ジャネとミードの理論の類似性については、たとえば、アンリ・エレンベルガーが「無意識の発見」のなかで指摘しました。その起源は、心理学者 J.Baldwin
と、哲学者 J.Royce なのだそうです。多声性の心理療法論・カウンセリング論を構築するためには、ボールドウィンとロイスまで遡る必要があるのかもしれませんが、まずはこの二人の著作に目を通しておく必要があるでしょう。以上、札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」でした。
[ピエール・ジャネ Pierre Janet]
ヴィゴツキーの高次精神機能の社会・文化的発達論に多大な影響を及ぼしたのが、このジャネです。下意識やトラウマにかかわる理論しか流布していないようですが、語り(記憶)や思考(内言)や社会文化的な人格論など、独創的な理論と臨床を展開しました。
ジャネの主要著作は、いま現在(2010年)、ありがたいことにすべてが無料でダウンロード可能です。Institut Pierre Janet
(http://www.pierre-janet.com/) にアクセスしてください。著作リストや貴重な写真も見ることができます。フランス語です。残念ながら、英語と日本語で読めるジャネは限られます(ここには日本語訳のみ掲載します)。
ヴィゴツキーへの影響と言う視点で読むのであれば、「人格の心理的発達」と「被害妄想」から入るのがよいと思います。後者には、これはヴィゴツキーとまったく同じではないかと思わせる部分があります。
カウンセリング・心理療法における多声性やセルフトーク(内言)との関わりで言えば、講義録(LA PENSEE INTERIEURE ET SES TROUBLES. LECONS AU COLLEGE DE FRANCE 1926-1927)が重要なのかもしれませんが、できれば日本語で読みたいものです。
「人格の心理的発達」関計夫訳、慶応義塾大学出版会
「被害妄想―その背景の諸感情」松本雅彦、みすず
「症例マドレーヌ―苦悶から恍惚へ」松本雅彦、みすず
「神経症」高橋徹、医学書院
「心理ガク的医学」松本雅彦、みすず
井村恒郎ら編集「異常心理ガク講座10 精神病理ガク4」みすず
[ジョージ・ハーバート・ミード George Herbert Mead]
アメリカの著名な社会心理学者です。説明は無用と思います。「社会過程の個人への輸入としての精神」などの表現もあり、ジャネはもちろん、ヴィゴツキーとも大変よく似て、います。ヴィゴツキー派のDonna
R.Vocate (Intrapersonal Communication, 1994)も指摘するところです。
ここには、日本語で読める文献、それもヴィゴツキーとジャネとの関連で重要と思われる著作のみあげました。心理療法においてクライエントを理解するためのヒントが、たくさん詰まった名著です。サリヴァンを理解するためにも、必読であると思います。
「デュ−イ=ミ−ド著作集 〈6〉 精神・自我・社会」河村望訳、人間の科学社
「デューイ=ミード著作集〈13〉社会心理ガク講義・社会的自我」河村望、人間の科学社
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