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  •  2016/4/20に三菱自動車より燃費試験の不正が発覚したとの発表がありました。軽自動車で日産と提携しており、日産側で次機種の開発をするため、既存の車種について計測したところ、公表値との乖離が大きかった事が発端となりました。日産は三菱自へ調査を依頼、三菱自の内部調査で問題が発覚したとの事です。結局、三菱自の燃費の計測をする部門で、相当前から不正が行われていたとの事です。燃費の計測に関する問題は、ほぼ全車種に及ぶ可能性があるとの事です。

     技術者の私からすると、この事件には、3つの問題があると思いました。
     一つは、”物作りの魂”の欠落です。結果として国の規定を守らない、コンプライアンスに関するマインドが低い等モラルの低下が文化として根付いてしまっているようです。

     二つ目は、経営陣の無茶振りです。別の記事をみると、どうも設計予算が他社に比べ、相当少なかったようです。その割には、他社に見劣りしない燃費性能を要求されていたとの事です。技術はレベルの差が歴然と現れる世界です。軽自動車の世界では燃費に関して三菱自の技術レベルが低かったそうです。燃費が得意な会社が掛けた設計予算に対して、それより技術レベルが低い場合は、数倍の設計予算が必要となります。それでも掛かった金に見合った結果が出るかは疑問です。何故なら技術の世界では奇跡が起きないからです。技術レベルに応じた結果が出る。ただそれだけなのです。

     三つめは、燃費の規格が現実的で無いと指摘されているものです。私もマーチのK11にいまだに乗っています。カタログ性能は、リッター17Kmだったと思います。高速で大阪の吹田と町田間で平均時速80Km(というか、その辺で一杯です(^^!)で走ると、20L(満タン法)で走ります。つまり高速では、カタログ性能を大きく超えます。恐らく70kmで走るともっと出る可能性があるのですが。。
    ところが、街中は11Km〜13Km前後です。この車に乗り始めた頃は、カタログとの乖離に相当深いショックを受けました(^^!。街中と高速では条件が違うから、当然なのですが。。
    車に乗っている人との会話で出てくる、街中の燃費って、ある程度の誤差の範囲があるもののカタログよりは結構信頼度が高い値が出てきます。カタログ性能としては、高速、街中と2つの性能を示せばよいのではないかと思います。
    例えばマーチK11で街中は12Kmプラスマイナス10%という数字を出すのはそれほど、難しい話ではないと思います。
    話がそれましたが、結局、カタログ値が現実と乖離している事が、規格そのものを軽視する姿勢を誘発したのではないか?と考えます。

    ただ、三菱自に関しては、”物作りの魂”を感じ取れず、車の設計が単なる作業になっているように見えます。モラルの低下は論外で、ぶっちゃけ、物作りの会社としては終わっている様に感じます。 ”経営陣の無茶振り””変な規格”等が”物作りの魂”を折れさせた可能性は否めませんが、それでも同情する気にはなれないです。設計に関する限り、”事ここに至っては”という状況が目前に迫っている様に思います。

    設計はさておき、製造に関しては、報道を見る限り、正常に機能しているようにみえます。設計は、他社が行い、製造を請け負うという形は出来るかもしれません。製造工場として生き残りを計る道があるのなら、それは重要な選択肢となるのではないでしょうか。

    失った信頼を取り戻すには尋常じゃない努力が必要です。しかも、三菱自は今回が初めてではないです。何度も信頼を裏切った企業に対して、世の中はそんなに甘くないです。これから5年間は相当に厳しい時が続くと思います。

    一方同じ三菱グループでは、MRJという航空機を作っています。こちらからは物作りのマインドが見えていて、三菱自と対照的です。企業は黒字を出してなんぼですが、投資を恐れていては、次世代の製品につながらなくなり、いつかは競争で敗北してしまいます。頑張ってほしいと思います。
     経営陣の無茶振りに関しては、結果として不正を招く切っ掛けであるのは間違いないと思います。三菱自の他東芝も同様の状況に陥りました。対策として経営陣を監視する機関や部署を創設するのもありと思います。それは経営陣から独立した権限が必要になりますが、知恵を絞れば難しい話ではないと思います。信頼を取り戻す点を考えるのなら、これは必須ではないでしょうか。
     政府の規格に関しては、別の目的があるかもしれませんし変えるのは難しいかも知れません。それなら自動車協会等で、カタログスペック用の規格を新たに定義して、実際とさほど変わらない燃費(±10%前後の誤差は認める等)をカタログに出すのが良いのではないでしょうか。
    ところで2015年から、大手企業の不正がいくつも明るみになっています。不正はいつかは表に出てくることが証明された年となりました。日本企業の売りはコンプライアンスに関する意識の高さなのですから、それはきちっと守っていって欲しいです。それは日本という国の企業に付加された価値であり、これから未来永劫に至るまで日本企業を守り続けるでしょう。
    (2016/05/04 記)

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