札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。臨床心理の方法論を私なりに整理しようと思って、夢中になってゲーテ自然科学を読み耽った時期があります。ゲーテには何かあると直観して、とにかくカウンセリング・心理療法の方法論的な根拠を彼の自然科学に探したのです。その頃はまだ、村本詔司先生の「ユングとゲ−テ」の存在にも気づいておらず、ゲーテと臨床心理を結びつける斬新さに自惚れておりました。
ゲーテは文学で世界的ですが、自然を破壊する類いの科学を危惧して、みずから多数の実験を行うなどして、独特の自然観を築いた人です。カウンセリング・心理療法の領域でゲーテの自然科学を知っている人は本当に少なく、これからもゲーテ、ゲーテと連呼して行く価値は十分にありそうです。興味を向けるものに対して、ゲーテはいつでも"SALVE"と言って迎えてくれるはずです。
[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ Johann Wolfgang von Goethe]
ゲーテ自然科学は、ほとんどが日本語で読めるようになりました。色彩論の完訳版もあります。リストアップしませんでしたが、潮出版の「ゲーテ全集13
文芸論・芸術論 箴言と省察」も必読であると思います。心理療法のための方法論として参考になるのが色彩論、具体的な臨床の視点として参考になるのが植物形態論であると思います。後者を読んでいると、まるでロジャーズやヴィゴツキーが書いたものであるかのような錯覚に陥る個所もあります。ビンスワンガーやゴールドシュタインなど、人間性心理学・精神病理学の世界にも、多大な影響を及ぼしました。
「 色彩論 (完訳版)」高橋義人、前田富士男、南大路振一、嶋田洋一郎、中島芳郎、工作舎、1999
「色彩論」木村直司、筑摩書房
「ゲ−テ全集 〈14〉 自然科学論」木村直司、潮出版社
「ゲ−テ地質ガク論集 〈気象篇〉」木村直司、筑摩書房、2010
「ゲ−テ地質ガク論集 〈鉱物篇〉」木村直司、筑摩書房、2010
「ゲ−テ形態ガク論集 〈動物篇〉」木村直司、筑摩書房、2009
「ゲ−テ形態ガク論集 〈植物篇〉」木村直司、筑摩書房、2009
「イタリア紀行 <上><中><下>」 相良守峯、岩波文庫
「ゲ−テ全集 〈別巻〉 ゲ−テと現代」 潮出版社
「自然と象徴 ― 自然科学論集」高橋義人、冨山房
エッカーマン「ゲーテとの対話 <上><中><下>」岩波文庫、山下肇
金子隆芳(1988)「色彩の科学」岩波書店
村本詔司(1992)「ユングとゲ−テ ― 深層心理ガクの源流」人文書院
高橋義人(1988)「形態と象徴―ゲーテと『緑の自然科学』」岩波書店
土橋宝(1999)「ゲーテ世界観の研究―その方法と理論」ミネルヴァ
ルドルフ・シュタイナー(1991)「ゲーテ的世界観の認識論要綱」浅田豊、筑摩
森岡正芳 (2001) 心理ガクと形態ガク-発想の一源泉としてのゲーテ (山中康裕監修(2001)魂と心の知の探求. 創元社. pp.496-502)
「モルフォロギア-ゲーテと自然科学」 ナカニシヤから定期刊行されて いる雑誌です。
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