独断的JAZZ批評 802.

KAZUNORI TAKEDA
聴けば分かる!
"GENTLE NOVEMBER"
武田和命(ts), 山下洋輔(p), 国仲勝男(b), 森山威男(ds)
1979年9月 埼玉県坂戸文化会館録音 (OMAGATOKI : SC-7104)

先日、お茶の水のJAZZ TOKYOに行って10数枚のCDを買取に出した。その軍資金で山下洋輔のエッセイ、「ピアニストを笑うな!」と「ピアノ弾き即興人生」の中古本2冊を購入した。
その「ピアニストを笑うな!」中の「スゴイ人たち」の項で出てきたのが、この武田和命(かずのり)だ。寡黙なテナーサックス奏者で、1989年49歳の若さで亡くなった。30年以上楽器に息を吹き込み続けた喉に生じた癌が原因だったという。
このアルバムは、その武田が39歳の時の録音で、武田名義のアルバムになっているが、プロデュースは山下洋輔、その人である。その山下もピアニストとして参加している。
D〜Gが武田のオリジナル。

@"SOUL TRANE" TAD DAMERONの書いた曲。山下は本の中で「最初の7音を聴いて背中に戦慄が走らない者はないだろう」と書いている。素晴らしい音色と演奏に感嘆符3つ!!!(末尾の試聴サイトにYouTubeのリンクを掲載)
A"THEME FOR ERNIE" 
テナーの音色だけで惹きつけるものがあるし、後を執る山下のピアノが静かに躍動している。
B"AISHA" 
C"IT'S EASY TO REMEMBER" 
JOHN COLTRANEの"BALLARDS"の中にも入っている曲。聴き比べてみるのも面白い。武田の美しいテナーの音色が胸に沁み込む。続く、余分なものを削ぎ落とした山下のピアノもいいね。
D"ONECE I TALKED" 切ないなあ!告別式で流れたこの曲がその場に合い過ぎていたと山下は書いている。
E"OUR DAYS" この曲が"BALLARDS"の3曲目にある"TOO YOUNG TO GO STEADY"にそっくり!何回も聴き比べたけど、サビの部分が少し違うだけ。この曲は武田のオリジナルで山下が命名したとある。しかし、そんなことはどうでもよくて、この名演に酔い痴れよう!音数少なめの山下のピアノが泣かせる!
F
"LITTLE DREAM" 山下のピアノが実にいいのだ。勿論、鍵盤の肘打ちなんてことはしていない。音数も多からず少なからず丁度良い塩梅だ。ここにはフリー・ジャズの山下の面影は皆無だ。
G"GENTLE NOVEMBER"
 武田の誕生日が11月ということでタイトルが付けられた。国仲と武田のインタープレイがいいね。

このアルバムはバラード集である。かの有名なJOHN COLTRANEの"BALLARDS"にも匹敵、凌駕するほどのアルバムに仕上がった。山下のしっとりとしたピアノにも耳を傾けたい。
このアルバムはデジタル・レコーディングされている。会場となった埼玉県坂戸文化会館では、観客は入れずにレコーディングだけが執り行われたと思われる。どの楽器の音色も今もって瑞々しい。
因みに、ライナーノーツには山下のエッセイの文章がそのまま引用されている。その一部を引用すると、「その音は深くきびしく優しい。友人のクラシック演奏家が『人間が管楽器で出せる最高の音の一つ』という言葉を証言として提出しよう」とある。
このアルバムの素晴らしさは、聴けば分かる!ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2013.05.01)

試聴サイト :
 http://www.youtube.com/watch?v=jBRvcn4JimQ



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