独断的JAZZ批評 514.

CHOLET-KANZIG-PAPAUX
この3人が奏でる音楽から生まれるプラスαが協和音の倍音ように増幅して聴こえる
"BEYOND THE CIRCLE"
JEAN-CHRISTOPHE CHOLET(p), HEIRI KANZIG(b), MARCEL PAPAUX(ds)
2007年12月 スタジオ録音 (CRISTAL : CR 135)


CHOLET-KANZIG-PAPAUXのトリオによる2007年録音盤。先に紹介した"UNDER THE WHALE"(JAZZ批評 512.)は遡ること2年の2005年の録音だ。結論から言うと、この2年の間に、このグループは更なる発展を遂げグルーヴからリリカルな演奏まで幅広くこなせるグループになった。

通常とは違って、このアルバムは次の曲から聴いていただきたい。

J"REK RAP" 先ずは3人の高速4ビートのこの演奏を聴いていただくと、彼らの技量がどれほど素晴らしいかということがわかるはずだ。刺激的なシンバリング、太いベースにのって贅肉を削ぎ落としたピアノ・プレイが突き刺さる。
K
"PABLO" 次に、このしっとりとしたバラード・プレイを聴けば、彼らの表現力の豊かさと奥深さが分かるはずだ。

この2曲を聴けばこのグループの凄さを認識できるはず。前アルバムからさらに深化したグループの熟成度合いがこの2曲に凝縮している。僕はこの2曲と刺激的な数曲を何回も何回も繰り返し聴いている。

@"BEYOND THE CIRCLE" 
A"CONTRE SENS" 
少々大げさなイントロで始まるこの曲では、続く哀愁を帯びたテーマをピアノとベースがユニゾンで奏でる。ここではテーマといい、アドリブといい、透明感があってすっきり系の味わいに力強いテンションを交えた、いかにも最近のヨーロピアン・テイストという感じで楽しませてくれる。
B"EXERCICE" 
C"MORGAN LYNN" 
D"SOMME SONG" しっとり系バラード。太くてアコースティックな木の音のするベースのソロが決まっている。心潤わす演奏に拍手。思わず、唸るね。
E"IN FLAGRANTI" 
重厚なベースとドラムスの多ビートに乗って、金属的なピアノが装飾を加える。ここでは敢えて、無機質な質感を演出しているのだろう。
F
"INDIAN'S STEP" グルーヴ感たっぷりのベースの定型パターンで始まり、透明感の強いピアノが絡んでいく。
G"MELOPEA" 
フリー・テンポによる3者のインタープレイ。重く沈んでいる。
H"MONTE GRONA" 
I"NO CONCERTATION" 
バラードによるインタープレイ。鋭いドラミングが緊張感を醸成する。

JEAN-CHRISTOPHE CHOLETはフランス人で1962年生まれ。現在、46歳と脂ののっている年齢だ。ベースのKANZIG、ドラムスのPAPAUXもこのグループにはなくてはならない存在で、この3人が奏でる音楽から生まれるプラスαが協和音の倍音ように増幅して聴こえる。
グルーヴな演奏からリリカルな演奏まで、硬軟取り揃えたスケールの大きさが頼もしい。
前作に比較して、より深化してアルバム全体の構成も統一感がある。あえて、どちらかを選ぶとすれば、キラー・チューンの
DFJKの入っているこのアルバムをお勧めしたい。
ということで、このアルバムも「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。これからも当分の間、このグループからは目を離せない。   (2008.11.23)  

参考サイト: http://www.myspace.com/choletjeanchristophe