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vol 43:異常気象
こんなに良い天気なのに雷が鳴り響く。
雨も降ってへんのに。
最近のニュースでは異常気象のニュースに、放火の話題ばっかし。
地球が呻き声でもあげてるんやろか。
「戌尾くん?。」
何人の人がどれくらいこの現象の本意を知ってるんやろ?。
「戌尾くん?。」
窓側の席でずっと空を眺めてたんやけど、
雷が気になってもうて、
「ちょっと、戌尾くん何やってるわけ?。」
「へ?。」
今は古文の授業中で、大樹の教科。
気がつけば俺は椅子から立って窓から頭出して空見てた。
昼休みに屋上でランチ。
購買で買ったパンを食べながら空を見上げる。
「カン、2回も呼んだんだよ?。最近、空ばっかり見て・・・。
天文学にでも興味持ちだしたとかかい?。」
「テンモンガクってなん?。」
菓子パンは不味い。でも味よりも空。
「天文学、知らないのか。」
大きな溜息を吐きながら大樹は千代さんの手作り弁当。
いつもなら、おかずをせがむ俺が何も言わない事に気になっている様子。
「マツキチ、なんか言うてる?。」
「父さん?。そうだな、ニュースが気になるみたいだよ。
1日ニュース見てるらしいし。うち、衛生も入るから、
アメリカのニュースも見てるって母さん言ってた。」
「さすがマツキチ。」
マツキチは何かに気づいてるんやろか。
「ちょっと、どうしてさすがなのさ?。」
始まった。嫉妬。
「自分で考えなさい。織田センセー。」
からかって言ったものの、大樹の表情は急に艶やかになり、
俺に顔を近づけて目を細め、
「カン・・・先生って、もう一回言って?。」
「ハァ?なんで・・やねん。」
「いいから・・ほら、織田先生って。」
「・・・おだ・・せん・・せ?。」
「戌尾くん・・・。」
息を荒げて俺の苗字を呼びガバっと抱きついてきた。
が、すかさず大樹の腹に足の裏をあててガスガス蹴り体を離させる。
「イタタタ。カン、痛いって。」
「学校で盛るなっ!エロアホ大樹っ!。」
「だって!だって3日もシてなっ、グハッ!。」
永遠に眠れ・・・エロ大樹よ。
「ちわー!ミカワ屋でーす!。」
「あら、カンちゃん。いらっしゃい。」
「千代さん、そこはサブちゃんって言わな。」
最近は夫婦居ない時に来てたから、千代さんの顔見るんも久々。
「マツキチはぁ?。」
「お父さんは奥の部屋でテレビ見てるわ。
シュークリーム後で持ってくわね。」
「うん。」
縁側の廊下を歩いて奥の和室に行くと、襖越しにテレビの音が聞こえる。
「この夏に雹とは温暖化が問題なんですかね?。」
「エコに力を入れだしたのが遅かったんじゃ?。」
「政府の対応はどうなっているのでしょうか。
放火の火は未だ納まらず、住民の避難が続いている模様。」
襖を開けると、胡坐をかいて座って真剣にテレビを見ている松吉の姿。
「・・・アニメやってへんの?。」
俺が声を掛けて初めて俺に気づいた。
「おぉ!カン。久し振りに見る顔だ。」
松吉は嬉しそうに笑んでくれた。
俺は隣に座り、テレビに目を向ける。
「なぁ、マツキチ。異常現象は地球温暖化のせいやと思う?。」
「・・・どうかな。それだけのせいで、
最近の現象の増加にはならんと思うが。」
「・・・。」
それはな、闇の奴らのせいもあるねん。
言いたい。
言えば、普通にそうかって言うてくれるやろか。
顔を顰めたり、笑われたりせんやろか。
俺が天の子や言うても・・・。
「カンもニュース気になっているのか?。」
「・・・うん。」
「人間ほど、何でも食べて何でも利用する生き物はおらんからな。
戦争で自然も壊してきた。生きる為以上に資源も使い、
人間以外の生き物たちに大変な迷惑をかけているな。」
テレビには山火事の映像が流れている。
緑が火に包まれて木々が燃え、草木や花の命が奪われる。
虫、動物もまた被害に遭い生死を彷徨う。
「わしらの時代にもっと考えて行動し、
子供たちに教えていかなければいけなかったのに、
戦後の苦労をあじあわせたくなかったという理由で、
子供たちになんも教えんかった。
命の事も人間に対してのみ教え、花や木々の命は、
ただ、人間が生きる為に必要だという教え方だ。
全て過去の話で片付けられ、ただ、学問の為だけに覚える。」
「マツキチ・・・。」
テレビを見つめて話す松吉の表情は硬く、
話し終えると下唇を噛みしめていた。
そんな自分のせいにする松吉を見ていると、俺の胸は苦しくて。
泣いてもうた。
「そ・・そんな、ん・・言う・・な、やぁ。」
「カンっ。」
泣きじゃくる俺に松吉は驚き目を丸くして、俺の方に体を向け、
「おいおい、なんでお前が泣くんだ。」
「おれが・・おれが悪いんやぁ・・・。」
俺が悪い。
この世界に降りて来て何をした?。
人間として、のうのうと生きてただけやん。
天界でパパに救うて断言して無理矢理降りて来て・・・、
大樹まで巻き込んでまで降りて来て・・・、
俺のして来た事の無意味さを改めて今実感した。
何が神の子や。
何が天の子や。
「ふぇ・・ごめ、ごめん・・ごめんなぁ。」
「・・・。」
松吉は何で俺がこないに泣いてるんか解らんと思う。
気配を感じる。
泣きながら気配の感じる庭に目を向けた。
「・・さ・・サタン!。」
俺は目を見開き両手を畳について腰を上げた。
(ふふ・・・ククッ・・・アハハハハ!。
いやぁ~、その格好似合うねぇ。四足歩行。)
無垢な笑顔で庭の真ん中に立っている。
(そのまま歩いてみてごらんよぉ。動物たちの気持ちが解るんじゃない?。)
「・・・何しに来た。」
怒りに顔を歪めてサタンを睨みつける。
(ん?。小さな小さな、か弱い乙女の鳴き声が聞こえたもんだからね。
男としては放っておけないだろう?。)
「き・・さま・・。」
(ふふ。そんな怖い顔は天の子には似合わないってぇ。
僕のショーが泣く程、気にいってくれてるようだね。
良かった。)
微笑む顔。その姿はまるで羽根のない天使。
俺の感情をわざと掻き立たせる。
「ショーやと?。」
(あんまり一人で話していると、松吉に変に思われるよ?。)
俺は咄嗟に松吉に振り向いた。
(とか言って。冗談だよ。時間の流れを僕の世界の流れに変えたからね。
彼は君より時間が遅い。)
「・・・松吉に手ぇ出したら、お前殺すで。」
(頼もしい言葉だね。)
感情の無い口調に自分の感情までも操作されそうや。
再び相手に顔を向けると俺は座り直した。
「で、なんの用や。いちびりに来たんか。」
(ん~。想像にお任せしようかな。
ここの人間はやたらお人好しのようだね。
あの、砂糖のように甘い、蛇の国の大神が選んだ家。
ねぇ、次なんだけど・・・何して欲しい?。)
「・・・。」
(ほら、山火事に雹。)
確信した。
「やっぱり・・・お前の企みか!。」
(うん。そろそろ大きくいかなきゃね。
あー!。ウイルス変化させちゃおうか。)
やめてくれ・・・やめて・・・。
(ウイルスなら、また被害はすぐ広まるし。)
笑顔で、小学生が遊ぶ事を決めているかのように話す相手に、
立ちあがって飛びかかった。
胸倉を掴み体から今まで眠っている天の子の魂の根源が溢れ体を光らす。
「ええか・・いい加減にしとかな完全に散りにすんで?。」
俺に胸倉を掴まれ俺をジッと見つめる相手は再び笑み、
(眩しいよ、カン。)
「気安く呼ぶな・・・。」
目を細めて俺の顔に顔を近づけてきた。
するとサタンの整った顔の肌に鱗がボコボコと現れ、
薄い唇の間から長く細い先の割れた舌をニュルっと出し、
見開いた大きな瞳の目の球は縦に長くなるも、
すぐにまた、整った顔に戻り、
(まだ、貴女の出るところじゃありませんよ。)
俺に言ったようには見えなかった。
胸倉を掴む俺の手に長い指を触れさせ、
(物騒だね。発言も汚い。ま、僕は大好きだけど。
今の君じゃ、僕よりも地獄の使者たちにも勝てやしないよ?。
もっと力をつけることだね。)
「カンっ、なんで外にいるんだ。」
松吉の声。
「速報!速報です!。今、ニュージーランドで豚インフルエンザが発症!。
人間に感染し広がっている模様。詳しい情報はまだ発表されていません。」
(ふふ、始まった。)
「お前っ!。」
(おっと、これはまだ威力あっても毒性は小さい。
それに・・・このウイルスは人間が作ったもの。
ただそれを管理している物に僕が少し穴を開けただけ。
・・・人間がね、人間が生物兵器として作ったものなんだよ?カン。)
サタンはそう言って姿を消していった。
「カン、お前大丈夫か?。」
心配した松吉が庭に出てきた。
俺は作り笑いをして松吉に笑む。
「ごめん、ちょっとパニくった。」
「何か悩みがあるなら隠すなよ?。わしはお前の味方だ。」
「うん・・・ありがとう。」
守らないと。
守らなきゃ。
ただ、何をしていいのか解らんねん。
何をしたらええの?。
なぁ・・・パパ・・・。
俺は・・・一体何を?。
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