独断的JAZZ批評 171.









manaの選ぶ2003年ピアノ・ベスト・アルバム

2003年のピアノ・ベスト・アルバムを選ぶにあたっては「manaの厳選"PIANO & α"」から2003年中に
僕が購入し聴いて良かったと思ったCDを2001年以降の録音盤を基準に選んだ。
選定の基準は「躍動感、緊迫感、美しさ」の3つ。普通「ベスト」と言えば3枚か、せいぜい5枚までだろうが、
絞り込めずに結果として以下の14枚になってしまった。
これらのCDのベストと思われる演奏曲目を「この1曲」として掲載した。

この1枚 TITLE / PERSONNEL この1曲
"THE JOY OF STANDARDS VOL.2"
2002年録音
p:JOE CHINDAMO
b:MATT CLOHESY
ds:DAVID BECK
A"MY FAVOURITE THINGS"
イントロから躍動感が溢れんばかり!何かが始まると期待感を持たずにいられない。「躍動感、緊迫感、美しさ」を兼ね備えた演奏と言える。
@の"TRICOTISM"は曲の面白さと相俟って味わい深い1曲になった。
"CHANGE IN MY LIFE"
2002年録音
p:JOEL WEISKOPF
b:JOHN PATITUCCI
ds:BRIAN BLADE
E"IRISH FOLK SONG"
JOEL WEISKOPFのオリジナル・ワルツ。JOHN PATITUCCIとBRIAN BLADEを迎えて3者が対等の立場で演奏を繰り広げる。F"THE BELIEVER"ではアップテンポの4ビートを展開する。BRIAN BLADEのドラミングにも耳を傾けたい。
"TRIO '02"
2001年録音
p:MARK AANDERUD
b:VIT SVEC
ds:PAVEL RAZIM
D"FROZEN DROPS"
リーダーのピアニストはメキシカン。歌心溢れる演奏が味わえる。この"FROZEN DROPS"は美しい曲で、かつて、これほどの心に響くスロー・バラードは聴いたことがない。ベースのVIT SVECはクラッシクの薫陶を受けながらも躍動感のある力強い演奏を披露している。
"GOING HOME"
2002年録音
p:BILL MAYS
b:MATT WILSON
ds:MARTIN WIND
I"GOING HOME"
クラッシクの名曲「新世界」を純粋なJAZZにまで昇華している。むしろ「燻し銀」と言うに相応しい演奏だが、枯れてはいない。清々しくも瑞々しい演奏を堪能いただきたい。A"YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO"も甲乙つけがたい名演である。
"PAGE TWO"
2002年録音
p:PETER BEETS
b:LARRY GRENADIER
ds:WILLIE JONES V
E"SO WHAT / IMPRESSIONS"
ベースが強靭なビートを持つLARRY GRENADIER。ベースが煽る、煽る!それに負けないピアノとドラムス。緊迫感溢れる超速4ビート。JAZZの醍醐味が堪能できる。渾然一体となった怒涛の演奏を聴け!F"CHELSEA BRIDGE・・・"も聴き応えあり。
"UP FOR IT"
2002年録音
p:KEITH JARRETT
b:GARY PEACOCK
ds:JACK DeJOHNETTE
D"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME"
このグループは別格といてもいいだろう。音楽の完成度の高さといい、志の高さといい世のピアノ・トリオの範となるものであろう。能書きは要らない。黙って、あふれ出る音楽を聴くのみ。
"NEW YORK STYLE"
2003年録音
p:AKIKO GRACE
b:LARRY GRENADIER
ds;BILL STEWART
D"CARAVAN"
このアルバムもベースにLARRY GRENADIERが参加している。このベーシストなくてこの躍動感は生まれない。今まで聴いてきた"CARAVAN"とは訳が違う。AKIKO GRACEの奔放なピアノの素晴らしさは言うまでもない。そして、心を打つG"PRAY SONG"。
"PEACE"
2002年録音
p:KENNY BARRON
as:GEORGE ROBERT
A"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS"
アルトサックスとピアノのデュオ・アルバム。GEORGE ROBERTの美しい音色とともにKENNY BARRONのピアノのバッキングの素晴らしさがデュオということを忘れさせてしまう。実に濃密で薫り高い演奏と言える。最後のBARRONのピアノ・ソロも素晴らしい。
"WALTZ FOR DEBBY"
2002年録音
p:DON FRIEDMAN
b:GEORGE MRAZ
ds:LEWIS NASH
G"FLAMANDS"
BILL EVANSの呪縛から逃れたDON FRIEDMANが年を取るごとに増した逞しさと力強さを漲らせた1枚。長年の盟友GEORGE MRAZの好サポートも見逃せない。
即興で作ったE"BLUES IN A HURRY"ではギンギン・ギラギラの演奏を披露している。
"LIVE AT COPENHAGEN JAZZHOUSE"
2002年録音
p:PETER ROSENDAL
b:MADS VINDING
ds:MORTEN LUND
D"WHEN IT'S SLEEPY TIME DOWN SOUTH"
新人ピアニストとはいえ堂々とした演奏で、ベテラン・ベーシストMADS VINDINGを向こうに回しての演奏が新鮮だ。凄くしゃれっ気のある演奏で虜になってしまった。B"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME"はヨーロッパ・ジャズにありがちな叙情的な面よりも、力強さとドライブ感が前面に出たスリリングな演奏が味わえる。
"AIR"
2003年録音
p:GIOVANNI MIRABASSI
tp:FLAVIO BOLTRO
tb:GLENN FERRIS
@"LILI EST LA"
ピアノにトランペットとトロンボーンという変則のトリオ。かつてこのようなトリオ編成はなかった。その勇気と質の高さに乾杯。リズム陣無しであっても湧き上がる躍動感が素晴らしい。感動の1曲。背筋がゾクゾクするような「躍動感、緊迫感、美しさ」を堪能して欲しい。
"ROMAN SUN"
2001年録音
p:JOHN HARRISON V
b:PETER KONTRIMAS
ds:ALAN HALL
G"WILLOW WEEP FOR ME"
アメリカにはまだまだこういう無名だけど実力を持ったピアニストがいるんだなあと痛感した1枚。爽やかでありながらアーシーな感じ、更に、ストレートな躍動感が横溢している。Dの美しいバラード"BALLAD OF THE SAD YOUNG MEN"も良い。
"TRINACRIA"
2003年録音
p:ANDREA BENEVENTANO
b:PIETRO CIANCAGLINI
ds:PIETRO IODICE
G"ANIRAM"
「寒月」を連想させるかのような透き通った透明感のある曲。美しいテーマと味のあるアレンジで神秘的な美しさまでもを具現化してみせた。バラードとは対照的にアップテンポのFやひょうきんなIでもその実力を遺憾なく発揮している。
"SHAKEN NOT STIRRED"
2003年録音
p:JURAJ STANIK
b:MARIUS BEETS
ds:OWEN HART JR.
H"BLUES"
JAZZの原点はやっぱりブルースだと改めて認識させられた。ミディアム・スローのたった12小節の中で、どんな表現力を残すことが出来るのだろうか。それこそがブルースの原点であり難しさでもある。スタンダード・ナンバーF"BUT NOT FOR ME"もいい!

今年1年間で「独断的JAZZ批評」に紹介したアルバムの数は53枚。
ほぼ1週間に1枚紹介してきたことになる。週に1枚ではあるが聴いている時間は5時間から10時間に及ぶ。
それでやっと1ページのJAZZ批評を書き上げる・・・そんなペースでやってきた。
新たな'04年に感動を呼び起こすアルバムに出会えることを祈りながら'03年の筆を置くことにする。
(2003.12.27)