独断的JAZZ批評 284.

DAG ARNESEN
全曲、ARNESENの手になる意欲的な作品集
やはり「良いテーマに、良いアドリブあり!」で、
ジャズと言えども「良いテーマ」がなくては楽しくない
"TIME ENOUGH"
DAG ARNESEN(p) TERJE GEWELT(b), PAL THOWSEN(ds)
2004年3月 スタジオ録音 (TAURUS TRCD 845)
 

ベーシスト、TERJE GEWELTの"HOPE" (JAZZ批評 275.)のレビューをアップした直後にGEWELTの参加したピアノ・トリオの新譜が発売されたというので、早速、HMVの渋谷店に出掛けた。しかし、在庫切れで予約取り寄せとなってしまった。それがこのアルバムで、待つこと3週間でやっとゲットした。
"HOPE"はGEWELTとCHRISTIAN JACOB(p)との濃密なインター・プレイが堪能できるデュオ・アルバムで、その素晴らしさは折り紙つきである。そのGEWELTが参加したトリオなら先ず間違いはないと思った。案の定、素晴らしいアルバムだった。加えて、今回のアルバムに参加しているドラマーPAL THOWSENがなかなか良い。このトリオのキー・プレイヤーでもある。ややもすると甘く流れそうな雰囲気をしっかりと良く歌うドラミングでキープした。ブラッシュ・ワーク、スティック・ワークとも切れがあってよく歌っている。手数は少し多いが、それが嫌味にならない。
このアルバムは全曲、ピアニストのDAG ARNESENの手になる意欲的な作品集。兎に角、曲が良い。硬軟取り揃えて曲想のバランスも良い。やはり「良いテーマに、良いアドリブあり」で、ジャズと言えども良いテーマがなくては楽しくない。

@"WOULD I ?" ピアノのイントロからベースとドラムスが絡んでいく。サクサクとブラッシュ・ワークが冴える。少し手数が多いかなと思いつつ、そのドラミングに引き込まれてしまう。
A"TRIO U" グルーヴィなフィーリングを持ったワルツ。
B"MADAM FELLE" 陽気なテーマ。ドラムスが利いている。
C"STRIPEN" このARNESENはメロディ・メーカーでもある。この曲といいIといい美しい曲を書く。分をわきまえたGEWELTとTHOWSENのバックアップも好感が持てる。そっと目を閉じて聴いて欲しい。
D"THE AUNTS" 一転して哀愁を帯びているが軽快な曲想。ブラッシュからスティックに持ち替えるあたりから一気に高揚感を増していく。
E"VIEW FROM A MOUNTAIN" しっとり系テーマからアドリブまで、3者の織り成す緊密感が味わえる。GEWELTのベース・ソロも歌心に満ちている。ベース・ソロは「速弾きすれば良いってものじゃない」っていうことを証明してみせた。
F"THREE EACH" サクサクとブラッシュが刻み、ベースがイントロをとり、ピアノが装飾。テーマに入ると躍動感が沸々と沸いてくる。アレンジも面白い。
G"TIME ENOUGH" タイトル曲。このテーマも曲想ががらりと変わって面白い。ドラムスがいいね。
H"LINE DOWN" ベースのイントロで始まり、徐々にインテンポになっていく。
I"TIL JENS" 最後を締めるピアノ・ソロ。何回も繰り返し聴きたくなる。KENNY BARRONの"SONG FOR ABDULLAH"(JAZZ批評 147.)にも引けをとらない名曲であり、ピアノ・ソロである。しみじみと聴き入って欲しい。 

多彩な色合いを感じさせるアルバムだ。何回も言うようだけど、全10曲、どれもテーマが良い。そのうちの何曲かは多くのミュージシャンが取り上げるようになるに違いない。多分、いずれスタンダードだ。
ついに100枚目となる「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.07.28)