STEFANO BOLLANI
心地よくて、心憎い、そして、心安らぐ1枚
"GLEDA"
STEFANO BOLLANI(p), JESPER BODILSEN(b), MORTEN LUND(ds)
2004年11月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS STUCD 05012) 

予約していたこのアルバムが届いたのが5日前。アイスクリームを目の前にした子供のように、嬉々としてアルバムの封を切りCDをトレイに載せた。
これと同じメンバーで演奏された"MI RITORNI IN MENTE"(JAZZ批評 210.)は素晴らしいアルバムで、僕の選んだ2004年ベスト・アルバム(JAZZ批評 237.)の1枚だった。あれから1年と8ヶ月ぶりの録音ということになる。

久しぶりに未だか未だかと待ちわびたアルバムだ。そして、何回も何回も繰り返し聴いてきた。前回と少し趣が違うと思った。印象としては少し落ち着いた感じ。大人になったというか、熟成されたというか・・・。その分、少し物足りないと感じるリスナーがいるかも知れない。
でも、待って欲しい。このアルバムは繰り返して聴くほどに、その味わいが深くなっていくアルバムだということを!BOLLANIの奏でるピアノの一音、一音をしっかりと味わって欲しいと思うのだ。僕はまたしてもBOLLANIに惚れ直してしまった。このピアニストの頭の中には美しさと同時に意表を突いたり「ウ〜ン!」と唸らせる沢山の引き出しがあって、その中には沢山のフレーズがビッチリと詰まっているように思うのだ。心憎くて、お洒落で小粋なBOLAANIのピアノを堪能頂きたい。コーヒーでも(夜だったらアルコールでも)飲みながらリラックスして、しかし、耳は流れ出る音楽に集中して深く味わって頂きたいアルバムである。

@"ALDRIG SOM ALDRIG" 
A"DEN ALLERSIDSTE DANS" メルヘンチックなイントロが終わるとブラッシュがサクサクと音をたて、その上を太く暖かなベースの音色が、続いて、玉のよなピアノの音色が転がっていく。実に心地よいワルツ。もしも、これがライヴ演奏だったら聴衆総立ちのやんやの喝采ものだったであろう。
B"MONDER,JEG ER TRAET,NU VIL JEG SOVE" 定型化したリズム・パターンの上をピアノがしっとりと歌う。アンマッチングの妙とでも言えるだろうか。

C"ARMBAND" これもベースの定型パターンがしばらく続いたあとに、心地良い4ビートが待っている。LUNDの良く歌うドラミングが素敵だ。
D"DANSEN OG VALSEN" サウンドがJAZZ批評 233.のPETER ROSENDALのトリオに似ている。尤も、ドラムスが同じMORTEN LUNDという共通点があるが・・・。牧歌的な味わいのある曲。
E"MORGENLYS OVER KOBENHAVN" スロー・バラードの中にあっても躍動するピアノとベース。だから、べたつかない。
F"KIMER I KLOKKER" 
G"GLEMMER DU" しっとり系バラード。

H"GLEDA" アルバム・タイトルになっている曲。実にシンプルなテーマを8ビートで演奏する。このアルバムを象徴する演奏。ナチュラルなフィーリング。僕は8ビートというのはあまり好きではないのだが、これは別格だ。LUNDの刻むブラッシュでの8ビートが何とも心地よいのだ。そしてBOLLANIのピアノを存分に味わって欲しいと思うのだ。兎に角、「間(ま)」が良い。以前、BRAD MEHLDAUを「間のピアニスト」と書いた(JAZZ批評 219.)が、これって、良いピアニストの必要条件だと思う。ところで、この曲が何故一番最後に入っているのか良く分からないが、一番最初でも良かったのでは?僕はこのアルバムを聴く最初の1曲目には必ずこの曲を聴くことにしている。そして、最初に戻って最後まで聴くことになるから、この曲だけはいつも2度ずつ聴くことになる。
 
前回のアルバムはJESPER BODILSENのリーダー・アルバムだったが、今回のアルバムは3者の連名になっている。個々の奏者の素晴らしさもさることながら、3者の濃密なインタープレイをも堪能できるアルバム。
心地よくて、心憎い、そして、心安らぐ1枚。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.04.09)



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独断的JAZZ批評 264.