鴻海は台湾の企業です。私は技術者として、台湾含めいくつかの海外の企業と関わった事がありました。正直、海外の企業の設計のスピード感は早く、日本企業と段違いです。企業は利益を出して当たり前と考えており、特に利益と相反する仕事はしない傾向が強いです。つまり現場では成果主義です。これは日本以外では割と普通なのではと思います。
一方、シャープは日本企業であり、じっくり設計を行うタイプです。日本企業の多くに見られる傾向です。
この差は結構大きく、同じ製品を設計するにしても、予算に大きく差が出てきます。鴻海が、そのような日本の特質を話には聞いていたにも関わらず、実際蓋を開けてみれば???という状況に陥るだろう事は予測出来ます。シャープも海外企業と関わってきたのなら、海外企業のそのような傾向を知らない筈は無いと思います。
一方シャープの狙いは、社員の雇用を保証して欲しいだけに見えます。ここで理解に苦しむのが、シャープの対応でした。
一般的な海外の企業なら、成果が出ない社員はすぐに解雇します。ネットでは、シャープでは有能な社員が続々と退社しているという話を見かけます。事実かどうかは分かりませんが、それは有りそうな話と思っています。残っている人が果たして鴻海の目に適う人材なのでしょうか(全てがそういう方だと思っていませんが)。。
私には、鴻海が経営主導権を握った後に待っているのは、厳しいリストラか、そうでなければ給料の相当な減額くらいしか思いつきません。本当に鴻海が欲しいのは、特許の数々や設計資産ではないか?と考えています。人材にはあまり期待していないのではと思います。
2000年代前半にシリコンバレーで大手による優秀な会社の買収が頻繁にありましたが、買った後に残ったのは"箱(社屋や資産)だけだった。つまり人材は残らなかった。"という話をよく耳にしました。これは常識の範疇にはいるので、鴻海も知っている筈です。だから欲しいのは人材以外の何かである可能性が高いと考えています。
かといって、”事ここに至っては”という状況では、シャープ側に打てる手が無いと思います。それでもシャープの狙いが雇用の保証であるなら、産業革新機構しか、交渉相手が無かったと思います。
実はシャープさんと関わった時の事ですが、一つ違和感を持ったことがあります。
当時は、日本どこでもリストラが進んでおり、同様に発注して頂いた他の数社からは、予算は増やさないけど要求を出してくるという状況で、請ける側も金銭的には厳しい状況でした。ところがシャープさんだけは、設計費を結構だしてくれていたようです。
実は、この時はシャープさんから設計費の減額を要求すれば100%通る状態だったのではと思います。それも相当な額を減額出来たと思います。 だけど、シャープさんはそうしなかった。実のところ、予算に関する詳細までは知りません。ですが、シャープから請けたプロジェクト側では多くの人材を掛けれた事、一方、他社からの受注業務との対応(予算減の話あり)から、シャープからの予算減の要求が無かったと推測しています。客観的に見てシャープさんの設計予算に関する交渉が、相当甘いという印象を当時受けました。
そのような文化のシャープが海千山千の鴻海との交渉が可能でしょうか。。結構気にはなっていました。
ところで、産業革新機構の話が出ています。正直なところ、シャープの再生が可能か?と言われると微妙です。シャープの特許や設計資産だけを守る事に特化すれば目先はありかと思いますが、それらの資産は10年もすると陳腐化します。で人材を伸ばすかといえば、それも、今のネットで流布される噂の内容から考えると微妙なようです。
白物家電に関しては、産業革新機構の元、東芝の白物家電との統合は、ありだったと思います。東芝の白物は売却してしまったとの事でこの選択肢が無くなってしまいましたが。。個人的には非常に残念だと思っています。。
液晶は?といえば、ここだけは切り売りしても良かったかもしれません。現在の状況では、恐らく、シャープ側に交渉出来るカードがほとんどないと思いますので、厳しい話になりますが、むしろ特許や技術資産に具体的に金額をつけて売却して、社員の退職金を手厚くした方がよいのではないかと思います。”事ここに至っては”という状況ですから。。
今回のシャープの件で色々と考えさせられました。私自身がサラリーマンで無くなった事、および、投資の世界にも踏み込んだ事がきっかけで色々見えてくるようになりました。今思えばシャープが最もテレビが売れていたあの時期に、テレビ事業の縮小を行えば、次のオリンピックまでは、なんとかなったと思います。これはシャープだけの問題ではないと思います。最近、日本企業が生き残る方法について考えています。まぁ大した内容ではないですが。。目先の売上・利益では無く、まずは10年を生き残る戦略を立てるのが、日本企業の生き残る道と考えます。これらについては、又、別途記事にしたいと思います。
(2016/03/26 記)
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