GUILLERMO ROMERO
プラスアルファとマイナスアルファが交錯して微妙なバランスを保っている味わい深い1枚
"TRIO"
GUILLERMO ROMERO(p), HERNAN MERLO(b), OSCAR GIUNTA(ds),
2001年10月 スタジオ録音 (TURISMATICA pai 3064) 

前掲のJAZZ批評 250.までで昨年末に購入した10枚のアルバム・レビューが終わった。10枚のほとんどがヨーロッパ発のアルバムだったのも近年の象徴的な傾向なのかもしれない。10枚ものCDが目の前に積まれていると少しは焦るもので、1ヶ月あまりで10枚ものレビューを書いたのも初めてのことだ。これからは少し元のペースに戻ってジックリと聴き込んで行きたいと思っている。
さて、今度のアルバムはヨーロッパから南アメリカに飛んでアルゼンチン発のアルバムだという。これも、いつもお世話になっている仙台の"DISKNOTE"の推薦盤だ。こうして、居ながらにして世界の最新アルバムを手にすることが出来るのは有難いことだ。
このピアニスト、豪腕でもなければ超美的メロディ・ラインがあるわけでもない。でも、何故か印象に残るピアニストである。ジックリと時間を掛けて味わって欲しいピアノ・トリオである。

@"BLUES PARA ARAUJO" ひょうきんでユーモアのあるテーマだが、ブルースである。
A"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" 何て言ったら良いのだろうか?印象的なアレンジを施されたスタンダード・ナンバー。リズムといいメロディ・ラインといい味わい深い演奏だ。
B"GIANT STEPS" J.COLTRANE の書いた曲をアップテンポのリズムに乗って何の衒いもなく、むしろ、淡々と演奏する。ややもすると物足りなく感じたりするものだが、逆に、この何か不足しているような淡々とした演奏に味わいを感じる。

C"SOPHISTICATED LADY" D.ELLINGTONの曲。この曲も淡々と演奏している。だけど、印象に残る。そんな1曲。
D"V.V.BOP" 
E"SOLAR" M.DAVISの曲。
F"3 X 4" ROMEROのオリジナル。4/4の中に3/4が入り込んで12/8になったような面白い曲想の曲だ。

G"ALL THE THINGS YOU ARE" いきなり刻まれるアップ・テンポの4ビート。和音の音使いといいリズムの切れ味といい、このトリオの象徴的な演奏。
H"OLEO" J.COLTRANE, D.ELLINGTON, M.DAVISときて最後のジャズ・ジャイアンツはS.ROLLINGSの曲。これもアレンジが面白い。聞かせてくれますねえ。
I"14 DE SEPTIEMBRE" 最後を飾るのは心に染み入る美しいメロディ。

@、D、F、IがROMEROのオリジナルで残りは有名曲がズラリ。
実に淡々としたアルバムだが、音使いやリズムに深い味わいがある。地味であるが心憎い。渋いと言ってもいいかもしれない。ヨーロッパのジャズともアメリカのジャズとも違う、プラスアルファとマイナスアルファが交錯して微妙なバランスを保っている味わい深い1枚。ジックリと聴き込んで欲しいアルバムだ。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.02.16)



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独断的JAZZ批評 251.