独断的JAZZ批評 498.

OLIVIA TRUMMER
緊迫感満載のインタープレイが素晴らしい
ピアノ、ベース、ドラムスにペットが有機的に結びつきアンサンブルの素晴らしさを体現させてくれる
"WESTWIND"
OLIVIA TRUMMER(p), JOEL LOCHER(b), BODEK JANKE(ds, percussion), MATHIAS SCHRIEFL(tp, fl-horn)
2007年12月 スタジオ録音 (NEU KLANG : NCD4021)

このジャケットはCD盤ながら迫力があるなあ!このLP盤が出たらきっと慄くね。大きな瞳と賢そうな眉。ぽってりとした唇がセクシーだ。一体、こんな美女がどんなジャズを聴かせてくれるというのだろうか?
SEBASTIAN STEFFANの"LOOK AT THE DOORKEEPER"(JAZZ批評 485.)の最後に僕は書いた。「しばらくはドイツのピアノ・トリオから目が離せない」と。少し遡って、"SKAGERRAK"(JAZZ批評 473.)や"NORR"(JAZZ批評 474.)をリリースしたMARTIN TINGVALLのトリオもドイツのグループだった。ドイツのグループに共通しているのは透明感のある演奏の中に息づく躍動感とグルーヴ感が底流にあることだ。

@"ES GEHT LOS" 
ピアノ、ベース、ドラムスの3者にそれぞれの持ち味があり、意思疎通も申し分ない。それぞれの楽器がいい音出している。
A"WESTWIND" 先ず、テーマがいいね。トリオに絡むミュートのペットを吹くSCHRIEFLが素晴らしい。続くピアノのタッチのよさとセンスの良いフレーズ、未だ23歳だなんて俄かには信じがたい。さらにLOCHERのよく歌うベース・ソロを経てテーマに戻る。いい演奏だ。
B"ICE" ひょっとするとこの"ICE"とは「ドイツ版新幹線」を指しているのかもしれない。すなわち"Inter City Express"の略で、この5月にドイツに行ったときに乗った。快適な高速列車だった。演奏から受けるイメージはそれだ。演奏も躍動し疾走する。ハード・ドライヴのピアノの演奏で幕を開ける。続くペットの音色もグルーヴィだ。緊迫感満載のインタープレイが素晴らしい。ピアノ、ベース、ドラムスにペットが有機的に結びつきアンサンブルの素晴らしさを体現させてくれる。このアルバムの素晴らしさはこの曲に凝縮している。この1曲のためにこのアルバムを購入したとしても損はないだろうと思わせる6分と57秒。いやあ、痺れるね!

C
"STERNKLAR WAR DIE NACHT" 一転してしっとりとしたバラード。ここではSCHRIEFLはフリューゲルホーンに持ち替える。TRUMMERの絡み方もいいね。4者全員がよく歌っている。
D"MOZARTLICHKEIT" 
モーツァルトのトルコ行進曲で始まる、モーツァルト・オムニバス。ジャズとして躍動しており、TRUMMERのセンスのよさとアレンジの上手さが光る。後半部にはメヌエットのメロディを加えたしっとりとした演奏へ移行する。
E"DEIN BRIEF" ピアノ・ソロ。音色がとてもいい。
F"WINDGETRAGEN" 
G"TAGTRAUM" 
ゆったりとした癒し系の物憂げな演奏。こういう演奏にもセンスのよさが光る。

@
DGがピアノ・トリオでABCFにMATHIAS SCHRIEFLが参加している。Eがピアノ・ソロ。アルバム全体のバランスもよく、全編を通して楽しめる。
このOLIVIA TRUMMERは1985年生まれというから、未だ23歳という若さだ。昔は、「天は二物を与えず」と言ったものだが、最近は二物に限らず、三物まで与えてしまうらしい。即ち、美人で性格が良くて(これは僕の想像だが)、さらに才能があるという具合だ。
またまたドイツの魅力的なグループが出てきた。たとえ、こんな美人でなかったとしても、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加したことは間違いない。   (2008.08.25)

試聴サイト: http://www.myspace.com/oliviatrummer



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