札幌・江別の「のっぽろカウンセリング研究室」です。私自身、かつて学校でスクール・カウンセラーとして活動したことがあります。スクール・カウンセリングを行うためには、学校と言う場をよく知る必要があります。たとえば、医療の世界には医療の世界の文化があるように、学校には学校独特の文化があるのです。
私がスクール・カウンセラーとして学校に入ったのは、まだ病院勤めの頃でした。職場に事情を説明すると、子供たちの相談は学校の先生が親身になってやるもんでないのかい、と言う声がありました。われながら、その通りであると思いました。この制度ができるまで、担任の教師や養護教諭が子供たちの力になっていたのです(いまもそうです)。いまは、カウンセラーに加えて、スクール・ソーシャルワーカーも参入する時代になりつつあります。子供たちにとっては援助の幅が広がり、よいことであるのかもしれません。
その一方で、教師たちのメンタル・ヘルスも大きな課題です。精神疾患による休職者があとをたちません。学校の先生は大変なのです。けれども、この点についてはこれ以上言及しません。
さて、スクール・カウンセラーの方々に読んで頂きたいのは、臨床心理サイドの読み物よりも、むしろ教育ガク・サイドの読み物です。隣接する領域でどんなことが言われ、それが臨床心理とはどのように異なるのか(あるいは類似するのか)、ぜひ知ってほしいのです。異文化を学ぶと言うことです。
このページは、臨床教育ガク、教育臨床心理ガク、養護教諭(学校保健・学校健康相談・健康教育・養護学)の文献を少し紹介します。
[臨床教育学]
臨床教育ガクのアウトラインをつかむために、まず「臨床教育ガク序説」と「臨床教育ガクの生成」の二冊をお勧めします。日本の代表的な学者を執筆陣に迎えており、この分野を鳥瞰するのに最適であると思います。田中孝彦、皇紀夫、小林剛という、日本を代表する人たちの著作を追うのもよいでしょう。私の師の一人である田中孝彦先生の「人が育つということ」は、コンパクトな名著ですから、ぜひ読んでください。また、臨床心理よりの臨床教育ガクとしては、河合隼雄先生の「臨床教育ガク入門」があります。教育学サイドの臨床教育ガクと比較してみるのがよいでしょう。
田中孝彦、皇紀夫、小林剛編 (2002) 臨床教育ガク序説. 柏書房
皇紀夫編 (2003) 臨床教育ガクの生成. 玉川大学出版部
田中孝彦 (2009) 子ども理解―臨床教育ガクの試み. 岩波書店
田中孝彦 (1994) 人が育つということ. 岩波書店
小林剛 (1996) 子ども支援の臨床教育ガク―いじめ・不登校・中退問題への追跡. 萌文社
河合隼雄 (1995) 臨床教育ガク入門. 岩波書店
[教育臨床心理学]
いま現在日本には、教育臨床心理学を名乗る講座がたくさんあります。けれども、その名を冠した著書はあまり出版されてはいないようです。伝統のある領域でありながら、一学問としての教育臨床心理学は、まだまだ船出したばかりの分野であると思います。やはり代表的な方は横湯園子先生であると思います。横湯先生の「教育臨床心理学―愛・いやし・人権そして恢復」から入門することをお勧めします。
横湯園子 (2002) 教育臨床心理ガク―愛・いやし・人権そして恢復. 東京大学出版会
横湯園子 (1997) 子どもの心の不思議―臨床という仕事から. 柏書房
横湯園子 (1992) アーベル指輪のおまじない―登校拒否児とともに生きて. 岩波書店
佐藤修策、藤土圭三 (1987) 現代教育臨床心理ガク要説. 北大路書房
[養護教諭]
私が最初に教員の世界に足を踏み入れたのは、養護教諭の養成課程です。北海道教育大学旭川校でした。もうすでに大学を移ったので、いま現在養護教諭関連の本を読むことはありません。ここにあげるのは、当時、保健室の先生のたまごたちにヘルス・カウンセリングを教えるために参考になったものです。学校看護婦からスタートした日本の保健室の先生の仕事について、カウンセリングを強調する人間もいれば、健康「教育」を強調する人間もいます。ここにあげた四冊を読めば、養護教諭の制度的な歴史も含めて、ある程度全体像を得ることができるはずです。
養護教諭の相談を学ぶ会 (1993) 養護教諭の相談的対応 ― 子どものこころに寄り添う. 学事出版
出井美智子、鳴澤實 (1991) 子どもの心がわかる養護教諭に ― カウンセリングから学ぶ. 学事出版
宍戸洲美 (2000) 養護教諭の役割と教育実践. 学事出版
森昭三 (2002) 変革期の養護教諭―企画力・調整力・実行力をつちかうために. 大修館書店
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