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札幌|のっぽろカウンセリング研究室
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芸術・視覚



 芸術や視覚にかかわる思想家、心理学者を紹介します。この分野は、芸術療法、描画、曖昧図形によるパーソナリティのアセスメントなど、心理療法と密接な関係を保っています。カウンセリングの初学者は臨床的な書物を読むことに追われ、芸術的な分野の本を読むゆとりなどないのかもしれません。しかし、意外なところに心理療法のアイデアはあります。幅広い興味・関心をもって、日々を過ごしたいものです。以上、札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」でした。




[ルドルフ・アルンハイム Rudolf Arnheim]

 ゲシュタルト心理学の立場から芸術を研究した、この分野の第一人者です。美術、映画、建築など、幅広い領域について論じた、「目の人」です。最近、100才を超える長寿をまっとうしてお亡くなりになったようです。日本語と英語で読めるものだけ紹介します。
 まずは日本語訳のある「美術と視覚」を読んでください。この訳書は1954年版を訳したもので、1974年の改訂増補版とは少し違うのですが、入門書として適切であると思います。次は、「芸術心理学」「芸術心理学のために」へ進んでください。ゲシュタルト心理学者やロールシャッハについても論じており、参考になることが少なくありません。
 彼はウェルトハイマーの系統にあるゲシュタルティストのようで、どうも主知主義的な匂いが強いと思います。批判的に、自分の思考と戦わせながら読むことをお勧めします。。

「美術と視覚 〈上〉 ― 美と創造の心理ガク」波多野完治、美術出版社

「美術と視覚 〈下〉 ― 美と創造の心理ガク」波多野完治、美術出版社

「芸術心理ガクのために」上昭二、ダヴィッド社

「芸術心理ガク」関計夫、地湧社

「芸術としての映画」志賀信夫、みすず

「中心の力―美術における構図の研究」関計夫、紀伊国屋書店

「視覚的思考―創造心理ガクの世界」関計夫、美術出版社

「建築形態のダイナミクス 上」乾正雄、鹿島出版会

「建築形態のダイナミクス 下」乾正雄、鹿島出版会

「エントロピ−と芸術 ― 秩序と無秩序に関する考察」関計夫、創言社

Rudolf Arnheim (1949) Toward a Psychology of Art. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1954) Art and Visual Perception: A Psychology of the Creative Eye. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1962) The Genesis of a Painting :Picasso's Guernica. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1969) Visual Thinking. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1971) Entropy and Art. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1977)The Dynamics of Architectural Form. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1982) The Power of the Center: A Study of Composition in the Visual Arts. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1986) New Essays on the Psychology of Art. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1989) Parables of Sun Light: Observations on Psychology, the Arts, and the Rest. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1990) Thoughts on Art Education. Getty Center for Education.

Rudolf Arnheim (1992) To the Rescue of Art. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1996) The Split and the Structure. University of California Press.

Rudolf Arnheim (1997) Film Essays and Criticism. University of Wisconsin Press.




[エルンスト・ゴンブリッチ Ernst Hans Josef Gombrich]


 高名な美術史家です。アフォーダンスのギブソンと論争を繰り広げたことでもよく知られています。ここには、画像知覚について考えるために参考になった、日本語で読める三冊のみ掲載します。

「棒馬考―イメージの読解」二見史郎、谷川渥、横山勝彦、勁草

「イメージと目」白石和也、玉川大学出版部

「芸術と幻影 ― 絵画的表現の心理ガク的研究」瀬戸慶久、岩崎美術社




[エルウィン・パノフスキー Erwin Panofsky]

 図像解釈学(イコノロジー)で著名な美術史家です。多くの著書が日本語に訳されており、重要人物であることが分かりますが、ここでは一冊だけ紹介します。
 この「象徴形式としての遠近法」は、私にとって思い出の一冊です。実は、もうずいぶん前になりますが、自分のクライエントから読んでみてはどうかと教えて頂いた一冊なのです。どっちがカウンセラーだかクライエントだか分かりません。本書にはこんなことが書かれています。「彩色によって動きをもたらされ光と影の戯れを見せていた表面が、立体幾何学的なまとまりをもち輪郭線によって構造化された表面に転じている・・・人物像とその周囲の空間、つまり背景となっている平面とのあいだにある解きがたい統一性を作り出す」(訳書、pp.43-44)。いま思うと、パノフスキーは、ゲーテカッツ、カッシーラー、メルロ=ポンティと、とてもよく似ています。


「象徴形式としての遠近法」木田元監訳、哲学書房 (2009年、「ちくま学芸文庫」に収められました)




[ゴットフリート・ベーム Gottfried Boehm]

 「現象学の展望」のなかに、たまたま見つけた芸術評論家です。芸術の領域で「根底の裂け目」に到達しており、現象学・解釈学の視点から具体的形象について論じたものです。私にはベームの社会的・学問的評価について皆目見当がつきません。しかし、画像知覚について考えるとき、彼の論述はとても参考になりました。「セザンヌ」では行為を強調しており、メルロ=ポンティを彷彿とさせます。

「造形的形象の解釈ガク」物部晃二訳、In 新田義弘・村田純一編集 (1986) 現象ガクの展望. 国文社、pp.407-447.

「ポール・セザンヌ『サント・ヴィクトワール山』」岩城見一、實渊洋次、三元社




[カール・ゲルストナー Karl Gerstner]

 造形作家であるゲルストナーの「色の形」です。色「と」形とは異なる、色「の」形であることが重要です。色や形だけでなく、そこに音の視点が組み込まれており、読めば読むほど着想を得ることができます。カウンセリングや心理療法におけるクライエントの色・形・音を探求したい方は、ぜひお読みください。「形は色のからだ 色は形のこころ」これで決まりです。

Karl Gerstner (1986) Die Formen der Farben. Athenaum. (安部公正 (1989) 色の形. 朝倉書店)




[ジル・ドゥルーズ Gilles Deleuze]

 ドゥルーズの映画論、芸術論です。カウンセリングの場を光学的・音声的状況として理解すると、無縁に思われた映画や芸術の世界が、われわれにとって身近なものに転じます。たとえば「見る声」「透視する声」「フェノテクスト」「ジェノテクスト」「内的モノローグ」「姿勢と覗き見」「身体と声の分割」「視覚的なもの・音声的なもの・触覚的なもの」などのキーワードにピンとくる方は、益するところが大きいと思います。画像知覚だけでなく、声の心理療法にとっても、さまざまなアイデアを与えてくれます。「シネマ」にはジャネやバフチンも引用されており、ナラティヴに興味のある方にもお勧めです。

Gilles Deleuze (1983) CINEMA1: L'IMAGE-TEMPS. Minuit. (財津理、斎藤範 (2008) シネマ1: 運動イメージ. 法政大学出版局)

Gilles Deleuze (1985) CINEMA2: L'IMAGE-TEMPS. Minuit. (宇野邦一ほか (2006) シネマ2: 時間イメージ. 法政大学出版局)

Gilles Deleuze (1981) FRANCIS BACON, LOGIQUE DE LA SENSATION. Difference. (山縣煕 (2004) 感覚の論理―画家フランシス・ベーコン論. 法政大学出版局)




[ウルフガング・メッツガー Wolfgang Metzger]

 ゲシュタルト心理学を集大成する、メッツガーの「視覚の法則」です。重厚な一冊です。ウェルトハイマーに捧げられた本です。私は、画像知覚について数多くのヒントをもらいました。特に「あいだの空間」について詳しく論じており、参考になりました。時代はすでに認知科学・脳科学へと移り変わり、ゲシュタルト心理学など誰も見向きもしないのかもしれませんが、心理学の基本図書の一冊としてもお勧めします。

Wolfgang Metzger (1953) Gesetze des Sehens. Waldemar Kramer. (盛永四郎 (1968) 視覚の法則. 岩波書店)




[ジェームズ(ジェイムズ)・ジェローム・ギブソン James Jerome Gibson]

 アフォーダンス、生態学的視覚(知覚)論のギブソンです。カウンセリングの世界には、ギブソニアンはほとんどいないような気がします。私は、彼の絵画論・画像知覚論を吸収しましたが、何せギブソンは表象世界に対して、つまりイメージの世界に対して否定的なので、心理療法の世界ではあまり受けないでしょう。身体性(動作)の心理療法・カウンセリングを志向する方であれば別ですが、どうすればギブソンの生態学的視覚論を臨床心理に応用できるのかと言うこと自体が、大きな焦点となるのです。ヒントは、彼が生態光学を論じていることにあるのかもしれません。カウンセリングの場を光学的な状況として捉えると、おそらくギブソンを応用する可能性が開かれるでしょう。さあ、ギブソンの生態学的視覚論を煮て食うも、焼いて食うも、あなた次第です。臨床心理とアフォーダンスの概念を繋いでください。

Gibson, James Jerome (1982) Reasons for Realism : Essays in Feminist Theory. Lawrence Erlbaum Assoc Inc. (ギブソン,ジェームズ・ジェローム (2004) 直接知覚論の根拠―ギブソン心理ガク論集. 勁草)

Gibson, James Jerome (1987) The Ecological Approach to Visual Perception. Lawrence Erlbaum Assoc Inc.(ジェイムズ・ジェロ−ム・ギブソン (1985) 生態学的視覚論 ― ヒトの知覚世界を探る. サイエンス社)

Gibson, James Jerome (1983) Senses Considered as Perceptual Systems. Greenwood Pub Group

Gibson, James Jerome (1974) The Perception of the Visual World. Greenwood Pub Group






以下、更新予定。

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