札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。矛盾した呼び方ですが、ウィトゲンシュタインは反哲学の偉大な哲学者です。心理臨床家が口を開くと、彼は統合失調症であったとか、いやアスペルガーであったとか、そんな話になることもありますが、私にしてみるとそんな病理のことよりも、むしろ彼の生き方そのものに興味があり、とても惹かれます。
大きな転回を果たして「ザラザラした大地」に舞い戻った後期のウィトゲンシュタインが、私の興味の対象です。彼からは実に多くのことを学びました。カウンセリング・心理療法の実践のためにこれからも学び続けることでしょう。
[ルードウィッヒ・ウィトゲンシュタイン Ludwig Wittgenstein]
痛みの言語ゲーム、それにゲーテの色彩論に取り組んだ最晩年の「色彩について」は、私の思考を研ぎ澄ますために、それからカウンセリング・心理療法の実践を豊かにするために随分役に立ちました。多義図形の知覚を読み解くために、悪性腫瘍に苦しむ人たちと痛みの言語ゲームを分かち合うために、彼は無くてはならない人であったのです。ウィトゲンシュタインのアスペクト知覚の考え方がそうであるように、読む人によって万華鏡のような多様性の下に閃くのが彼の思想であると思います。カウンセリングや心理療法を志す方は、ウィトゲンシュタインの思考に一度は触れて頂きたいものです。
文献中の「ウィトゲンシュタイン」は、すべて「ウィト」と表記します。
「全集 〈1〉 論理哲学論考」 奥雅博、大修館書店
「全集 〈2〉 哲学的考察」奥雅博、大修館書店
「全集 〈3〉 哲学的文法 1」 山本信、大修館書店
「全集 〈4〉 哲学的文法 2」坂井秀寿、大修館書店
「全集 〈5〉 ウィトとウィ−ン学団」黒崎宏、大修館書店
「全集 〈6〉 青色本・茶色本」大森荘蔵、大修館書店
「全集 〈7〉 数学の基礎」中村秀吉、大修館書店
「全集 〈8〉 哲学探究」藤本隆志、大修館書店
「全集 〈9〉 確実性の問題」黒田亘、大修館書店
「全集 〈10〉 講義集」藤本隆志、大修館書店
「全集 〈補巻1〉 心理ガクの哲学 1」佐藤徹郎、大修館書店
「全集 〈補巻2〉 心理ガクの哲学 2」野家啓一、大修館書店
「ウィト哲学宗教日記 ― 1930−1932/1936−1937」講談社
「ウィトの講義 〈1〉 双書プロブレ−マタ ケンブリッジ1930−1932年」勁草
「ウィトの講義 ― ケンブリッジ1932‐1935年 双書プロブレ−マタ」勁草
「反哲学的断章 ― 文化と価値」丘沢静也、青土社
「色彩について」中村昇、瀬嶋貞徳、新書館
「青色本」大森荘蔵、ちくま学芸文庫
「原因と結果:哲学」羽地亮、晃洋書房
「ウィト・セレクション」黒田亘編訳、平凡社
「論理哲学論考」野矢茂樹、岩波文庫
アレクサンダー・ウォー「ウィト家の人びと―闘う家族」塩原通緒、中央公論新社
ジョン・ヒートン「ウィトと精神分析」土平紀子訳、岩波書店
スティ−ヴン・E.トゥ−ルミン/アラン・S.ジャニク 「ウィトのウィ−ン 平凡社ライブラリ−」平凡社
野家啓一編集「ウィトの知88」新書館
ノ−マン・マルコム「ウィト ― 天才哲学者の思い出」板坂元、平凡社
藤本隆志「ウィト」講談社
黒崎宏「言語ゲ−ム一元論 ― 後期ウィトの帰結」勁草
飯田隆「ウィト読本」法政大学出版局
黒崎宏「ウィト『哲学的探求』第1部・読解」産業図書
黒崎宏「ウィト『哲学的探求』第2部・読解」産業図書
山本信/黒崎宏「ウィト小事典」大修館書店
滝浦静雄「ウィト 20世紀思想家文庫」岩波書店
スタンリー・カヴェル「哲学の“声”―デリダのオースティン批判論駁」中川雄一、春秋社
野矢茂樹「ウィト『論理哲学論考』を読む」ちくま学芸文庫
リチャード・ローティ「哲学の脱構築 ― プラグマティズムの帰結」室井尚、御茶の水書房
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