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メルロ=ポンティとワロン



 フランスの現象学者・哲学者と、教育学者・心理学者・精神医学者です。両義性のメルロ=ポンティと、矛盾や危機を重視するワロンは、とても類似するところがあります。身体性を重視するところもそうです。メルロ=ポンティの発達論は、「体位の受胎」など、ワロンの考えを吸収して発展させたものでもあります。「目と精神」所収の「幼児の対人関係」なる論文をまずは一読してください。
 二人の思想は様々なアイデアの宝庫なのですが、メルロ=ポンティはともかくとして、ワロンの日本語訳はいまや入手困難のようです。まめに古書をチェックすると、いまも目にすることがありますから、ぜひ揃えて頂きたいものです。ワロンは発達心理ガクに興味のある方はもちろんですが、それ以外の方々にも参考になることが多々あります。忘れてはならない思想家であると思います。以上、札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」でした。


[モーリス・メルロ=ポンティ Maurice Merleau-Ponty]

 これまでは、多義図形の知覚や臨床心理の方法論について思索するために彼を読んだところがあります。必然として、「知覚の現象学」「見えるものと見えないもの」や方法論について書かれた諸論文に、読書範囲は偏ったままでした。多声性のカウンセリング・心理療法、それに治療的アセスメントについて考える場合、彼の言語論が参考になりそうです。これからも、メルロ=ポンティと格闘するつもりです。


「知覚の本性-初期論文集」 加賀野井秀一編訳、法政大学出版局(1988)

「心身の合一: マールブランシュとビランとベルクソンにおける」滝浦静雄、中村文郎、砂原陽一(1981)

「行動の構造」 滝浦静雄・木田元、みすず(1964)

「知覚の現象ガク1」 竹内芳郎・小木貞孝共、みすず(1967)

「知覚の現象ガク2」 竹内芳郎・木田元・宮本忠雄、みすず(1974)

「ヒューマニズムとテロル」森本和夫、現代思潮社(1965)

「意味と無意味」 永戸多喜雄、国文社(1970)

「弁証法の冒険」 滝浦静雄・木田元・田島節夫・市川浩共、みすず書房(1972)

「シーニュ1」 竹内芳郎監訳、みすず(1969)

「シーニュ2」 竹内芳郎監訳、みすず(1970)

「眼と精神」 滝浦静雄・木田元、みすず(1966)

「見えるものと見えないもの」滝浦静雄・木田元、みすず(1989)

「言語と自然 - コレージュ・ド・フランス講義要録」滝浦静雄・木田元、みすず(1979)

「世界の散文」 滝浦静雄・木田元、みすず(1979)

「意識と言語の獲得 ソルボンヌ講義1」 木田元・鯨岡峻、みすず (1993)


木田元 (1984) メルロ=ポンティの思想、岩波書店

鷲田清一 (1997) メルローポンティ-可逆性 シリーズ・現代思想の冒険者たち、講談社

広松渉、港道隆 (1983) メルロ=ポンティ、 岩波書店



[アンリ・ワロン Henri Wallon]


 多声性のカウンセリング・心理療法のために重要なのは、浜田先生が編訳された「身体・自我・社会」にとどめをさします。ここに収められた社会的自我形成論、自己論、他者論は、多声性以外の何物でもありません。ワロンはsociusの概念を、おそらく先輩のピエール・ジャネから受け継いだのでしょう。必然として、ミードの自我論やハリー・スタック・サリヴァンの発達論とも酷似するところがあります。もちろん、ワロンの読み解き方は多様です。私のコメントに縛られることなく、自由に学んでください。


「児童における性格の起源―人格意識が成立するまで」 久保田正人訳、明治図書出版

「子どもの思考の起源 上」 滝沢武久、岸田秀、明治図書出版

「子どもの思考の起源 中」 滝沢武久、岸田秀、明治図書出版

「子どもの思考の起源 下」 滝沢武久、岸田秀、明治図書出版

「精神病理の心理学―異常心理と正常心理の弁証法的把握」 滝沢武久、大月書店

「科学としての心理学」 滝沢武久、誠信

「ワロン・ピアジェ教育論 世界教育ガク選集」 明治図書出版

「ピアジェ‐ワロン論争―『発達するとはどういうことか』」 加藤義信、日下正一、足立自朗、亀谷和史、編訳著、ミネルヴァ

「応用心理ガクの原理」 滝沢武久、明治図書出版

「認識過程の心理ガク ― 行動から思考への発展」 滝沢武久、大月書店

「子どもの精神的発達」 竹内良知、人文書院

「ワロン/身体・自我・社会 ― 子どものうけとる世界と子どもの働きかける世界」 浜田寿美男、ミネルヴァ

「ワロン選集 〈上〉」 大月書店

「ワロン選集 〈下〉」 大月書店


ルネ・ザゾ「心理ガクとマルクス主義 アンリ・ワロンの生涯と業績」大月書店

M. マルティネ「情動の理論―アンリ・ワロン入門」 白石書店


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