札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。多声性のカウンセリング・心理療法の原点とされるのは、バフチンの対話論・ポリフォニー論です。ヴィゴツキーは無関係に思われるのかもしれませんが、両者の思想はとても類似するところがあり、補完的な関係にあります。この分野の心理療法を理解するときには、この二人の思想をよく理解しておく必要があります。
たとえば、ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」をバフチンの「声」によって補完する考え方もあります。多声性の心理療法やカウンセリングの領域では、リーマンが行っています。
[ミハイル・バフチン]
日本語訳、英訳、解説書・研究書の順に示します。本人の名義ではない、バフチン・サークルのものも掲載しました。必読と言えるのは、「ドストエフスキーの詩学」「ことば対話テキスト」「小説の言葉」「バフチン言語論入門」「マルクス主義と言語哲学」などです。「フロイト主義」も、心理臨床家であれば一読の必要があると思います。
バフチンに惹かれる人もいれば、惹かれない人もいることでしょう。もしもバフチンを読んで面白いと思った人は、多声性の心理療法の入口に入りつつあります。カウンセリングのヒントになることが盛りだくさんですから、じっくりと時間をかけて読み込んでください。彼は、ユダヤ的対話思想の影響も受けています。そちらも参照してください。
「ミハイル・バフチン全著作 〈第1巻〉 行為の哲学によせて」水声社
「ミハイル・バフチン全著作 〈第2巻〉 フロイト主義 V.N.ヴォロ−シノフ」水声社
「ミハイル・バフチン全著作 〈第5巻〉 小説における時間と時空間の諸形式」水声社
「ミハイル・バフチン全著作 〈第7巻〉 フランソワ・ラブレ−の作品と中世・ルネサンスの民衆文化」水声社
「フロイト主義・生活の言葉と詩の言葉 ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「作者と主人公 ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「文芸学の形式的方法 ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「言語と文化の記号論 ― マルクス主義と言語の哲学 ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「小説の言葉 ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「叙事詩と小説 ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「ことば対話テキスト ミハイル・バフチン著作集」新時代社
「バフチン言語論入門」せりか
「小説の言葉 平凡社ライブラリ−」平凡社
「ドストエフスキ−の詩学 ちくま学芸文庫」筑摩
「マルクス主義と言語哲学 ― 言語学における社会学的方法の基本的問題 (改訳版)」未来社
Bakhtin, M. M./Toward a Philosophy of the Act. Univ of Texas Pr
Bakhtin, M. M./ Medvedev, P. N./The Formal Method in Literary Scholarship : A Critical Introduction to Sociological Poetics. Johns Hopkins Univ Pr
Bakhtin, M. M. /Art and Answerability : Early Philosophical Essays. Univ of Texas Pr
Bakhtin, M. M. /Speech Genres and Other Late Essays. Univ of Texas Pr
Bakhtin, Mikhail/Rabelais and His World. Indiana Univ Pr
Bakhtin, M. M. / Problems of Dostoevsky's Poetics. Univ of Minnesota Pr
Bakhtin, M. M./ The Dialogic Imagination : Four Essays. Univ of Texas Pr
Volosinov, V. N./Marxism and the Philosophy of Language. Harvard Univ Pr
Volosinov, V. N./ Freudianism : A Critical Sketch. Indiana Univ Pr
The Bakhtin Reader : Selected Writings of Bakhtin, Medvedev and Voloshinov. Bloomsbury USA Academic
マイケル・ホルクイスト/伊藤誓訳「ダイアロ−グの思想 ― ミハイル・バフチンの可能性 叢書・ウニベルシタス」法政大学出版局
カテリ−ナ・クラ−ク/マイケル・ホルクイスト「ミハイ−ル・バフチ−ンの世界」せりか書房
ツヴェタン・トドロフ/大谷尚文訳「ミハイル・バフチン対話の原理 叢書・ウニベルシタス」法政大学出版局
桑野隆「危機の時代のポリフォニ− ― ベンヤミン、バフチン、メイエルホリド」水声社
桑野隆「バフチンと全体主義 ― 20世紀ロシアの文化と権力」東京大学出版会
桑野隆「バフチン ― 〈対話〉そして〈解放の笑い〉」岩波書店
グレアム・アレン/森田孟訳「間テクスト性 ― 文学・文化研究の新展開」研究社
[レフ・セミョノヴィチ・ヴィゴツキー]
高次精神機能、社会・文化的心理ガク、発達の最近接領域などの概念で著名な心理学者です。多声性のカウンセリング・心理療法と密接な関連のある思想は、最晩年の論文にちりばめられて、います。特に「ヴィゴツキー心理ガク論集」は重要で、そのなかの「心理システム」や「ドラマ」といった人格にかかわる概念を論じているものが必読であると思います。バフチンと、とてもよく似ているのです。
こちらに、→→「ヴィゴツキーの情動論」を書いてみました。興味のある方は覗いて下さい。
「子どもの心はつくられる―ヴィゴツキーの心理ガク講義」 菅田洋一郎、広瀬信雄、新読書社
「人間行動の発達過程 ― 猿・原始人・子ども」 大井清吉、渡辺健治、明治図書出版
「新 児童心理ガク講義」 柴田義松ほか訳、新読書社
「心理ガクの危機 ― 歴史的意味と方法論の研究」柴田義松、藤本卓、森岡修一、明治図書出版
「ヴィゴツキー心理ガク論集」柴田義松、宮坂、学文社
「情動の理論―心身をめぐるデカルト、スピノザとの対話」神谷栄司、土井捷三、伊藤美和子、竹内伸宜、西本有逸、三学出版
「新訳版 芸術心理ガク」柴田義松、学文社
「ヴィゴツキー 障害児発達・教育論集」柴田義松、宮坂、新読書社
「記号としての文化―発達心理ガクと芸術心理ガク」柳町裕子、高柳聡子、水声社
「文化的―歴史的精神発達の理論」柴田義松、学文社
「ヴィゴツキー 教育心理ガク講義」柴田義松、宮坂、新読書社
「ヴィゴツキー 思春期の心理ガク」柴田義松、森岡修一、中村和夫、新読書社
「『発達の最近接領域』の理論―教授・学習過程における子どもの発達」土井捷三、神谷栄司、三学出版
「新訳版 子どもの想像力と創造」広瀬信雄、新読書社
「新訳版・思考と言語」柴田義松、新読書社
「ごっこ遊びの世界」神谷栄司、 三学出版
「寓話・小説・ドラマ ― その心理ガク」峯俊夫、国文社
The Collected Works of L.S. Vygotsky<1> : Problems of General Psychology, Including the Volume Thinking and Speech. Kluwer Academic Pub
The Collected Works of L.S. Vygotsky<2> : The Fundamentals of Defectology. Kluwer Academic Pub
The Collected Works of L.S. Vygotsky<3> : Problems of the Theory and History of Psychology Including the Chapter on the Crisis in Psychology. Kluwer Academic Pub
The Collected Works of L.S. Vygotsky<4> : The History of the Development of Higher Mental Functions Kluwer Academic Pub
The Collected Works of L.S. Vygotsky<5> : Child Psychology. Kluwer Academic Pub
The Collected Works of L.S. Vygotsky<6> : Scientific Legacy. Kluwer Academic Pub
The Vygotsky Reader. Blackwell Pub
Mind in Society : The Development of Higher Psychological Processes. Harvard Univ Pr
神谷栄司「未完のヴィゴツキ−理論 ― 甦る心理ガクのスピノザ」三学出版
神谷栄司「保育のためのヴィゴツキ−理論 ― 新しいアプロ−チの試み」三学出版
柴田義松編「ヴィゴツキー心理ガク辞典」新読書社
柴田義松「ヴィゴツキー入門」子どもの未来社
茂呂雄二「具体性のヴィゴツキー」金子
中村和夫「ヴィゴ−ツキ−心理ガク完全読本 ― 「最近接発達の領域」と「内言」の概念を読み解く」新読書社
レオンチェフ,A.A.(菅田洋一郎監訳)「ヴィゴツキーの生涯」新読書社
[ジェームス・ワーチ James V.Wertsch]
日本語で読める二冊のみ紹介します。バフチンとヴィゴツキーをつなぐ社会・文化的アプローチの旗手として忘れてはならない、ジェームス・ワーチです。まずは「心の声」をお勧めします。本書は、ヴィゴツキーを乗り越えるバフチンや、声の異種混淆性について詳しく解説したものです。お世話になっている北大(北海道大学)の佐藤公治先生も翻訳に加わっており、読みやすい日本語で、ロシアの二大思想家の接点を学ぶことができます。
田島信元、佐藤公治、茂呂雄二、上村佳世子(1995)心の声―媒介された行為への社会文化的アプローチ. 福村出版
佐藤公治、田島信元、黒須俊夫、石橋由美、上村佳世子 (2002) 行為としての心. 北大路
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