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ユング




 日本にはユング好きの臨床家が少なくありません。おそらく河合隼雄先生や山中康裕先生など、著名なユング派分析家の影響でしょう。私も、ちょっとした隠れユンギアンなのかもしれません。
 皆さん覚えているでしょうか。河合隼雄先生と林道義先生の「父性論争」を。父性の復権を唱える林先生と、父性の復権などないと反論する河合先生とのあいだで繰り広げられ、当時、週刊誌の誌上を賑わせました。日本を代表するユング派の二人だけに、私たちはかたずをのんで見守ったものです。あれからもう15年以上たつなんて、時の流れは速いものだとつくづく思います。
 さて、深層心理ガク、分析心理学のユングの話です。彼の思想は難解です。神秘的ですらあります。ファンも多いですが、毛嫌いする人も多いです。よく知られた概念としては、集合的(普遍的)無意識、アニムス・アニマなどの元型(アーキタイプ)、個性化のプロセス、シンクロニシティ(共時性)、コンプレックス、能動的想像(アクティヴ・イマジネーション)、夢分析、曼荼羅(マンダラ)などがあります。
 ユング研究者はともかく、それ以外の一般の臨床家にとって必読の書は何か?これは難しい問いです。けれども、やはり私としては、臨床実践に直結した著作と、彼らしい元型論にかかわる著作をお勧めしたいと思います。もちろん「タイプ論」も壮大でよいのですが、私にとってユングとは、Princetonから出ている著作集の、第9巻1"The Archertypes and the Collective Unconscious"と、第16巻"The Practice of Psychotherapy"でした。
 解説書から入門して、ある程度の羅針盤を手にすることが必要と思います。そうしなければ、錬金術や古今東西のシンボルに関わる用語が頻出して、まったくお手上げです。私がお勧めするのは、たとえば林道義先生の『ユング思想の真髄』です。個人の脚色によって歪められていない、ユング思想を忠実になぞる解説書であると思います。河合隼雄先生の「ユング心理学入門」も捨てがたいのですが、この著書は、河合先生のフィルターを通してみたユングと言う色彩が濃厚であると思います。
 「自然現象と心の構造 ― 非因果的連関の原理」の共著者であるノーベル賞(級の)学者パウリは、かつてユングの一患者であったようです。ユングに及ぼした彼の影響は甚大であると思います。特にシンクロニシティについて考える場合、私たちは理論物理学の世界にさえ跳躍しなければなりません。せっかくですから、ルパート・シェルドレイクの「形態形成場と行動の進化-生命のニューサイエンス」まで読み進めましょう。

[カール・グスタフ・ユング Carl Gustav Jung]

 最近のニュースは、門外不出の「赤の書」が解禁となり、日本でも翻訳書が出版されたことでしょうか。ただ、お値段が高くて、なかなか手が出ないでしょう。英語版が割と安いので、カラフルな絵が見たいだけと言う方はそちらがお勧めです。
 ユングの著書・論文は、ほとんど日本語で読めます。しかし、多くの翻訳論文がいろいろな雑誌に散在しており、独・英の著作集のようにまとめる作業がこれから求められると思います。
 臨床実践にかかわる論文は、「心理療法論」、「転移の心理学」、「ユング著作集 〈2〉 現代人のたましい」などに収められました。元型論は、「元型論 (増補改訂版)」、「個生化とマンダラ」などに収められました。いずれも、彼を知るためには必読です。
 後世に名を残す深層心理学者はたいていそうですが、ユングにもいろいろなゴシップがあります。シュピールラインのことやら、ナチスに加担したのではないかとか、何やらかんやら。その思想だけでなく、人生史も知るに値する、偉大な臨床家であることに変わりありません。


「心理療法論」林道義、みすず

「転移の心理学」林道義、磯上恵子

「ユング自伝 〈1〉 ― 思い出・夢・思想」

「ユング自伝 〈2〉 ― 思い出・夢・思想」

「分析心理学」小川捷之

「個生化とマンダラ」林道義

「パラケルスス論」榎木真吉

「ヨブへの答え」林道義

「タイプ論」林道義

「連想実験」林道義

「赤の書」河合俊雄、創元社

「哲学の木」老松克博社

「クンダリニー・ヨーガの心理学」老松克博

「東洋的瞑想の心理学」湯浅泰雄

「フロイト=ユンク往復書簡〈上〉」金森誠也、講談社

「フロイト=ユンク往復書簡〈下〉」金森誠也

「ユング 錬金術と無意識の心理学」松田誠思

「ユング オカルトの心理学」島津彬郎

「夢分析〈1〉」入江良平、人文書院

「夢分析〈2〉」入江良平、細井直子

「診断学的連想研究」高尾浩幸

「子どもの夢 〈1〉」李敏子

「子どもの夢 〈2〉」皆藤章

「結合の神秘 〈1〉」池田紘一

「結合の神秘〈2〉」池田紘一

「アイオーン」野田倬

「心理学と宗教」村本詔司

「心理学と錬金術 〈1〉」池田紘一

「心理学と錬金術 〈2〉」池田紘一

「自我と無意識の関係」野田倬

「無意識の心理」高橋義孝

「黄金の華の秘密」

「ユング著作集 〈1〉 人間のタイプ」高橋義孝、日本教文社

「ユング著作集 〈2〉 現代人のたましい」高橋義孝

「ユング著作集 〈3〉 こころの構造」江野専次郎

「ユング著作集 〈4〉 人間心理と宗教」浜川祥枝

「ユング著作集 〈5〉 人間心理と教育」西丸四方

「現在と未来―ユングの文明論」松代洋一、平凡社

「創造する無意識―ユングの文芸論」松代洋一

「空飛ぶ円盤」松代洋一、ちくま学芸文庫

「変容の象徴―精神分裂病の前駆症状〈上〉」野村美紀子

「変容の象徴―精神分裂病の前駆症状〈下〉」野村美紀子

「人間と象徴 〈上巻〉 ― 無意識の世界」河合隼雄、河出書房新社

「人間と象徴 〈下巻〉 ― 無意識の世界」河合隼雄

「神話学入門」晶文社

「自然現象と心の構造 ― 非因果的連関の原理」海鳴社

「心霊現象の心理と病理」宇野昌人、岩堀武司、山本淳、法政大学出版局

「ユング超心理学書簡」湯浅泰雄、白亜書房

「元型論 (増補改訂版)」林道義、紀伊国屋書店

「分裂病の心理」安田一郎、青土社



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