消費税の課税の仕組み
堀内勤志税理士事務所
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掲載(更新)日:平成27年12月24日
消費税の仕組み
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引に課税されます。事業を営んでいる場合(「事業者」といいます)には、消費税の申告・納税が発生します。
「事業として」とは
対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいいます。(消基通5-1-1)
  • 個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合の当該譲渡は、「事業として」には該当しません。
  • 法人が行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、その全てが、「事業として」に該当します。
対価を得て行われるとは
資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に対して反対給付を受け取ることとされています。
○ よって交換、代物弁済、現物出資などのように金銭の支払を伴わない資産の引渡しでも、何らかの反対給付があるものは、対価を得て行われる取引になりますので、課税の対象となります。
また、負担付き贈与については、その負担部分を対価として行われる課税取引になります。
○ しかし、単なる贈与や寄附金、補助金、損害賠償金などは、課税対象にはなりません。
無償での試供品、見本品の提供やサービス品の提供なども課税対象にはなりません。
○ 個人事業者が自分が販売する商品などを家庭で使用したり消費した場合(「自家消費」といいます)や、法人が自社製品などをその役員に贈与した場合には、対価を得て行われたものとみなされ、消費税の課税の対象となります。
納税義務がある法人・個人事業者は
以下の該当する場合には、納税義務が生じます。
  1. その課税期間に係る基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1千万円超える場合。(事業年度が1年に満たない法人の場合は、1年に換算して判定します。また、基準期間が免税事業者であった場合は消費税及び地方消費税を含んだところで判定します。)
  2. 新たに会社を設立し基準期間がない法人について、その事業年度の開始の日の資本金等が1,000万円以上の場合
  3. 相続によって相続人が被相続人の事業を承継した年において、基準期間となる前々年の被相続人の課税売上高が1千万円を超えている場合
  4. 相続によって相続人が被相続人の事業を承継した年の翌年及び翌々年において、被相続人のその基準期間の課税売上高と相続人のその基準期間の課税売上高の合計額が1千万円を超える場合
  5. 平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、個人事業者はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間(「特定期間」といいます)の 課税売上高が1,000万円を超えた場合。なお、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。 (23年改正)
  6. 消費税課税事業者選択を選択した場合(「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要)
     この届出書を提出した場合は、事業廃止の場合を除き、原則として、課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることはできません。
     さらに、この場合、22年4月1日以後に選択し、その届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日から2年を経過するまでの間に開始した各課税期間(簡易課税制度の適用を受ける課税期間は除きます。)中に国内において調整対象固定資産の課税仕入れや調整対象固定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取り(「調整対象固定資産の仕入れ等」)を行った場合には、その調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ消費税課税事業者選択不適用届出書を提出することができず、簡易課税制度を選択することもできません。
  7. 調整対象固定資産」とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で、一の取引単位の価額(消費税及び地方消費税に相当する額を除いた金額)が100万円以上のものをいいます。
  8. 事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、 当該高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度を適用しないことになりました(平成28年3月改正;追加)。
     また、自己建設高額特定資産については、当該自己建設高額特定資産の建設等に要した仕入れ等の支払対価の額(事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間において行った原材料費及び経費に係るものに限り、消費税に相当する額を除きます。)の累計額が1,000万円以上となった日の属する課税期間の翌課税期間から、当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度を適用しないこととされました(平成28年3月改正;追加)。
  9. 高額特定資産」とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいいます。
     「自己建設高額特定資産」とは、他の者との契約に基づき、又はその事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として、自ら建設等をした高額特定資産をいいます。
課税売上げ・課税仕入れ
消費税は、原則として、国内において「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け及び役務の提供」並びに「輸入取引」を課税の対象としています。
 しかし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、非課税とする取引(非課税取引)が定められています。例えば、住宅の貸付、土地、有価証券、商品券などの譲渡、預貯金の利子や社会保険医療給付などです。
 また、給料のように「事業として行う資産の譲渡等の対価に当たらないもの」や「対価の支払がないもの」などの不課税取引があります。例えば、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などです。
さらに、課税されない免税取引があります。例えば、商品の輸出や国際輸送、外国にある事業者に対するサービスの提供などのいわゆる輸出類似取引などです。
  1. 課税売上げとは・・・商品の売上げのほか、機械や建物等の事業用資産の売却など事業のための資産の譲渡、貸付け、サービスの提供をいいます。
     ただし、土地の売却や貸付けなどの非課税取引や受取保険金などの不課税取引は含まれません。
  2. 課税仕入れとは・・・商品などの棚卸資産の仕入れ、機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借、原材料や事務用品の購入、運送等のサービスの購入、そのほか事業のための購入などをいいます。
     土地の購入や賃借などの非課税取引、給料等の不課税取引は含みません。
納付税額の計算
課税期間は、原則として、個人の場合は1月1日から12月31日までの1年間で、法人の場合は事業年度です。
 ただし特例として、届出により課税期間を3ヶ月又は1ヶ月に短縮することも可能です。
 なお、この場合の「課税売上高」は、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます)に相当する額を含まない税抜きの価額です。
  1. 一般課税の場合
    1. 消費税の計算(税率は4%、平成26年4月1日以降は6.3%、平成31年10月1日(変更)以降は7.8%)
    2. 消費税の納付額=課税売上げに係る消費税額-課税仕入れに係る消費税額
      「課税仕入れに係る消費税額」を「仕入控除税額」といいます。
    3. 地方消費税の計算
    4. 地方消費税の納付税額は消費税の納付税額の25%(平成26年4月1日以降は消費税額の17/63,、平成31年10月1日(変更)以降は22/78)です。
    上記計算式の「仕入控除税額」の計算については、「課税売上割合」による95%ルールがあります。
    この適用により求まられた控除税額を、「控除対象仕入税額」といいます。
    ☞ 平成29年4月1日(変更)の消費税率等が10%とされるのに伴い、軽減税率制度を採り入れるよう28年税制改正に盛り込まれました。
    ※ なお、一般課税の場合の記帳は、消費税法の規定により記帳しなければなりません。この条件を充たしていませんと仕入控除税額が差引けず、課税売上に係る消費税だけ納付することになります。これは、既に最高裁で判例が確定しています。
  2. 簡易課税を選択した場合
その課税期間の前々年又は前々事業年度(基準期間)の課税売上高が5千万円以下である場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、「一般課税」によらず控除対象仕入税額を営んでいる事業の内容により、課税売上にみなし控除率を乗じて計算し、納税額を計算できるというものです。
 ただし課税事業年度開始日前まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)に事前の届出をしなければなりません。また、2年間は取り止めることはできません。
参考資料
個人事業者等の消費税率等5%の消費税計算書(Excle形式
個人事業者等の消費税率等が5%、8%が混在する場合の消費税計算書(Excle形式
個人事業者等の消費税率等が8%の場合の消費税計算書(Excle形式
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