独断的JAZZ批評 311.








JAZZ雑感(13) 
              manaの選ぶ 2005年 PIANO BEST ALBUM

2005年、(昨年の12月中旬から今年の12月上旬まで)僕が購入し、「JAZZ批評」にピックアップしたアルバムは全部で68枚。そのうち、「厳選」入りが24枚。今年は実に豊作だったと思う。その「厳選」から、特に良いと思ったアルバム、聴いて欲しいと思うアルバムを全て掲載した。それが、以下の13枚。
ベスト3を選ぶかどうかで迷ったが、敢えてトライしてみた。3つを選んでみたものの、それらと推薦盤の10枚とは大きな差は感じていない。どれも僕の頬擦り盤であり、何回も何回も繰り返し聴いてきたアルバムである。多分、これからも、死ぬまで聴き続けるアルバムであると確信する。

選定の基準は「躍動感、緊密感、美しさ」。更に、一体感とか高揚感とか緊迫感が香辛料のようにスパイスされたら言うことはない!今回のアルバム、いずれも、アルバム全体として素晴らしく、この曲が!とは言い辛いのではあるが、敢えて、これもピック・アップしてみた。このピック・アップした曲でオリジナルCD-Rを作ってみたいと思ったからだ。

画像をクリックすると「JAZZ批評」にリンクします。赤字がリーダー。( )内はレーベル。

この1枚 TITLE / PERSONNEL ひとくちコメント & この1曲
<BEST 3>
"DAY IS DONE"
p:BRAD MEHLDAU
b:LARRY GRENADIER
ds:JEFF BALLARD
2005年スタジオ録音
(NONESUCH)
このアルバムは10年に1枚あるかないかの素晴らしいアルバムだ!たった2000円で味わえる至福の時を、どうぞ!」

I"NO MOON AT ALL" この曲の出だしの1音を聴けば、この曲の素晴らしさが実感できる。
"GLEDA"
p:STEFANO BOLLANI
b:JESPER BODILSEN
ds:MORTEN LUND
2004年スタジオ録音
(STUNT)
「心地よくて、心憎い、そして、心安らぐ1枚」
ピアノの天才としか言いようのないBOLLANIの傑作。その1音1音をジックリと味わって欲しい

H"GLEDA" ナチュラルで心安らぐ1曲。
"MOON WATER"
p:CARSTEN DAHL
b:ARILD ANDERSEN
ds:PATRICE HERAL
2003年スタジオ録音
(STUNT)
「動と静、緩と急、美と醜の織り成すコントラストが印象的なアルバム」
DAHLの底力を見せ付けた1枚

E"EOUTER ET JOUER T" 3者の緊密感、一体感、緊迫感が素晴らしい!
<推薦盤> (掲載日順)
"AUTUMN IN
NEW YORK"

p:NAJ PONK
b:PETR DVORSKY
ds:MARTIN SULC
2002年スタジオ録音
(CUBE CZECH)
「地味である。しかし、時間をかけてジックリと聴きこんでもらうとその良さがほんのりと分かってくるアルバムだ」
チェコ発の泥臭さと美しさを併せ持つ1枚。

B"IF I FEEL" JOHN LENNONの書いた美しくも心に沁みる曲。和音の美しさを堪能頂きたい。
"117 DITMAS AVENUE"
p:KASPER VILLAUME
b:JESPER BODILSEN
ds:JEFF TAIN WATTS
2004年スタジオ録音
(STUNT)
「北欧発のアグレッシブで男臭さのある硬派のジャズ。胸のすく1枚でもある」 3者のコンビネーションも素晴らしく、硬派ジャズ良し、バラード良しの傑作。

F"CARAVAN" 図太いベース、繊細にして豪胆な太鼓、そして、力強いピアノ。硬派ジャズを満喫頂きたい。
C"AUTUMN NOCTURNE"にも酔い痴れる!
"TRIO"
p:GUILLERMO ROMERO
b:HERNAN MERLO
ds:OSCAR GIUNTA
2001年スタジオ録音
(TURISMATICA)
「プラスアルファとマイナスアルファが交錯して微妙なバランスを保っている味わい深い1枚」
アルゼンチン発の洗練された味わいのある傑作。

A"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" スタンダード、オリジナルがバランスよく配置され、いずれも味わい深い。
"BLUE TRAIN"
p:CARSTEN DAHL
b:LENNART GINMAN
ds:FRANDS RIFBJERG
2004年スタジオ録音
(MARSHMALLOW)
「WYNTON KELLYが生きていた時代の空気を感じさせる1枚である」
"MOON WATER"とは180度対極のDAHLのハード・バップ。

スタンダードやジャズの巨人達の曲のオンパレードだが、どれも素晴らしい。G"WHAT'S NEW"やJ"DEAR OLD STOCKHOLM"の解釈が新鮮。
"HOPE"
p:CHRISTIAN JACOB
b:TERJE GEWELT
2002年スタジオ録音
(RESONANT)
「美しさ、躍動感、緊密感に溢れ、心潤し、心浮き立つデュオ・アルバム」

C"THE WATER IS WIDE" どの曲も素晴らしく1曲選ぶのは難しいが、敢えて選べばこの曲。心潤す演奏と心浮き立つ演奏がバランスよく配置されている。
"TIME ENOUGH"
p:DAG ARNESEN
b:TERJE GEWELT
ds:PAL THOWSEN
2004年スタジオ録音
(TAURAUS)
「全曲、ARNESENの手になる意欲的な作品集。やはり『良いテーマに、良いアドリブあり!』で、ジャズといえども『良いテーマ』がなくては楽しくない」

I"TIL JENS" あえて、唯一入っているソロ・ピアノ曲を選んだ。が、全10曲、甲乙点け難い。
"PAS DEL TEMPS"
p:MARTI VENTURA
b:MIQUEL CORDERO
ds:LUIS RIBALTA
2003年スタジオ録音
(SATCHMO JAZZ)
「南欧発、硬派のジャズ」
スペインのトリオ。ドラムスもベースもガチガチの硬派。

H"NATURE BOY" この曲やF"MY ONE AND ONLY LOVE"に加えて、VENTURAのオリジナルも面白い。土の匂いのするグループである。
<再発、復刻の推薦盤> (掲載日順)
"PLYS THE MUSIC OF HAROLD ARLEN"
p:TOMMY FLANAGAN
b:GEORGE MRAZ
ds:CONNIE KAY
1978年スタジオ録音
(DIW)
「ピアノ・トリオの原点。ドラムスが跳ね、ベースが唸り、ピアノが歌う!」
録音の良さと相俟って、古さを感じさせない素晴らしさ。

@"BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA"
死して、TOMMY FLANAGAN ここにあり!
1曲のみHELEN MERRILLがヴォーカルで参加。
"SCENERY"
p:福居 良
b:伝法 論
ds:福居 良則
1976年スタジオ録音
(SOLID)
「ヘッドホンを耳に当てたその瞬間に、このアルバムの虜になってしまった」
このアルバムも時代を超越した作品だ。

D"AUTUMN LEAVES"もけれんみがなくて良いが、ここは福居のオリジナルE"SCENERY"を挙げておこう。
"ALONE"
p:BILL EVANS
1968年スタジオ録音
(VERVE)
「漂うのは『そこはかとない』とか『何気ない』美しさなのだ」
奇を衒うことなく、一切の邪念もなく、正面からピアノに向き合ったEVANSのソロ・ピアノ。EVANSの真髄、ここにあり!

B"MIDNIGHT MOOD" 至福の時をたっぷりとどうぞ。

最初にも書いたが、今年のピアノ・トリオ・アルバムは豊作だった。敢えて、ベスト3を選んでみたが、ここにピックアップした13枚はいずれも僕の頬擦り盤である。ここに掲載するまでに1ヶ月近く聴き込んできたが、いずれも聴き飽きるということがない。
MEHLDAUの"DAY IS DONE"は試行錯誤と紆余曲折を経て、ついにここまで至ったかという感じ。今までのMEHLDAUの作品を凌駕した1枚。
昨年に続き、今年もBOLLANIの"GLEDA"を入れた。派手さはないが心安らぐ1枚でピアノの1音1音をジックリと味わって欲しい。
DAHLは"MOON WATER"と、その対極に位置するハード・バップ"BLUE TRAIN"の2枚。"MOON WATER"の方がやりたいことを成し遂げたという達成感みたいなものを感ずる。
今回の13枚の中にはSTUNT RECORDSのアルバムが3枚入っている。このレーベルには、ミュージシャンの好きなようにやらせるという制作ポリシーを感じる。また、今回の中にはライヴ盤が1枚もない。("HOPE"は一部、ライヴ録音)ライヴ盤のCD化は聴く側のテンションにギャップがあって、余程の素晴らしい演奏でない限りピックアップされることはないだろう。やはりライヴはライヴで聴くべきで、その一瞬で消え去っていくべきものだと思う。 (2005.12.11)

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