後藤 浩二
ジャズを聴いていて本当に良かった!
"HOPE"
後藤 浩二(p), LARRY GRENADIER(b), HARVEY MASON(ds)
2006年12月 スタジオ録音 (VIDEOARTS : VACM 1304)
このアルバムは後藤浩二のメジャー・デビュー、第1弾だという。後藤浩二のアルバムはかつて2年半前に"AZUL"(JAZZ批評 277.)を紹介している。この時は、何気なく寄ったCDショップで試聴し、一気に気に入り購入したものだった。全てを自らのオリジナルで固め、ゆるぎない信念みたいなものを感じ、「楽しみなピアニストが現れた」と書いた。そうか、それは2年半も前のことだったのか!
実はこのアルバム"HOPE"の存在を僕は不覚にも知らなかった。今年の正月に松山のジャズ友が自ら選ぶ2007年のベスト・アルバムとして紹介してくれたアルバムだ。手元に届いたのは1月の初旬だった。アルバムのレビューは出来るだけ購入の順番に沿うようにしているので今になった。
聴けば聴くほど惚れ込むアルバムだ。すばらしいアルバムだ!心の琴線を刺激するアルバムだ!日本人のピアニストがまたまたやってくれました。このアルバムではベースにBRAD
MEHLDAUの盟友、はたまた、PAT METHENYの盟友、LARRY GRENADIERが参加している。このアルバムの成功はこの人の参加なくしてなかった。どちらかというと寡黙な類に属する二人が、その能力を最大限に発揮したアルバムと言っていいだろう。例えば、先に紹介したANTONIO
FARAO "WOMAN'S PERFUME"(JAZZ批評 463.)やGIOVANNI MIRABASSI "TERRA FURIOSA"(JAZZ批評 464.)と比較すると、その音符の数は半分以下にも満たないだろう。言うまでもないことだが、音楽とは奏でる音の数量で決まるものではないが、近年の饒舌型ピアニストが跋扈する中、希少価値があるとも言える。
で、ぞっこんに惚れ込んだ僕はCのレビューしか書かない。あとは皆さんの耳で確かめて欲しいと思うのだ。D、G、J以外は全て後藤浩二のオリジナルだ。その楽曲の良さも十分に堪能いただきたい。
@"LOVELY DAYS"
A"HORIZON"
B"48TH STREET"
C"HOPE" 心を打つ美しいテーマと見事なアンサンブル。美しいピアノ・タッチは後藤の命だ。このアルバムの成功はベースのLARRY
GRENADIERの参加にあると言っても過言ではない。中盤からのベース・ソロをとくとお聴きいただきたい。強いビート、一音一音を丁寧に紡いでいく誤魔化しのないソロに感動。高音部で一音一音を丁寧に弾く難しさは饒舌な速弾きの比ではない。正確な音程を維持することの難しさはフレットレス楽器をたしなんだ事のある人にはすぐわかるはずだ。そこに正面から挑戦したGRENADIERの技と度胸に感動。それを実現させたのは虚飾を排した後藤のピアノがあればこそ。素晴らしい!感動した!そして、歓喜!ジャズを聴いていて本当に良かった!何回も何回も繰り返し聴きたくなる。
D"LITTLE PIECE IN C FOR U"
E"UTSROI"
F"SOMEWHERE IN TIME"
G"LA BELLE DAME SANS REGRETS"
H"RIVER OF TEARS"
I"NOCTURNE NO. 1"
J"LOVE LETTER"
今までに"HOPE"というタイトルのアルバムを2枚紹介している。1枚がLARS
JANSSON "HOPE"(JAZZ批評 106.)であり、もう1枚がTERJE GEWELT "HOPE"(JAZZ批評 275.)である。いずれ劣らぬ名品であるので、機会があれば是非聴いてみて欲しい。やはり、タイトルが前向きだから人の心を打つことが出来るのだろうか?
このアルバムの素晴らしさもさることながら、先に紹介した"AZUL"も、今、聴き直してみるとこれに劣らず素晴らしいアルバムだ。このアルバム"HOPE"が気に入った方は併せて聴いてみて欲しい。けれんみのない演奏が堪能できるだろう。
元に戻るが、このアルバムは後藤浩二の渾身のアルバムと言っていいのだろう。特にそのオリジナルの楽曲の良さに感心させられた。素晴らしいピアニストと同時に素晴らしいコンポーザーでもある。そんな素晴らしい楽曲の数々に参加できたL.
GRENADIERもH. MASONも本望だったろう。
我が友人が2007年のベスト・アルバムに選んだだけのことはあると思った。「早起きは三文の徳」と言ったが、現代では「信頼できる情報を得ることは3文の徳」かもしれない。
感謝を込めながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2008.02.05)
.