法人税・損金とは
堀内勤志税理士事務所
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掲載(更新)日:2016年5月21日
費用・損失と損金の違い
企業会計上は費用・損失として処理されるものが、法人の課税所得の計算上は企業会計上の当期利益額又は当期損失額に加減算することとなるものについて、中小企業のうち最も多い「同族会社」に関する代表的なものを挙げます。
この当期利益額または当期損失額に加減算することを「損金に算入しない(損金不算入)」「損金に算入する(損金算入)」といいます。
 また「損金経理」という処理があります。これは、「確定した決算」において、損金に算入していなければ申告調整で損金算入することは認められないというものです。
 なお、下記の掲載項目についてもそうですが、法人税法の規定では、「欠損金の繰越控除」を除き、一定の要件を満たす又は該当する場合には「損金に算入する」、一定の要件を満たさない又は該当しない場合には「不算入とする」という規定が多いです。
項目
  1. 役員・使用人の給与
1 使用人
 使用人に対する給与(給料・賞与・退職給与)は、企業会計上費用となるものであり、法人税法上も原則としてその全額が損金の額に算入されます。また税法では、現金で支給されるもの以外に実質的にその等に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらす利益(「経済的利益」という)その他の利益も給与等も損金に算入されます。
 ただし使用人であっても、法人の役員と特殊の関係にある使用人(特殊関係使用人)に対して支給する給与の額のうち、不相当に高額な部分の金額については、損金の額に算入しないこと(損金不算入)とされています。
  1. 特殊関係使用人とは
    ① 役員の親族(親族とは配偶者、6親等以内の血族及び3親等の婚族をいいます)
    ② 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者
    ③ 上記①及び②以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
    具体的には、役員から給付を受ける金銭その他の財産又は給付を受けた金銭その他の財産の運用によって生ずる収入を生活費に充てている者をいいます。
    ④ ②及び③に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
  2. 不相当に高額な部分の金額とは
     その使用人に対して支給した給与の額が、当該使用人の職務の内容、その法人の収益及び他の使用人 に対する給与の支給の状況、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの使用人 に対する給与の支給の状況等に照らし、当該使用人の職務に対する対価として相当であると認められる金額(退職給与にあっては、その使用人に対して支給した退職給与の額が、 当該使用人のその法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した使用人に対する退職給与として相当であると認められる金額)を超える場合におけるその超える部分の金額とされています。
2 役員
 役員の給与も使用人の給与と同様会計上は費用となりますが、法人税法では役員は会社の委任(会社法330条)を受けてその法人の経営に従事する者でことから、職務執行の対価として相当とされる金額を超える部分は損金の額に算入しないこと(損金不算入)としています。 役員には、法人税法上の「みなし役員」を含みます。
  1. 役員の給与のうち損金算入されるもの
    ① 定期同額給与
     支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与、その他これに準ずる給与(経済的利益)。
    ② 事前確定届出給与
     その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしているもの。 したがって、あらかじめ支給額や支給時期が確定しているものについては毎月の定期同額の給与のほかに6月及び12月などのように特定の月に増額支給するものであっても損金の額に算入されることになります。
    ③ 利益連動給与・・・これは同族会社には認められていませんので、省略します。
  2. 役員の給与のうち損金算入されないもの(役員退職給与を除く)
    ① 上記以外の給与(経済的利益
    ② 不相当に高額な部分の金額
     次の「実質基準」及び「形式基準」によりそれぞれ不相当に高額な部分の金額を算出し、いずれか多い金額が損金の額に算入されない金額となります。
    1. 役員の職務内容、法人の収益伏況、使用人に対する給与の支給状況、同業種同規模法人の役員給与の支給状況等に照らし、不相当に高額な湯合には、その高額な部分の金額(実質基準)
    2. 法人の定款や株主総会で定めた金額の範囲を超えて給与を支給していた場合の、その超える部分の金額(形式基準)
  3. 役員退職給与
     役員の退職給与については、役員の退職の事実により支払われる一切の給与をいいますが、退職給与のうち、当該役員の業務に従事した期間や退職の事情、同業種同規模法人の役員退職金の支給状況等に照らし、不相当に高額な場合には、その高額であると認められる部分の額は損金 の額に算入されません。
  4. 使用人兼務役員に対する賞与
     使用人としての職務を有する役員に対して支給する使用人としての職務に対する賞与については、他の使用人の賞与の支給時期と同時期に支給し、かつ、他の職務が類似する使用人の賞与の額と比較して適正な額である場合には損金に算入する。
  5. 隠蔽又は仮装により支給する役員給与
     法人が、事実を隠ぺいし、又は仮装して経理することによりその役員に対して支給する給与の額は、企業会計上は給与以外の勘定科目になっていますいますが、費用・損失に変わりはありませんので、費用・損失として処理になりますが、法人税法では当期利益又は当期損失に加算します(損金不算入)。
  1. 交際費等
 交際費は、販売促進等事業のために支出し、その使途が明らかである限り、企業会計上その全額が費用となるべきものです。 しかし、その支出を抑制して冗費の節約を図るという政策上の目的から交際費等の損金不算入としています(平成30年3月31日開始事業年度まで延長。但し、中小企業の場合は平成25年4月1日以後開始事業年度から800万円までは損金算入。なお、600万円のうち定額控除限度額に達するまでの金額の100分の10相当額の損金不算入とする措置の平成25年3月31日以前開始事業年度は、従前とおりです。また26年改正で一部改正になりました。 詳しくはこちら)。
  1. 交際費とは
    税法上の交際費等の範囲は、社会通念上の概念より幅広く、交際費、接待費、機密費、 その他の費用で、法人がその得意先や仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。その他事業に関係ある者には、従業員も含まれます。
    1. 交際費その他の費用とは、法人が交際費等の科目で経理したかどうかを問わないこと(他科目で経理した場合には、仮装隠蔽と判断される場合もあります)。
    2. 接待、贈答等の行為とは、もてなし、やりとり等の性質を待つすべての行為をいうこと。
    3. 事業に関係のある者等とは、直接その事業に関係ある者だけでなく、間接にその法人と関係のある者やその法人の役員、使用人、株主等も含まれること
    4. 支出するとは、支出の事実があったことであり、接待するなどの行為があったことをいいます。したがって、仮払又は未払等の経理をしていなくともその行為があった事業年度の交際費等に含まれます。
  2. 交際費等から除かれる費用
  1. 減価償却費
  1. 固定資産
     法人が事業に使用する建物、機械等の固定資産(減価償却資産)を取得するために支出した費用の額(取得費)は、その固定資産は時の経過及び使用によって物理的に劣化し又は経済的に減少することから 一定の方法(定額法・定率法など)により使用可能期間(耐用年数)の各事業年度ごとに、かつ、継続的に費用化することになります。企業会計では、耐用年数を合理的に見積り費用計上することになります。
      しかし、税法ではその取得をした日及び法人が選択した償却の方法を基礎として、減価償却費の計算要素である① 減価償却の基礎となる取得価額、② 使用可能期間である耐用年数(耐用年数省令で規定)、③ 償却方法等の基本的事項のすべてを規定し、法定の範囲内で減価償却費の損金算入を行うこととしています。
     よって、法定計算した償却費より法人が費用計上した償却費が過大の場合、その超過額は当期利益額又は当期損失額に減価償却超過額として加算することになります。なお、不足額が出た場合は減算しません。なぜなら、「償却費として損金経理した額(法人が費用として計上した額)」が限度とされるからです。
  2. 繰延資産  企業会計上の繰延資産は随時償却し費用計上されますが、税法でもこの随時償却は認めています。しかし、税法では法人の支出する費用のうち支出効果が1年以上ものを繰延資産とし、償却年数も規定しています。
     よって、企業会計上は費用計上した場合は、税法の規定により 計算した償却費との差額(超過額)は、繰延資産償却超過額として当期利益額または当期損失額に加算することになります。なお、償却不足額が生じた場合には、「損金として経理した金額」のうち償却限度額に達するまでの金額が限度になりますので損金に算入はできません。
  1. 寄附金
 寄附金は、企業会計上は費用となりますが、法人税法では特定の寄附を除き一定限度額を超える部分は当期利益額又は当期損失額に加算します。
  1. 租税公課
 企業会計上当期利益額又は当期損失額の計算に当って税引前当期利益額等から控除されていますが、法人税法上損金に算入されないものがあります。
  1. 損金に算入されない租税公課
    • 法人税、都道府県民税及び市町村民税
    • 各種加算税及び各種加算金、延滞税及び延滞金(地方税の納期限の延長に係る延滞金は除きます。)並びに過怠税
    • 罰金及び科料(外国又は外国の地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含みます。)並びに過料
    • 法人税額から控除する所得税及び外国法人税
  2. 損金に算入される公租公課
    • 事業税、事業所税、消費税、印紙税、酒税その他の個別間接税
    • 不動産取得税、自動車税、固定資産税、都市計画税その他の地方税
    • 法人税から控除しない所得税、利子税、納期限延長の場合の延滞金
  1. 資産の評価損
 法人の所有する資産が災害による著しい損傷その他特別の事実が生じた場合などのほかは、資産の評価損は原則として損金の額に算入は認められません。よって、その帳簿価額の評価換えをした日の属する事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上、その帳簿価額の減額はなかったものとみなされます。
  1. 引当金・準備金
 企業会計上は、将来企業の財政に不利な影響をおよぼす可能性がある場合にそなえることを求めています。 このため将来の費用・損失に備え、これをあらかじめ見積もって各会計期間に割り当て費用又は損失として引当計上する慣行があります。法人税法も、この会計慣行を考慮し、別段の定めによって損金経理を条件に引当金の損金算入が認められています。現在認められている引当金は、貸倒引当金と返品調整引当金の2つで、これ以外の引当金は損金不算入になりますし、法人税法で規定する繰り入れ限度額を超過した場合にも超過額は損金不算入になります。
 また将来の費用・損失に備えるための手段としては準備金の積立という方法もあります。法人税法等も別段の定めにより準備金の積立も認めています(法人税法等で認められている準備金の種類は省略します)。準備金の積立ては損金経理によるほか、剰余金の処分によって積み立てることもできます。剰余金の処分によった場合は、その積み立てた金額は所得金額計算上、所得金額から減算(損金算入)することになります。また、法人税法等の規定する積立限度額を超えた積立額は、損金不算入となります。ただし、準備金の損金算入は、青色申告法人に限られたいます。
損金経理」とは、会社がその確定した決算において費用又は損失として経理していることをいいます。よって、申告調整での損金算入はできないということです。
  1. 繰越欠損金控除
 企業会計では、欠損金額は純資産のマイナス項目として存続する限り財政状況に影響をあたえますが、法人税ではこの繰越に制限を設けています。
欠損金が繰り越せる条件は、青色申告法人で連続して法人税確定申告を提出している法人は、税務計算上の欠損金について7年間(平成20年4月1日以後生じたものは9年間)の繰越控除ができるというものです。
なお、繰越欠損金がある場合は必ず行わなければならない申告調整事項です。もし、この控除の適用があるのに行っていなければ、税務署長は職権で更正することになります。
また平成20年4月1日以後欠損金が生じた事業年度については、9年間の帳簿書類の保存が必要です。また、24年4月1日以後の欠損金が生じた事業年度の「更正の請求期間」及び「増額更正の期間」は9年になります。それ以前は7年です。
平成29年4月1日以後開始する事業年度からは10年間となります。(平成27年改正)
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