEFANO BOLLANI
b:JESPER BODILSEN
ds:MORTEN LUND
赤字がリーダー)
@"NATURE BOY"
ベースと絡むBOLLANIのピアノが凄い。バッキングだけで充分楽しむことが出来る。躍動感と緊密感に溢れ、その上、美しく、スリリング。本年のベスト・チューンとして推薦したい。
Dのタイトル曲などは美しい曲であるが、進むほどに高揚感が高まってきてご機嫌な1曲だ。
全編に溢れる緊迫感と高揚感が堪らない。ピアノを知り尽くしたBOLLANIのベスト・アルバムでもある。
"THREESOME"
2003年スタジオ録音
p:DANILO REA
b:REMI VIGNOLO
ds:ALDO ROMANO
I"SONG FOR ELIS"
美しいテーマに歌うが如きのブラッシュ・ワーク。
どの曲とっても3人のインタープレイが素晴らしい。まさに"THREESOME"の緊密感が絶妙で唸ってしまう。そんじょそこらのアルバムとは一味もふた味も違う。
美しい水彩画あり、濃厚な油絵あり、抽象画あり。多彩な色合いを見せてくれる。全編、美しさに溢れ、何とも不思議に心に残るアルバム。全ての曲がROMANOのオリジナル。
"THE OUT-
 OF-TOWNERS"

2001年ライヴ録音
p:KEITH JARRETT
b:GARY PEACOCK
ds:JACK DeJOHNETTE
E"IT'S ALL IN THE GAME"
勿論、トリオの演奏も文句なく素晴らしいが、このソロは美しい上に人を幸せな気分にさせてくれる名演だ。全編から漂うそこはかとない幸せの空気が貴方の身体全体をすっぽりと包む・・・・そんな感じ。
いつの間にか指を鳴らしているAとか、スリリングなCのブルースなど飽きさせることがない。深い感動と幸せを与えてくれる円熟のトリオの名演。
"SOLO PIANO
 LIVE IN TOKYO"

2003年ライヴ録音
p:BRAD MEHLDAU
B"SOMEONE TO WATCH OVER ME"
スローにおける絶妙な「間」がこのピアニストの命。壮絶テクニックに裏付けられたパワフルな演奏も凄いが、真骨頂はスローにありと僕はみる。溢れんばかりの歌心を堪能いただきたい。
@"THINGS BEHIND THE SUN" 8ビートながら深い躍動感に溢れている。更には、音の洪水に身を任せるEの"PARANOID ANDROID"など、ピアノから発する巨大なエネルギーにぶっ飛ばされそうになる1枚。
<推薦盤> (掲載日順)
"TIMELESS"
2003年スタジオ録音
p:DON FRIEDMAN
b:JOHN PATITUCCI
ds:OMAR HAKIM
D"TURN OUT THE STARS"
ベースのPATITUCCIが本領発揮か!弾き過ぎ、独善的な匂いは消えている。感動のアルコ弾きを堪能いただきたい。
初顔合わせの3人があっという間にこれだけのアルバムを仕上げてしまうJAZZの即興性に感動。
COLE PORTER作のE"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE ?"は3者のインタープレイに始まって快い4ビートに進む。多彩な色合いを感じさせるHAKIMのドラミングに要注目。F"BOUNCING WITH BUD"もご機嫌だ。それにつけても、"WETHER REPORT"のOMAR HAKIMがドラムスに参加したというのは、見事な人選だった。初顔合わせの3人がお互いを刺激しあって新鮮な音楽に仕上がった。
"LES PARAPLUIES DE CHERBOURG"
2003年スタジオ録音
p:JAN LUNGREN
b:JESPER LUNDGAARD
ds:ALEX RIEL
D"I WILL WAIT FOR YOU"
この曲を聴けば、このアルバムが単なる映画音楽集でないことが分かる。緊張感と躍動感を堪能できるインタープレイが嬉しい。
スタンダードの定番E"AUTUMN LEAVES" は小賢しいこと一切なし。ストレート真っ向勝負で小気味良い。痛快ですらある。
映画音楽集の狙いとは別に極上の料理に仕立て上げた3人のプレイヤーに乾杯。
"ANCESTRY"
2003年スタジオ録音
p:KENNY BARRON
b:KIYOSHI KITAGAWA
ds:BRIAN BLADE
I"YOU'VE CHANGED"
円熟のKENNY BARRONと新進気鋭のBRIAN BLADEを向こうに回して力強いベース・ワークを披露した北川のプレイに拍手。
B"TIME TO GO" シンバルが4ビートを刻みベースが唸る。そしてピアノが吼える。これぞジャズの醍醐味。
アコースティック・ベースの音色に酔い痴れる1枚。

"BEST 3"と言いながら、結果、"BEST 4"になってしまった。
ALDO ROMANOの"THREESOME"を入れるかどうか迷ったが、どうしても落とせなかった。だったら4枚選べばいい訳で、そのようにした。"THREESOME"は不思議なアルバムで10枚(曲)の絵画を張り合わせると大きな壁画になるような構成力が魅力だ。美しさと激しさが隣り合わせなのも良い。多少のアブストラクトがあるので聴く人を選ぶかもしれない。このアルバムとJESPER BODILSENのアルバムは両方とも輸入盤で仙台のDISKNOTEでゲットしたが、今も入手可能かどうかは分からない。

BODILSENのアルバムはベースがリーダーだが、極め付きはSTEFANO BOLLANIのピアノだろう。イケメンだ、貴公子だと宣伝文句に事欠かないが、本当に凄いのはその実力のほどだ。今までに、これほどのバッキングを弾けるピアニストが居ただろうか!?バッキングだけで感動を呼び起こしてくれるピアニストが居ただろうか?特に@の"NATURE BOY"には痺れる。今年のベスト・チューンだと思っている。

KEITHとMEHLDAUは順当なところだろう。いずれもJAZZの深い感動を呼び起こしてくれること間違いなし。

「推薦盤」の3作品もJAZZの醍醐味を充分に堪能させてくれるはず・・・。"TIMELESS"では初対面の3人がいきなりこれほどの作品を仕上げてしまうJAZZの即興性に脱帽し、JAN LUNDGRENの映画音楽集は作る側の思惑を飛び越えて(?!)、飛び切り上等なJAZZに仕上げてしまった。"ANCESTRY"では日本人ベーシスト・北川潔がアコースティック・ベースの魅力を存分に引き出してみせた。
以上、全7枚、甲乙点け難い素晴らしいアルバムだ。

今回の選定は今年発売になった新譜に限ってみた。旧譜まで含むと選定の幅が広がり過ぎるため。
STAN GETZの"PEOPLE TIME"やDAVE PIKEの"PIKE'S PEAK"は座右の1枚として置いておきたいアルバムだ。

このページは僕にとっても今年1年の集大成のページにあたる。そういう意味でも「manaの厳選"PIANO & α"」にピックアップしたアルバムの中から厳選を極めたつもりだ。

2004年は64枚のアルバムを独断的JAZZ批評のレビューとして紹介してきた。購入しながら掲載しなかったのは数枚なので、そのほとんどをアップしてきたことになる。ピアノだけに限っても紹介しきれないアルバムが五万とあるわけなので、ほんの一助にしかならなかったとは思うが来年も続けて行きたいと思っている。僕自身も、これこそ最高のストレス解消法だと思っている。
懲りずにご訪問いただけたら幸いである。   (2004.12.18)

JAZZ雑感(9) 2003年ピアノ・ベスト・アルバム