KENNY WERNER / JENS SONDERGAARD
日頃の緊張を和らげながら、品の良い大人のコミュニケーションをエンジョイして欲しい
"A TIME FOR LOVE"
JENS SONDERGAARD(as, bs on @, clarinet on C), KENNY WERNER(p)
2008年4月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS : STUCD 08092)

ワン・ホーンとピアノのデュオで印象に残るアルバムというとSTAN GETZ(ts)とKENNY BARRONの"PEOPLE TIME"(ジャズ批評 231.)、GEORGE ROBERT(as,ss)とKENNY BARRONの"PEACE"(JAZZ批評 147.)、TOM HARRELL(tp)とDADO MORONIの"HUMANITY"JAZZ批評 546.)あたりがスーッと浮かんでくる。いずれも最小限のユニットながら濃密で奥深い演奏を楽しむことが出来た。そっと寄り添いながら、楽器で会話している。

サックス奏者のSONDERGAARDはアルバムの中で3つの楽器を使い分けている。6曲までをアルトサックスで、残りの2曲をバリトン・サックスとクラリネットを吹いている。この使い分けはこのアルバムの幅を広げている。クラリネットの艶やかで軽い音色も良いし、バリトンの太くて柔らかな音色も出色だ。いずれの楽器もE♭管なので出来る技だろう。


@"BUT BEAUTIFUL" 
JIMMY VAN HEUSENの書いた佳曲。この曲だけはバリトンを吹いている。先ずは聴いてみて欲しい。聴けば分かる。生々しいバリトンの音色に痺れる1曲。寄り添うWERNERのピアノがいいねえ。ジャズって最高!と思える瞬間でもある。
A"'ROUND MIDNIGHT" 以降、多くを語る必要はあるまい。
B"A TIME FOR LOVE" 
C"LOVER MAN" 
この曲ではクラリネット。
D"OVER THE RAINBOW" 
E"WILLOW WEEP FOR ME" 
F"DARN THAT DREAM" 
これもJIMMY VAN HEUSENの書いた曲。良いテーマに良いアドリブあり!
G"EVERYTHING HAPPENS TO ME" 

実は、KENNY WERNERがこんなにも素晴らしいピアニストとは露ほども思っていなかった。以前紹介した"A DELICATE BALANCE"(JAZZ批評 98.)ではDAVE HOLLANDやJACK DEJOHNETTEという役者を揃えながら、その出来映えには正直、がっかりしたものだ。しかし、このアルバムはその出来からは予想もつかないほど素晴らしい仕上がりだ。

STUNT RECORDSというのはなかなか良いアルバムを提供してくれる。僕がヨーロッパの若手ピアニストの3羽ガラスとしてあげるSTEFANO BOLLANI(JAZZ批評 210.& 264.)、CARSTEN DAHL(JAZZ批評 246.)、KASPER VILLAUME(JAZZ批評 243.& 415.)の3人はいずれもこのレーベルより素晴らしいアルバムを世に出している。とりわけ、その印象が強いので、今回のアルバムも聴く前から強い期待感があった。
いずれもミュージシャンが自分たちのやりたいようにやったアルバム作りという印象が強い。そして、このアルバムもその期待に見事応えてくれている。
このアルバムはスタンダード・ナンバーばかりのバラード集である。聞き古されたスタンダードばかりであるが、このデュオはとても新鮮で奥ゆかしい。
僕はデュオというフォーマットが好きだ。良いデュオ・アルバムではトリオ以上の緊密感が味わえる。それが素晴らしい。
「明日は休みだ!秋の夜長をウィスキーでも飲みながら・・・」なんていう時に打ってつけだ。日頃の緊張を和らげながら、品の良い大人のコミュニケーションをエンジョイして欲しいと思いつつ「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2008.10.27)  



.

独断的JAZZ批評 509.