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vol 41:神使い
夕方の雨の日。
誰も居ない茂みの中、俺は宇宙の神と共に居る。
学校を終えて、そのまま直行した。
(覚悟は出来ているか?カン。)
「うん。」
(では、呼ぶんだ。)
俺は心で叫ぶ。眼を閉じて何度も何度も。
悪魔、サタン。
ルシファー・・・俺の元に姿を表せ。
雨の音、風の音、木々の音、近くを走る車の音。
(名前を呼び続けなさい。)
悪魔、サタン。
ルシファー・・・俺の元に姿を表せ。
雨の音が強まり、雷が鳴り響いた。
「悪魔、サタン。
ルシファー・・・俺の元に・・・姿を表せ!」
(うるさいねぇ・・・。僕になんの用があるっていうんだい?。)
その声は透き通る様な綺麗な甘い声で、俺は目を開けた。
目の前には、背が高く金色の長い髪を首に巻きつかせ、
白い衣の綺麗な男が裸足で立っている。
表情はとても面倒臭そうな顔をして。
「・・・。」
俺の想像では、悪魔は黒くて厳つい虫みたいな奴だと思ってた分、
目の前の相手の容姿に驚きを隠せずに言葉が出ない。
(なんだい。呼び出しておいて無言?。挨拶もなしとは・・・、
最近の人間・・・昔からか。成ってないねぇ。)
「・・・お、お前がサタンか?。」
(・・・もっと、気持ち悪い姿の方が良かったかい?。)
「い、いや・・・。」
あまりの姿と妙な威圧感に言葉が繋がらない。
顔を顰めて黙り込んでいる俺にサタンの方から話しかけてきた。
(天の子か。ふーん・・・女を捨ててまで下界に降りて。
挙句に男の姿で恋愛だなんて最悪だね。
君・・・本当は僕の仲間じゃないのかい?。)
目を細めて舐めるように見る目に鳥肌が立つも、
バカにされているのは良く解る。
「き、今日呼んだんは・・・お前がどんな奴か見る為に呼んだ!。」
(ほぅ。それで?。期待通りの奴だったかい?。)
「期待外れや。」
俺は顔を顰めたまま答えた。
サタンはそんな俺に、
(あははははは!。それは悪かったねぇ。
もっと、下の者を使いに来させたほうが良かったか。
例えば・・・虫を纏った者に。)
「・・・お、お前はなんでそんな姿やねん!。」
(僕の姿?。ハァ~。君は勉強不足で良く僕を呼んだものだ。
しかも、僕に対しての恐怖心が凄い。)
「答えろや!。」
(・・・僕は神に作られた神使いという人形。
君のように両親もいない。悪魔になろうとも僕の形は神が作った入れ物。
怪物になれるのは・・・ココ。)
サタンは俺の方に手を伸ばし、俺の心臓の胸に指を指した。
「お前の企みは何やねん。なんで地球を滅ぼそうとしてるん。」
(それは簡単な答え。君のパパが大事にしている物だから。
その石に身を潜ませている神も大事にしている物。)
首に下げている石をギュっと握りしめた。
(いいかい?君。神と言う名ばかりの奴らを信用しても、
君は幻滅するだけだよ。君が僕らの世界に来るのは大歓迎。
僕と同じ地位にしてあげるし、力ももっと強力になる。)
「・・・勧誘でもしてるつもりなんか?。」
俺はサタンを睨みつけた。
(おやおや。勧誘などしてません。ただ、幻滅して怒り狂っている、
君が見えるだけ。可愛そうだと思ってね。)
ふふっと笑む相手を睨みながらも気持ちを落ち着かせ、
相手のペースに呑まれないように。
(この星が地獄と化したら、最高の喜びだよ。)
「なんで、そこまでして神を嫌うん?。
神を悲しませたいんやろ?。なんで?。」
(君にそれを話せって言うのかい?。
話して何になるの?。君が地獄に来てくれるなら話すけど。)
「地獄なんかに行く気はない。俺は神の子や。」
何が気に障ったんやろ。
神の子や言うたんがそんなに怒る事なんか?。
(だったら!・・・朽ちてしまえ。)
サタンの表情は怒りに満ち、眉間に皺を寄せて俺を睨みつけた。
(そうそう、君、母親を知っているかい?。)
「母親って・・・よう・・・。」
(いいや、洋子じゃないよ。天界にいた母親。)
「は?。俺は神に作られた子や。意図的に。だから母親なんか・・・。」
(・・・可哀想に。)
サタンの表情が俺への同情するかのような、眉尻を下げて笑みを浮かべる。
(君のママはいつも君を見てる。蛇神の事も君が幸せになるのならと、
大賛成してるよ。今度、地獄に遊びにおいで。
その時は、この僕が迎えに来よう。)
「ちょっ!。意味解らん!。」
俺の言葉には何も言わず姿を消した。
「なんやあいつ・・・どう言う事やねん。
何を言うとんねん・・・天界の母親なんか・・・。」
その場に崩れ座り、雨に打たれながら空を見上げた。
「パパ・・・兄さん・・・。」
(カン、心を保ちなさい。相手の計算に乗っては駄目だ。
真実は一つ。自分を信じなさい。)
宇宙の神は俺に言う。
そうや、これは惑わし。
アイツらの得意の嘘。騙されるな。
(帰りましょう。カン。)
「うん。」
泥だらけになったズボンを気にするわけでもなく、
自転車に乗って家に帰る。
「カン、あんた何やの。傘持ってなかったん?。」
俺の格好にオカンが怒りだす。
「はよ、風呂入り!。風邪ひいても知らんで!。」
「・・・。」
やっぱり、胸に引っかかる。
母親。
「オカン、地球の神と話したことあるん?。」
「あるけど、なんやの。」
「・・・別に。」
嘘について聞く勇気がなかった。
そのまま風呂場に行ってシャワーを浴びる。
(カン、すごい顔じゃな。)
「・・・ニコニコさ、ん。」
久々に顔を出したニコニコさんは、やっぱりニコニコしてて、
その顔を見たら泣けてきた。
(おいおい、どうした。)
「ニコニコさん・・・どこ行ってるん?。」
えぐえぐ泣く俺に困った顔をして、
(すまんすまん。最近、あの世も忙しくてな。
それに、ワシも修行していたんだ。)
「修業?・・・なんで。」
(そりゃ、カンの力になる為に。ワシもまだまだ未熟だからの。
ワシ一人でも、カンを助けてやれるようにならんと。)
「・・・びえぇぇぇ~!。」
俺の心を解してくれるんは必ず、ニコニコさんで、
俺を心の温かさで包んでくれるんもニコニコさんや。
俺はサタンの言葉を忘れようとした。
嘘やって。
その日は、ニコニコさんはずっと一緒に居てくれた。
ニコニコさんとずっと、おらんかった時の話したり、
弥勒や大樹の話や宇宙の神の話。
ニコニコさんは驚いたり、笑ったり、悲しんだり、
俺の話を聞いて喜怒哀楽を見せる。
俺が寝る時には、ニコニコさんの修行中の話を聞かせてくれた。
困ったこと、解った時の嬉しさ、自分の力の無さに悲しんだこと。
それを聞いてるうちに寝てしもうた。
(カン・・・様々な事が起こる。
でも、それから目を背けずに受け止めて、どんな事であっても、
受け止められる強い子になるんじゃ。
ワシは、お前の心を分かち合う。
悲しみや怒りはワシが受け止める。
お前の人生はまた深く悲しみや怒りに包まれるかもしれん。
じゃがな、一人でそれを抱え込ません。
カン・・・カン・・・。)
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